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ミハイル・ショーロホフ 人間の運命


 ロシアのノーベル賞作家、ショーロホフの短編集。表題作ほか、全5編を収録。200ページに満たない薄い本だが、読後感はずっしり重い。

 ショーロホフは一般的にはソビエトの体制側の作家とされている。近代ロシア文学の傑作というと大抵は反体制の思想から生まれているような気もするが、ここに収められた作品では戦争によって踏みにじられた個人の悲劇のみにスポットを当てて描かれているので、そんなことは気にせず読める。だが、そこで描かれる悲劇たるやどれもこれも悲惨を極めている。表題作「人間の運命」では幸福な家庭を築いていた主人公が、第二次大戦で出征し、ドイツ軍の捕虜になりながらも逃げて来るが、その間に家族は爆撃で全滅。ただ一人生き残った息子も戦死してしまう。「子持ちの男」はもっと悲惨で、敵味方に分かれた実の息子を手に掛けることになってしまう。どの作品もこういった悲惨さが、短編ならではの濃い表現で描かれていて、読んでいて非常に重苦しい一冊である。先日読んだ「ツバメ飛ぶ」もそうだが、本当に戦争というものはありとあらゆる形で不幸と悲しみを個人の前に突きつけるのだということを思い知らされる。
 でありながら、「人間の運命」のほのかな希望を感じさせるラストや、「他人の血」での、怪我をした兵士を戦死した息子と思って尽くす老夫婦の愛情といった、ぎりぎりの場面での人間性が深く心を打つ。

 心配したようなソビエトの体制を称揚するような視点は、少なくともこの作品集には見当たらない。当然だが逆に体制を批判するような部分も全くない。この作家は悲劇をただ一人の人間の視点から悲しむだけだ。そこが文学作品として物足りないかもしれない。
 体制側の作家とされているのは、あくまでソビエト側がこの作家の作品を支持したというだけのことらしい。もっともこの作家自身、体制批判ととられそうな表現を激しく自己規制しているフシはあると思うのだが。

 この作家の代表作は「静かなドン」。岩波文庫版で全8巻の大物だ。ネットでの評判を見る限りではすごく面白いらしい。ただし現在は品切れ中。ノーベル文学賞作家の代表作くらいはいつでもすぐ読めるようにして欲しいなあ。
.24 2009 東欧・ロシア文学 comment5 trackback0

comment

え、「静かなドン」、品切れなんですか?

…いまアマゾンで確認したら、購入できるのは1巻だけですね。
ちょっとショックです。
時間に余裕ができたら読もうと思っていたのに~。
2009.02.24 21:52 | URL | ぐら #- [edit]
岩波のHPを見ても第1巻以外は版切れですね。その第1巻も在庫僅少。
他にも何社かから出ていたようですがどれも品切れのようです。
2009.02.25 21:53 | URL | piaa #- [edit]
こんばんは。

体制側、というよりは、体制にとって悪いことは書いていない、というかんじでした。
ロシア体制があったからこそ、ヴィトキエヴィチとかエロフェーエフとかブルガーコフがいたのかな、とも思いますが。

あらためて見直してみると、わりと19世紀ぽい雰囲気のある作品ですね。
そしてなぜかルルフォを思い出しました。
2009.02.25 22:58 | URL | ふくろう男 #- [edit]
こんばんは

「過酷な運命」が描かれていますが、登場人物たちが動いているのが見えるくらいの描写・・・活き活きとしていると言うのでしょうか。読んで損はなしといった所でしょうか。

書店で『蝶』という小説の解説を読んでいるとレムの名が出てくる。
これも縁かと買って読んでみたら、凄い。
良かったら、皆川博子という人です。







2009.02.26 21:33 | URL | ojyamasimasu #- [edit]
>ふくろう男さん

全く同意です。あの体制があったからこそのロシア文学なのでしょう。
ブルガーコフ同様、私の愛するストルガツキー兄弟の作品も、彼らがソビエトという国で書いたからこそ、あの形足りえたのだろうと思います。

>ojyamasimasuさん

そうですね、重苦しい中にも一種の軽快さがあって、そこはこの本の魅力のひとつだと思います。だから重いけど読みにくくはないんですね。

皆川博子の「蝶」ですね。頭に入れとこうっと。
2009.02.26 23:30 | URL | piaa #- [edit]

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