スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

ポール・オースター 偶然の音楽

Auster_music of chance
 ポール・オースターは「シティ・オブ・グラス」、「幽霊たち」、「鍵のかかった部屋」の「ニューヨーク三部作」などで有名なアメリカの作家。今回初めて読んだ。

 巨額の遺産が転がり込んできたナッシュは、赤いサーブを駆って目的のない旅に出る。ある日ギャンブラーのポッツィという青年を拾ったナッシュは、大富豪フラワーとストーンの屋敷に乗り込みポーカーでひと勝負するのだが、惨敗してしまい無一文になってしまう。車さえ失ったナッシュとポッツィは、フラワーとストーンの提案に乗って、壁を作る仕事を始めるが…

 読んでいる時の印象は、アメリカ版「砂の女」かな、という感じだったのだが、よく考えてみると違う点も多い。ナッシュとポッツィは、ポーカーの勝負に負けたとはいえ、すってんてんになるまで勝負を続ける理由がなかった。いわば自らフラワーたちの虜になったようなものだ。わけがわからないままに砂の家に虜にされる「砂の女」の主人公とは違い、ナッシュはより能動的なのだ。
「砂の女」では女との日々がやがて日常と化していく様を描いていたが、こちらの方は常に違和感が付きまとい、さらにいくつかの事件がナッシュたちの置かれた異常な状況を、本人達にも読者にも再確認させる仕組みになっている。
 それでも数ヶ月にわたるそんな日々は、監視人のマークスとの駆け引きで緊張したり弛緩したりしながらを重ねながらもナッシュたちは、壁を作るために石を積み上げるという全く無為な作業にもやがて意義を感じはじめる。それは賭けに負けた借りを返せるという目標があったからだろう。

 さて私が注目するのは、この作品の中で重要な役割を果す大富豪、フラワーとストーンである。「花」と「石」の名前を持つこの二人は、共同で買った宝くじで大金を当て、それを元手にはじめた事業が大当たりして大富豪になった、「自分たちが不死身になった」と思うほどのツキの持ち主だ。それでいて一筋の情けも持ち合わせていないこの二人が象徴するものはなんだろうか。アメリカの社会だろうか。彼らはいかにも異常な悪役という印象を与える描かれかたをしているが、果たしてそうなのだろうか?
 それとも彼らはナッシュが自ら求めた「破滅」への案内人に過ぎないのだろうか。ナッシュはわずか20万ドル(2千万円前後)の遺産で職と生活を捨てた。あの夜、破滅するまで賭けつづける必要はなかったし、あの唐突なラストにおいても全く違う行動が可能だったはずだ。いわば自ら求めて破滅への道を進んでいったのだ。ナッシュにとっては破滅こそが救いだったのかもしれない。それとも妻に去られた時点で、この小説が始める前の時点で彼は破滅していたのだろうか。

 あのラストでナッシュやマークスがどうなったのか、その前に怪我をしたポッツィがどうなったのかもまったくわからない。フラワーやストーンが壁の出来具合に興味を示しているのかどうかすらわからない。そういう細かいことを書くつもりは作家にはないのだ。
 重苦しい、読んでいてちっとも楽しくない小説だ。それでもなにか惹きつけられてしまう。後味悪い。
.29 2009 北米文学 comment2 trackback0

comment

piaaさん、初オースターとしては微妙な作品かも。

この本、すっかり内容を忘れてしまいましたが、もやもやと意味不明で、後味が悪かった印象だけは強烈に残っています。
「孤独の発明」でオースターにはまり、単行本出版後すぐに買った「偶然の音楽」で卒業してしまいました。 「孤独の発明」のピリピリと迫ってくる孤独感が薄れて、「頭で作った小説」みたいな気がしたんだったと思います。
2009.01.30 22:01 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
vogelさんこんばんわ。

たしかに意味不明で、後味が悪くもやもやした作品ですが、決して面白くないわけではなく、キライでもありませんでした。
ただ、おっしゃるとおりこの作品は「頭で作った小説」という印象は確かにありますね。
なかなか巧みな作家だとは思うので、あと何冊かは読んでみようと思います。
2009.01.30 23:50 | URL | piaa #- [edit]

post comment

  • URL
  • comment

  • password
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://piaa0117.blog6.fc2.com/tb.php/978-2bd1bd6e

プロフィール

piaa

  • Author:piaa
  • Livedoorへ移転しましたので、そちらでお願いします。

    こちらのブログへのコメントはLivedoorに転載しますが、定期的にチェックしないので相当遅くなることもあります。

ブログナビ

P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2009年01月
  ├ カテゴリー
  |  └ 北米文学
  └ ポール・オースター 偶然の音楽

カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

月別アーカイブ

カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。