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田中ユタカ ミミア姫 第1、2巻


 田中ユタカという作家は、これまでは主に成人向けの作品を発表してきたが、講談社の「アフタヌーン」というメジャーな雑誌に進出、ここで作者が選んだのは、異世界を舞台にしたファンタジーである。

 「雲の都」に住む人々は背中に光の羽根を持ち、テレパシーや予知能力を持っていた。ところが、大神官の次女として生まれてきたミミアには光の羽根も、超能力も持たなかった。そして人々もミミアの未来を見る事はできない。「雲の都」の人々にとってそれはミミアが「神の子」であることを示しているのだった…

 よくある堕天使の物語を逆転したかのような設定で始まるこの作品は、現在第2巻まで発売されているのだが、とにかく展開が遅く、特に第1巻ではこの世界の概要と、ミミアがいかに愛されて育ったかを描いただけである。その描かれ方が極めて丁寧で、「天国」をイメージされて描かれた善人ばかりの「雲の都」や、両親や姉や、その他まわりの人々に愛されて成長したミミアの素直さが非常に納得の行く形で描き出され、執拗なまでの情感の描写には恐れ入ってしまうほどだ。
 例えば第1巻の113ページから119ページ。幼馴染のルロウの事を思い、ミミアの胸が幼い恋の感情で「きゅううん」となる、ただそれだけのシーンに6ページも費やしているのだ。ここはある意味すごいシーンだが、この表現が気に入るかどうかでこの作品が好きかどうかはっきりするシーンだともいえる。ちなみにうちのRINRINは具体的にこのシーンを挙げて、この作品は苦手だと明言した。

 第2巻に移ると、「鬼」に襲われたり、「サムライ」として旅をしていたルロウが登場してきたりとやや物語が動きだす。ミミアは、自分の未来が見えない事によって人々の未来をも見えなくしているのではないだろうかと疑う。
 このシーンでのミミアと母の会話なども、この作品らしい柔らかな表現で母がミミアの存在を全肯定してみせる。親が子供の存在を肯定するのは当然だが、実はそれができていない親が非常に多いのではないだろうか。他にも至る所に「生きる事」に対する肯定的な表現がなされていて、そういう意味でも独特な作品世界が広がる。
 とにかく物語はやっと始まったところで、今後「鬼」による「雲の都」への侵入などの事件がおこると予想されるのだが、基本善人ばかりの国を舞台にどう物語が進むのか想像しにくい。例えばミミアの存在自体を疎ましく思う過激派とかは「雲の都」にはいないのだろうか。ミミアと「雲の都」の運命がどう転がるのか、続刊に期待したい。

 さっき展開が遅いと書いたが、ミミア自身によるかなり饒舌な語りで進行するスタイルのせいもあるだろうし、もともとの作者の個性でもあるのだろう。この作品にはそれぞれの巻に作者の文章だけの「あとがき」がある。正直作家は作品についてあまり述べるべきではないと思うので「あとがき」はどうかと思うのだが、コミック作品で、オマケマンガみたいな形ではなく「あとがき」があるというのは結構異例な事ではないだろうか。この点からも、もちろん作風からも、この作家のかなり粘着質な傾向が窺え、それをどう感じるのかで評価が大きく変わる作品だろうと思う。

 個人的には清潔でかわいい絵柄で、非常に丁寧に描かれていて、ゆっくりしたペースも含めて好きな作品なのだが、ただこのタイトルと装丁がいただけない。タイトル「ミミア姫」はストレートすぎ。もう少し工夫した方が良かったのでは。例えば「雲の都のミミア」とかの方が座りがいいと思う。装丁も工夫がなさすぎ。このタイトルと装丁では知らない人は手に取りにくいのではないだろうか。この作家の以前の作品の評にも同じような意見を読んだ事があるのだが…
.19 2009 コミック comment8 trackback0

comment

確かに雲の都に過激派が居ないのは違和感がありますね。
でも必然性がある気がします。
単なる憶測ですが。

この作家のかなりこだわりが強いですね。
前作愛人は最終連載から単行本の最終巻が出るまで時間がかかりましたからね。
2009.01.22 02:37 | URL | 円達磨 #OzsWmzus [edit]
前提として雲の都は天国みたいなもの。善人しかいないのでしょうね。
ミミアによって雲の都全体の運命が変わって行くのを嫌ってミミアを暗殺しようとする勢力とか現れると面白そうですが、その前にこの作家って悪人を描く事ができるのかな。

ほんとにこの作家、作品に対してのこだわりは強そうですね。そこがこの作家のいい点でもあり、欠点でもあると感じています。
2009.01.22 21:22 | URL | piaa #- [edit]
その他大勢が悪人と言うケースはありました。
愛人においてですが。
感染が防げない未知のウイルスが世界に蔓延して、その後感染していないと宣言する過激派が主人公の居る施設を攻撃しるエピソードがあります。
内乱ではありませんが。

ほんとにこの作家、作品に対してのこだわりは強そうですね。そこがこの作家のいい点でもあり、欠点でもあると感じています。>>>
同感です。
2009.01.23 01:41 | URL | 円達磨 #OzsWmzus [edit]
>その他大勢が悪人と言うケースはありました

そうなんですか。でもやはり明確な悪意を持った人物は描いてないのですね。
これといい「愛しのかな」といい、やや微温湯的な印象を受けます。「ミミア」はハードな展開も充分ありうると思うのですが、この作家にそれができるのかどうかちょっと疑問に感じたので…
2009.01.24 00:40 | URL | piaa #- [edit]
えーっと、田中さんの一般誌進出はこの「ミミア姫」でなく円達磨さんが上げられている「愛人」が最初です。
(ヤングアニマルで連載していました)
この作品、題名とは違い、悪意を持った人間どころではない、もっと厳しい世界を描いてますよ。
確かに単行本の表紙と内容に相当のギャップがあるのは確かです。私的には良い表紙(特に5巻)と思ってはいますが。
最近愛蔵版も出ましたが、単行本も古本屋にもセットでまめに出てると思うので興味あったら読んでみてください。

あと、「ミミア姫」の方はタイトルどおりです。現在の連載では1巻とはうって変わっての状況なので
次の巻が出たら是非、確認してみてください。ある意味3巻の表紙がどうなるか、それが楽しみではあります。

2009.02.07 03:32 | URL | わはは大王 #- [edit]
コメントありがとうございます。

>田中さんの一般誌進出は「愛人」が最初
ご指摘ありがとうございます。それでは記事の内容を変えないといけませんね。
「愛人」は方々で傑作と評価されているようですが、あの表紙ではちょっと…。愛蔵版は高いし…

「ミミア姫」も連載がかなり進んでいて、意外な展開になっていると漏れ聞こえています。早く第3巻出ないかな。
2009.02.07 21:10 | URL | piaa #- [edit]
愛人における悪意、絶望の表現は凄まじいものがありますよ。
人類を含む世界の全てへの憎悪や怨嗟が溢れる箇所があります。
表紙が気になって購入に踏み切れないのはもったいなく思いますが。

一方、ミミア姫は前提として愛人の真逆の世界観からスタートし、
しかしながら見えてくる綻びや破綻等を、
細心の注意を払って描写しているように思います。
評価を下すにはまだ早すぎる作品でしょうね。
また田中ユタカはタイトル等にも強いこだわりがある作家ですので、
恐らく最後まで読めば『ミミア姫』以外は考えられなくなるのでは、
と思っています。
2009.02.16 20:33 | URL | たまたま記事を拝見したので #1MqZTUZc [edit]
コメントありがとうございます。
何しろ私はこの作家の作品をまだ「ミミア姫」の単行本2冊と「愛しのかな」第1巻しか読んでいないんで…
「愛人」はすごく評判がいいようなので読んでみたいのですが、あの表紙ではやっぱり…
私のほかにもそう思う人が多かったからこそ「愛蔵版」を出すのではないでしょうか。
2009.02.16 23:54 | URL | piaa #- [edit]

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