スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

ストルガツキー 収容所惑星


 ストルガツキーの「マクシム三部作」の第1作。20年ほど前から持っていたが、実は今回読んだのが2回目。ストルガツキーの作品の中では特に優れた作品ではなかった印象があって、再読する機会がなかったが、今年映画化され、現在ロシアで公開中(日本での公開は未定)ということもあって20年ぶりに読んでみた。

 自由調査団所属の20歳の青年マクシムは、ある日宇宙船の事故で惑星サラクシに不時着する。この国は紅蓮創造者集団と呼ばれる者たちに支配されていた。彼らは各地に「塔」を建設し、そこから放射線を定期的に放射し、その間人々は理性を失うのだ。この放射線を使って紅蓮創造者集団が国民を支配していることを知ったマクシムは、レジスタンス組織に身を投じる…
 といったストーリーで、マクシムがこの星の人々に肩入れして行く様をじっくりと描いた大作である。

 物語の設定としては、「神様はつらい」によく似ている。遅れた文明を持つ惑星に裏から干渉して安定化・文明化させようとするのだ。ただ、「神様はつらい」よりもはるかに読みやすい。マクシムがガイやラダに感情移入するあたりがうまく描かれているからだろう。
 この世界では超人的な能力を持つマクシムははじめガイとともに軍に入る。だが「奇形人」と呼ばれるレジスタンスを襲撃することに違和感を覚え、軍を脱出して「奇形人」たちの元へ行く。そこで彼らがちっとも「奇形」ではなく、単に塔の放射線の効き方が違うだけのことであること、そしてそれが自分には影響がないことに気づく。紅蓮創造者集団が放射線を使って人々を支配していることに気づく。一方政府側には「遍歴者」を名乗る男ルドルフがマクシムを抑えようと暗躍している。

 このサラクシという惑星のディストピア的な社会がかなり詳細に描かれていて、外国(「ホンチ」とか「島帝国」とか)の脅威にもさらされているとか、この作品でははっきりとは描かれないが「蟻塚の中のかぶと虫」で描かれることになるビッグ・ヘッドが登場してくるなどまだまだ未知の世界がガイたちの国の外にあることが示唆される。下手な作家なら「サラクシ年代記」を書いてしまいそうなくらいの物量を持っている。ストルガツキーの作品の中でこれだけ詳細に異星が描かれているのは他にはない。そうして詳細にサラクシを描けば描くほど、このがんじがらめの社会が当時のソビエトに見えてくる。現状を打破した、とマクシムが思った瞬間のどんでん返しも、作者の無力感の象徴なのかもしれない。
 正義と思ったことに向かって突っ走るマクシムの青臭さを描いて若々しい魅力のある作品だが、やはり作品全体としては後年の傑作には及ばない。もっと長くして人間関係などをじっくり描いてもよかったかなとも思う。

 この作品は「Noon Univers」と呼ばれるストルガツキーのシリーズものの一作でもある。マクシムの独白・回想に現れる惑星「パンドラ」やそこに住む怪物「タホルグ」などはシリーズ中ではよく見かける名前だ(と言っても、実際に惑星パンドラを舞台にした作品は、少なくとも長編にはないのだが)。この作品を詳しく読んで「蟻塚…」を読むと、また理解が深まるのかもしれない。

 さてロシアで今公開中の映画だが、HPで予告編が見れる(「Enter The Site」で英語ページに入れる)。かなり現代風のスタイリッシュでスペクタクルな映画になっているようだ。原作の地味なイメージとはちょっと違う派手な印象だが、かなりの大作だそうで、ぜひ観たい。日本でも公開して欲しいなあ。
.28 2008 ストルガツキー comment2 trackback0

comment

恐らく30年振り位に再読しましたが、記憶がかなり違っていました。それに彼らの他の作品を読んでいるためか、それほど読み難くも感じませんでした。
地球(というかコムコン)のサラクシへの介入はどうやら紅蓮創造者集団のクーデター以降のようなので、あの放射線による思想支配はコムコンの意図するものではないのでしょうが、正直なところ彼らの元の長期計画が理解できません。ずっと先の「明るい未来」を目指しているのにしても、そのための犠牲があまりにも大き過ぎるのでは。
それにしても、よくこの作品がソ連国内で検閲を通ったものですね。ファシズム体制の打破を描いた、とかいう事になっているのかもしれませんが、「紅蓮創造者集団」なんてどうみてもソ連共産党でしょうに。それとも「紅蓮」の部分のロシア語には「赤い」なんてニュアンスはないのかな。
ところで質問なのですが、この作品での「遍歴者」はコムコンの要員の現地でのコードネームでしたが、「リットルマン」の記事を読むと、謎の高度な異星人がこの名で呼ばれているとの事ですね。両者は関係あるのですか?
2012.12.09 20:41 | URL | X^2 #CypyILE6 [edit]
遍歴者ことシコルスキー(これはただのニックネームです。『遍歴者』を名乗ったのは恐らくシコルスキーのブラックユーモアでしょう)がサラクシに潜入して5年と言うセリフがありましたが、この時点ではまだまだコムコンのサラクシ社会への直接的な影響力は小さかったのではないかと思っています。
シコルスキー自身のセリフにもあるように、経済などサラクシ社会全体への影響を考えて紅蓮創造者集団の放射線支配を、一応この時点では容認していたと思われます。その後どういう手順で共産化を進める予定だったのかは全く不明ですが…

仰るとおり、この作品がソ連国内で出版できたのはストルガツキーの謎のひとつですね。
考えようによってはこの作品、「滅びの都」なんかよりヤバイかも知れません。
「紅蓮創造者集団」は英訳では「The Unknown Fathers」と訳してあるようで、原文はわかりませんが、少なくとも英訳には「赤い」というイメージはなさそうです。
2012.12.09 22:52 | URL | piaa #- [edit]

post comment

  • URL
  • comment

  • password
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://piaa0117.blog6.fc2.com/tb.php/956-8ba7444a

プロフィール

piaa

  • Author:piaa
  • Livedoorへ移転しましたので、そちらでお願いします。
    http://blog.livedoor.jp/piaa0117/

    こちらのブログへのコメントはLivedoorに転載しますが、定期的にチェックしないので相当遅くなることもあります。

ブログナビ

P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2008年12月
  ├ カテゴリー
  |  └ ストルガツキー
  └ ストルガツキー 収容所惑星

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ

カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。