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ミシェル・トゥルニエ フライデーあるいは野生の生活


 ミシェル・トゥルニエはフランスの作家。これは1967年発表の彼のデビュー作「フライデーあるいは太平洋の冥界」を書き直したもので、1971年に発表されている。私は全くその辺の予備知識がないままに図書館で借りてきたのだが、要するにこの「野生の生活」は「太平洋の冥界」のジュブナイル版なのだそうだ。

 これは「ロビンソン・クルーソー」の物語である。「ロビンソン・クルーソー」だからたいていの方はあらすじをご存知の通り、船が難破してただ一人生き残ったロビンソンの無人島での暮らしを描いたものだ。トゥルニエはデフォーの書いた古典的な名作「ロビンソン・クルーソー」に、様々な独自の枝葉をつけて独自の物語を編み出していく。
 とは言っても、私も「ロビンソン・クルーソー」については昔子供向きの本で読んだ程度なので比較してみるというわけにはいかない。

 この「野生の生活」でのロビンソンは、犬のテンとともにまず、島を脱出するための船を作るが、船を海に運べないという単純ミスのため諦め、次に島に文明社会を建設しようとする。幸いすぐそばに船が座礁したままになっていたので、穀物や武器などの物資を島に運び込み、家を建て、島にいたヤギたちを飼い始める。近くの島の原住民が時々上陸していることを知ったロビンソンは砦を作り、火薬を使って爆発物を仕込んだ防衛線を作る。そんな中、時々やる気を失ったロビンソンは沼に身体を沈めてつかの間の悦楽に浸る。
 沼に身体を沈めて心地よい夢を見ては現実逃避するロビンソンは、麻薬や酒におぼれる現代人的である。島には水も食料になる果物や動物が豊富にありながら、彼は懸命に文明社会を建設しようとするが、いざ小麦が収穫できると、次の種まきに使おうとパンを焼かずにしまいこんでしまうのだ。こういう矛盾は彼の思い描く「文明社会」が、彼の現実と食い違っていることを示している。

 やがてロビンソンは、近くの島の原住民が上陸している場面に遭遇、呪術師によって殺害されそうになった原住民の一人を助ける。以来フライデーと名づけられた彼はロビンソンとともにこの島で生活することになる。
 ロビンソンの従者として生活し、やがて英語が理解できるようになったフライデーだったが、ある日誤って火薬に火をつけてしまい、大爆発を起こす。長年をかけて建設した建物や柵が一瞬にして吹き飛び、テンをも失い、文明建設に挫折したロビンソンは、以後フライデーと二人での野生生活に入っていく。もはや対等になったロビンソンとフライデーは時々けんかもするが、お互いの身代わり人形を作り、気に入らない時はその身代わり人形に罰を与える。この描写にはぞっとするが、たった二人での生活を円満に保つにはいいアイディアなのかもしれない(と思うとなおさらぞっとするが)。

 環境に順応したのか、それとも長い時間の経過がそうさせたのか、ロビンソンの生活はどんどんシンプルになっていく。雄ヤギのアンドアールの死と、その後の歌うアンドアールのくだりなどはプリミティブな味わいで、まるでチュツオーラの描く世界のエピソードのようだ。
最後にイギリス船がやってくるラストはオリジナルとは全く違うものだが、このラストのロビンソンの選択は十分ありうるものなのかもしれない。ロビンソンは文明は便利で合理的だが、真の幸福はそことは別な次元にあるということに気づいたのだ。

 「ジュブナイル版」ということは、要するに子供が読むのに向いている、ということだ。たしかに読みやすい作品なのだが、これが子供向きといえるのだろうか。様々な象徴や暗喩が飛び交っているような作品で読みやすさの裏に深いものが潜んでいるような作品だ。「太平洋の冥界」のほうも、ぜひ読みたいと思う。
.14 2008 フランス文学 comment0 trackback0

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