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フランシス・H・バーネット 秘密の花園


 ここのところ後口の悪い作品が続いたので、なにか明快な物を読もうと思って手に取ったのがこれ。
作者のフランシス・ホジソン・バーネットは「小公子」「小公女」の作家として有名。この「秘密の花園」は作者の最高傑作とされる作品で、アニメの「世界名作劇場」的な世界が展開する。

 イギリス人の両親のあいだにインドで生まれたメアリは、両親にかまってもらえず使用人の間でわがまま三昧の中で育った。だがある時コレラが流行、メアリの両親の屋敷は使用人も含めて全滅してしまう。たった一人生き残ったメアリは英国の叔父の家に引き取られる。叔父の家で人々に接し、友人もできて人間性を取り戻していくメアリだったが、偶然から叔父が10年前、妻の死後に封印した「秘密の花園」の鍵を手に入れる。

 この作品の主人公はメアリという10歳の少女と、その従兄弟のコリンの二人なのだが、この二人とも親にないがしろにされ、使用人に甘やかされて育った結果、手のつけられないクソガキに育ってしまっている。これがこの作品の、ほかの児童文学とは際立った違いがある部分で、作者はまずメアリというクソガキが召使のマーサや庭師のベン、それに魔法を体現したかのような少年ディコンといった人々と出会うことによって、また自然と親しむことで、そして「秘密の花園」によって人間らしく再生していくさまを描く。で200ページほど進んだところで、体が弱い分メアリよりも重症のコリンという少年が現れ、今度はメアリも協力してコリンを立ち直らせていく、という2重の構造になっている。
 悪い人は誰も出てこないし、まあ普通に感動的な物語として読んでよし。無邪気に「世界名作劇場」的な世界を楽しむという読み方で読むと、ヨークシャーのムーアの大地と、そこに立つ巨大なクレイヴン屋敷の「秘密の花園」を訪れる春の息吹がコリンの言う魔法のように瑞々しく描かれ、春の訪れと機を一にして無表情で醜い子供だったメアリとコリンが子供らしく再生していく様を見事に描いている。もともと児童文学の位置づけの作品であるため非常に読みやすく明快。

 一方で疑問点も感じる。この小説は主人公がいつのまにかメアリからコリンへと変化してしまっている。最後の章でクレイヴン氏とコリンの再会が描かれるが、この章などはメアリの影はきわめて薄くなってしまう。
 せめてクレイヴン氏にメアリ(とディコン)に礼を言わせるべきだと大抵の現代の読者は思うだろう。今アニメや映画で映像化したら、そういうシーンが必ず必要だと思う。ところがこの小説にはそれがない。作者が書き忘れたのではない。それは作者にとっては書く必要がないことが自明だったのだ。
 この作品には常に徹底して差別感覚が見え隠れしている。メアリはそれまでに自分と対等な相手を持たない小さな暴君であったが、いきなり未知の環境に放り出され、インド時代にはありえなかったような無礼な召使にも否応なしに付き合わざるを得ない状況に置かれた。それで下々の人々(ベンや、ディコン)とも付き合えるようになったのだが、それでも彼らが目下の者であることははっきり分かっている。たとえばディコンはメアリにとって魔法を体現した奇跡のような少年なのだが、この階級意識をはっきり持っているメアリはディコンに恋心を抱いたりはしない。コリンも、そのことをはっきり理解しているので、メアリが自分よりもディコンに先に会いに行ったからといって、メアリに対して自分を大切にしないとなじることはあっても、ディコンにやきもちを焼いたりはしないのだ。
 クレイヴン氏が、メアリがディコンに助けられて起こした奇跡を目の前にしながら礼を言わないのは、目下の者に感謝の言葉を述べたりすることがありえなかった彼の貴族としての、ひいては若くして成功し大金持ちとして一生を送った作者バーネット夫人の限界を示してしまったともいえるだろう。
 そして、歩けなかった少年・少女が主人公の起こした「奇跡」によって歩くようになる、という図式はこのころの少女小説にはありがちな展開。「ハイジ」しかり、「ポリアンナ」しかり。うがった見方をすれば「歩けない子供」は価値がないとでも言うのだろうか。まあそういう時代だったのだろうが…

 この作品は1993年にフランシス・F・コッポラ製作で映画化されている。観た事はないが、この映画では私の気なった部分を多少は補っているということなので、今度ぜひ観てみたい。
.04 2008 北米文学 comment0 trackback0

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