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村上春樹 ノルウェイの森


 ごろごろしながらこの本を読んでいると、PCでねこのHPを見ていたまゆまゆが、「やっぱりねこ飼うならノルウェイジャン・フォレストキャットよね~」と話しかけてきた。
 私もそう思う。金を出して血統書つきのねこを飼うなら、私もノルウェイジャン・フォレストキャットを選ぶな。手入れ大変そうだけど。
 と言うわけで「ノルウェイの森」だ。もちろんねことは何の関係もない。

 「ノルウェーの森」と言うタイトルはビートルズの「Norwegian Wood」からとられている。私は全くビートルズに興味がないので、ちょっとネットで探して聴いてみた。ああこの曲ね。歌詞はナンパした女の子の家に行ってナニしてやろうというような内容だ。なるほどこの小説にはこれと似たようなシチュエーションが頻発する。

 私は、以前から書いているように村上春樹が苦手だ。昔「1973年のピンボール」を読んでから今年の初めに「風の歌を聴け」を読むまで25年間読まなかったくらいだ。
 この作品は、読み出したら2日で読んでしまった。なにしろこの小説はおそろしく売れたので、いまさら私がストーリーを紹介するような必要もないだろう。フリーセックス時代の現代的な恋愛小説と、堀辰雄の「風立ちぬ」みたいなサナトリウム物が合体したような雰囲気を持つ作品だ。全体の物語はよく構成されていて、美しい表現と文章で描かれている。直子の住むサナトリウムの静謐な描写と、雑多な東京を描き出すコントラストは見事だ。
 とても読みやすくて、だれにでもすらすら読めて、センチメンタルな気分に浸るにはもってこいな作品だ。だからこそあれだけ多くの人に読まれたのだろう。作中にちりばめられた文学、音楽などの作家名、作品名がちょっと知的な印象を与えるのも一般読者にはくすぐったかったに違いない。

 でも正直、やっぱり私はあんまり好きではなかった。
 まず、主人公がセックスをしすぎる。いや別にセックスしてもいいんだけど、無駄に描写しすぎなのではないだろうか。上巻の中ほどで主人公が行きずりの女の子とセックスするところがあるが、これは物語上全く必然性がないと思う。そういうのを細かく描くことで主人公の空虚な心情のようなものを表現しようとしたのだろうか。

 主人公の彼がなにやら強烈なナルシストであることが非常に気になる。この小説の世界では、自分(主人公)が人よりも優れていることははじめから明らかであるという前提が厳然として存在し、その印象を和らげるためだけに寮の先輩の永沢という超人的な人物を配置している。ここで描かれているのは主人公に都合よくできた世界なのだ。だから性的に放埓な事をしても、ヒロインたちは笑って許してくれる。
 それで主人公は高校時代の友人の恋人だった直子を愛することになるのだが、その愛情が全くいい加減であきれてしまう。はっきり直子に対して愛を告げることがない。アクションがないのにリアクションはない。まして男と女はなおさらだ。この男は傲慢でありながら優柔不断、この主人公の人間的な欠陥が直子を追い詰めた一因なのではないのか。
 さらに緑という少女が主人公の前に現れ、これが彼を振り回してくれることになるのだが、この少女の造形はかなり型破りで面白い。主人公はこの緑に対してもはっきりしない態度を取り続ける。

 登場人物全員がセックスについて非常に軽い考え方をしているのもこの作品の特徴で、この一点だけでこの作品について行けない読者もいるのではないだろうか。登場人物の女性はみな主人公に対して非常に都合よく描かれている。心を病んでいてセックスができないと自覚している直子でさえ、あんなことやこんなことををして主人公に奉仕してしまう。一般的に女性は普通この小説に描かれている直子や緑のような(性的な)行動はとらないと思う。
 全体にはかなり深刻なテーマを扱っておきながらそういうご都合主義のラノベ的、いやエロゲ的な展開に終始違和感を感じながら読むことになる。だから読後感は、とても気持ちが悪い。

 かなり過激で露骨な性描写が多く、忠実に映像化したら間違いなく18禁だ。でもこれはおそらく、高校くらいなら学校の図書館にも置いてあるんじゃないんだろうか?
 これを読んで、文学作品にもゲームソフトみたいに「性的な描写が含まれています」とかの警告文をつけるべきではないかとも思った。

 結局この小説は二人の女の子…病的な直子と健康な緑のどちらを選ぼうか迷ううちに袋小路にはまる優柔不断な男を描いた作品なのだ。この作品のラスト、直子を失ったショックから立ち直りかけた主人公は「健康な」緑のもとへ帰ろうとして彼女に電話する。緑に「どこにいるの?」と訊かれて、自分が「どこでもない場所」にいることに気づく。あのラストで、すでに直子を失っていた彼は、自分の心が緑の世界からあまりにも隔たっていることに気づく。このラストでは彼が緑をも失ったことが暗示されている。

 ある意味堀辰雄や福永武彦といった、数多くの作家たちによってこれまでに書かれてきた恋愛小説の終着点とも言えるし、最近流行の純愛小説のハシリ、と言えなくもない。恋愛小説が今の携帯小説のような俗悪に堕する直前の最後の光のような作品で、いや半分は俗悪に堕しつつあるかもしれないが…そういう意味ではとても重要な作品かもしれない。
 でももうこれでおなかいっぱい。もうこの作家はあと25年間は読まなくていい。

 ところでビートルズの「Norwegian Wood」は、実は「ノルウェイ製の家具」の意味なのだそうだ。だから「ノルウェイの森」とノルウェージャン・フォレストキャットにはなんの関連性もない。
 ああねこ飼いたいなあ。アパートだから無理だけど。
.11 2008 日本文学 comment17 trackback0

comment

手厳しいですね(笑)
ワタシはご承知と思いますが村上春樹は得意でして(笑)
彼の小説はリアリズムのふりをした妄想系フィクションなのだと常々感じていまして、この小説も「恋愛小説」というお題でリアリズムに見せかけて実は暴走する筆者の妄想を描いたに「すぎない」ものだと思うのです。
だから出てくる女性たちはみな都合の良い女性。

それでも、精神が不安定な人を愛してしまった現代青年のなんとも頼りない不安のなかにもそれなりの悲哀があるんだよという点で、そのたよりなさにとどまり続けるところにある種誠実さのようなものは感じます。
まあ、べつに誠実でなくてもいいんでもっとしっかりしたものを書けというとそのとおりです。

このあとの村上春樹はリアリズムとそうでないもののあいだを揺れ動き、自分でも方向性が定まっていないのではないかというきがしますね。25年後には「ねじまき鳥クロニクル」をおすすめします。
2008.09.12 16:14 | URL | manimani #- [edit]
> リアリズムに見せかけて実は暴走する筆者の妄想を描いた

なあるほど!!…って、そんなんなら何でもOKじゃないですか!(笑)

好きじゃなかったけど、けっこう面白かったですよ。上下巻一気に読んじゃったし。

上にもちょっと触れましたが堀辰雄や福永武彦の格調高い恋愛小説と、「セカチュー」さらにはケータイ小説(「恋空」みたいな)へつながる中間的な作品かも知れません。そういう意味ではこの作品の成功が日本の恋愛小説にとどめを刺したのかもしれません。
堀辰雄の影響は「なおこ」というヒロインの名前で暗示されている、というのは考えすぎでしょうか?
2008.09.12 22:03 | URL | piaa #- [edit]
『ノルウェイの森』は、読んだときに自分の記憶を整理してくれるような、そういう感じがしました。だからなのか、ほとんど読み返していません。
代表作と言えば代表作なのでしょうが、どちらかというと短編集のほうが好きです。ちょっと奇妙な感じやユーモアがあるような話がありので。
『カンガルー日和』の「とんがり焼きの盛衰」とか「ありか祭り」、『TVピープル』の「眠り」などは何度も読んでいます。


2008.09.13 10:04 | URL | kmy #GaU3vP2. [edit]
kmyさん、コメントありがとうございます。

この主人公がどうこうというより、これだけ男性に奉仕する女性ばかりを描き続ける書き手の心理として、女性に対する差別的なものを感じてしまいます。
この非フェミニズム(と私には思える)な作品がなぜ女性に支持されているのか、その事のほうが小説自体よりも興味深いです。

女性の読者たるKmyさんはどう感じられましたか?
2008.09.13 20:45 | URL | piaa #- [edit]
ハルキ擁護派がやっぱり多くて、ハルキが嫌なのは少数派なんですねえ。

piaaさんが指摘されるように、この小説に出てくる女性、みんな変ですよ。
こんなに男に都合がいい女なんていませんよ!
特に直子は「これが男の目から見た理想の女性なの?」と、ものすごく違和感がありました。
でも、著者の妄想といわれれば、なるほどと深く納得。

ハルキ苦手なワタシはもう二度と読まないです(キッパリ)。
2008.09.14 00:02 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
vogelさん、こんにちわ

こんなに男に都合がいい女なんていない、と、
私もそう思います。
登場する女性全員…冒頭のスチュワーデスからハツミさん、レイコさんに至るまで…全てが男に都合がいい、驚くべき小説です。
ここまでリアリティのない展開はこの小説以外ではエロゲくらいですね。
この作品を支持するならエロゲも容認すべきです。
女性はこういう作品に対して怒りの声を上げるべきだとさえ思います。

それにしても、こういう異常な小説が大衆に支持されているという事そのものがとても興味深いと思います。
2008.09.14 10:42 | URL | piaa #- [edit]
登場する女は必ずしも女とは限らない。
女を男、ゲイと捉え直すと案外、合点が行くと思いますよ。
ハハハ
2008.11.16 15:34 | URL | りゅう #mQop/nM. [edit]
ノルウエーの森、年末に読みました。来年映画化されるらしいのですが映画的としては面白い作品にはなるでしょうがどちらかといえば私も主人公には思いいれ出来ませんでした。性と死がテーマで1969年頃の混濁した時代の空気は好きなのですが二十歳の頃にあまりにおいしい性生活しやがってという気持ちも自分がそうでないだけにあります。理系の東野さんに比べ村上さんはいかにも文系の作家さんという感じ。人間所詮理解し合えないところもあるという妙な悲しみが残りましたね。感傷以上哲学未満かな。
2009.12.31 10:27 | URL | 福田浩司 #NetAmKeg [edit]
福田浩司さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
年末年始忙しくてレスが遅れました。
記事ではソフトに書いていますが正直私はこの作品を、『議論するに値しない』と思っています。ジコチュー男の妄想話を読んでも得るものは何もなさそうです。

ちなみにコメントのタイトル「青海爽快」とはどういう意味なのでしょうか?ググってもよくわかりませんでした。
2010.01.02 23:43 | URL | piaa #- [edit]
単なる駄洒落です。青海爽快おうみそうかい。年末に派遣で東京ビックサイトのイベントの手伝いのバイトにいき、その近くが青海という町名で寒いわりに爽快な海の景色だったんで。やっぱり年末にテレビでやっていた東野さんの容疑者Xの献身の方がよかったかな。映像化されてない初期の作品も結構トリッキーで面白いの多いし。
2010.01.03 02:27 | URL | 福田浩司 #NetAmKeg [edit]
合点いたしました(笑)
2010.01.03 23:09 | URL | piaa #- [edit]
この小説は、他の娯楽小説みたいに主人公や脇役に感情移入して読む、というのは不可能のように思えます。
というかノルウェイの森は、恋愛小説として評価するとド三流になってしまう内容かと思います。

たぶんこの小説の支持者でさえも、小説に出てくる人物の造形にリアリティは感じてないだろうし、なんでこんなご都合主義行動をとるんだとさえ思っている人もいると思います。
たぶん読み手は小説の流れを上から俯瞰しなきゃいけないんだと思います。
そしたら見えてくるのは現代社会の興隆、すなわち自由選択社会、高度経済成長と資本主義社会、にひそむ空虚さなんだと思います。
たとえばセックスがやたらでてくるのは、そうすることで「人間の究極的な繋がり=象徴としてのセックス」の価値の摩耗、消滅を描こうとしたのでは。
やたら多い割には淡泊ですし。
現代社会にひそむ孤独感、それに伴う青年の自意識の肥大=主人公のナルシズムとか。

ともかく東野圭吾を読むのと同じ態度で読んじゃ、そりゃダメに決まってますよ。
村上春樹の作品はなんだか娯楽作品風仕立てにしてある形式文学、いわゆる純文学ですから。
2011.09.21 15:35 | URL | 来訪者 #CofySn7Q [edit]
上にも書いているように、私はこの作品を、『議論するに値しない』と思っているのですが、ひとつだけ。

この作品が『高度経済成長と資本主義社会、にひそむ空虚さ』を描こうとした、という事には異論ありませんが、
「主人公や脇役に感情移入して読む、というのが不可能」なら、もはや小説として存在する価値がないと私は思います。
2011.09.21 21:36 | URL | piaa #- [edit]
若い時にこの作家の短編をいくつか読んで、とくにピンとくるものもなく、私も20年ほど村上春樹は放置してました。途中やたらと売れ始めたり、ノルウエイにいたっては何百万部、海外でも売れる、最近はノーベル賞候補…、世の中どうなっているのか、とそういう意味で気になってました。あの中程度の作家が雷にでも撃たれて激変、ものすごく面白い文学をやりだしたのかと。1Q84、蛍その他、ノルウエイと読んでみました。1Q84は筆は巧み、比喩力、イメージ喚起力、構成力とも抜群で、文学的内容はスカスカという印象。読後なにも残らない。これだけ巷間もてはやされているのだからなにかあるはずだと、ノルウエイの森も読んでみました。丁度読み終えて、えぇっ、という感じです。ネット検索していてここを発見、まさに感想を書いておられる通りです。安心しました。私だけが、読解力なくて、このベストセラーの良さがわからないのか少々焦ってましたので。でもひょっとして、という思いで海辺のカフカも読んでみます。
2011.10.10 05:26 | URL | 民夫 #- [edit]
民夫さん、コメントありがとうございます。
今年もこの人がノーベル文学賞獲らなくて安心しました。
獲るはずはないと思いながらも、毎年獲ってしまうんではないかとはらはらします。

まあこれだけロクでもない作品を書いて、それが売れてもてはやされているんですから、他の作品が特別いいなんてことはありえないと思います。
この作家をいくら読んでも時間の無駄だと思いますので、他の作家の作品を読まれるほうをお勧めします。
バオ・ニンの「戦争の悲しみ」あたりはこの作品と比較するにはもってこいだと思いますよ。いかにワタナベくんの悩みが空疎なものか思い知らされます。
2011.10.10 22:13 | URL | piaa #- [edit]
レス有り難うございます。この作家、もしノーベル文学賞獲ったら、世界の文学レベルをどう解釈すべきかと思うと、確かにはらはらどきどきです。大江のときはそろそろ獲ってもいいかと応援しましたが、自国作家が候補に上がり続けて冷や汗もの、というのはいささか生理的に具合悪い感じです。お奨めの「戦争の悲しみ」面白そうなので、今度読んでみたいと思います。
2011.10.12 01:35 | URL | 民夫 #- [edit]
ノーベル文学賞の歴代の受賞者をみると、本の売り上げはあんまり関係ないようです。スタニスワフ・レムのように、獲るべきだった人に与えていない例も多いです。なぜレムがノーベル文学賞をとれなかったかというと、それは彼がいわゆる「SF作家」だったからだと思います。
だから「流行作家」であるムラカミ氏は多分受賞しないのではないかと(勝手に)思っています。梨木香歩さんとかのほうがノーベル文学賞むきかと。
いずれにしろノーベル文学賞、選考基準が曖昧すぎますよね。
2011.10.12 22:46 | URL | piaa #- [edit]

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