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イタロ・カルヴィーノ むずかしい愛


 これは当ブログではおなじみのイタリアの作家カルヴィーノの、1950年代に書かれた短編を集めた短編集。最近なかなか本が読めなくて、この薄い本を読むのに丸一週間近くかかってしまった。

 カルヴィーノというと作品ごとにまったく違う作風を見せ、それらの作品がいずれ劣らぬ独特の魅力を持つ作家で、傑作率が非常に高い。作家としてのキャリアのはじめはネオ・レアリズモの作風だったがやがて幻想的・前衛的な作風へと転じていくことになる。この「むずかしい愛」は初期のレアリズモからだんだん寓意的なものが滲み出してきたころの作品が収められている。

 ここに収められた12の短編はいずれも「ある○○の冒険」と言うタイトルで統一されている。
「ある兵士の冒険」、「ある悪党の冒険」と言った具合だ。それぞれの短編は全く独立した内容のもので、まったく違う主人公とシチュエーションを持っている。「ある兵士の冒険」は若い兵士が汽車のコンパートメントの中で未亡人らしき女性と同席して妄想しまくると言うだけの物語だし、「ある悪党の冒険」はサツに追われて売春婦の家に逃げ込んだ悪党が、そこで警官と鉢合わせするという喜劇だ。ほかにも海で泳いでいて水着が外れてしまった女性とか、夫の留守に朝帰りした女性が家に入れず朝の町をうろつく羽目になったり、様々なシチュエーションでの主人公たちの小さな冒険が語られる。

 「むずかしい愛」と言うタイトルが暗示しているように、それらのシチュエーションには共通して愛がない。いや、ないわけではない。水着を失った女性は見知らぬ人々の善意で助けられるし、朝帰りした(と言っても不倫をしてきたわけではない)女性は朝のカフェでこれまでには知ることもなかった人々と触れ合うことになる。共稼ぎのすれ違い夫婦を描いた「ある夫婦の冒険」では強い愛情が描かれる。すれ違いという障害が二人の愛を強いものにしているのだ。

 「ある読者の冒険」という作品は海辺で読書に没頭する男性と、そこに居合わせた女性の出会いを描いていて非常に興味深い作品だ。男性は読みさしの本がとても気になっているが、女性のほうもとても気になっている。本を読み続けることと、女性を口説くことにどう折り合いをつけるか悩み続けることになる…アホだこいつ。イタリア人のくせに。本なんかより女口説くほうが大事に決まってる。などと思いながらもこんなシチュエーションを考え付くカルヴィーノに感心すること請け合いな作品。
 「ある詩人の冒険」は10ページほどの短編。詩人が恋人とともに舟遊びをするさまが描かれている…と思いきや最後の2ページだけいきなり文体が変化して情景を饒舌でシュールに描いて終わりになる。これはいったいどういうつもりなのか、今ひとつ理解できなかった。

 結局この作品集では愛の不在とか、翻訳者が解説で述べているように愛の障害となるものや、コミュニケーションの不可知性について書かれている、と考えてもいいのだろうか。そういう風にとってもいいだろう。でも思わずニヤリとしてしまうような機知にとんだ作品ばかりで、そんな風に堅苦しく考えなくても十分に楽しめる傑作ぞろいの短編集だ。
.09 2008 イタリア文学 comment2 trackback0

comment

この作品集はSFや幻想味溢れる作品が多い彼の中でもわりと普通の設定の作品でしたが、細やかな観察眼が冴えていて非常に好きです。でも暫定1位は見えない都市、かな…? 
2008.09.15 08:31 | URL | イーゲル #- [edit]
イーゲルさん
コメントが投稿できなかったと言うことで拍手ページへのコメントありがとうございました。
一応転載してみましたら問題なく書き込めました。一時的なものかな?

私もこれまで読んだ中では「見えない都市」が一番好きですね。「冬の夜ひとりの旅人が」もいいですけど。
2008.09.15 08:35 | URL | piaa #- [edit]

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