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シャミッソー 影をなくした男


 ドイツの古典的幻想文学というとE.T.A.ホフマンが思い浮かぶが、これはその流れを汲む幻想小説。
もちろんドイツ語で書かれていて、内容もホフマンに酷似しているが、このシャミッソーという作家、実は元々フランス人貴族だったが、両親が革命に伴って祖国を捨てた事から、幼い頃からドイツに住んだ。その結果すっかりドイツ人として成人してしまったらしい。

 この「影のなくした男」は、ペーター・シュミレールという男が、ある日、怪しい灰色の男に誘われるまま、お金を無尽蔵に取り出せる財布と自分の影を交換してしまう。ペーターはさっそくお大尽となり、人々の愛と尊敬を受けるが、ひとたび彼に影がない事を知るやいなや人々は彼の許を去って行くのだった。
 愛する女性ミーナまで失ったペーターは、影を戻してくれと灰色の男に詰め寄るが、灰色の男は、魂と引き換えになら戻してあげようと言い出すのだった、といった物語。

 たしかこれに似たような話がホフマンの作品になかったっけ、と思ってちょっと調べたら、どうもホフマンの作品ではなくてオッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」の第4幕がこの作品を下敷きにしているらしい(と言ってもシュミレールという男が影を奪われると言う以外はだいぶ違う話のようだが)。
ということはやっぱりこの作品は昔からホフマンの作品と似た所があると思われていたと言う事なのだろう。
 この作品のホフマンの作品との類似性は読めば一目瞭然とは思うが、他にもうひとつ連想させられるのが「ファウスト」である。ペーター・シュミレールはへたれのファウストであるとも言え、ただ影だけを武器にペーターに魂を売れと迫る灰色の男は安っぽいメフィストフェレスである。
 ペーターは影がない事で人々にバカにされ、財産をすべて失っても悪魔のささやきに屈せず、決して魂を売ろうとはしない。本家のファウストが生きることに倦んで、あっさり魂を売り渡したのとは大違いだ。それなら最初っから影なんか売らなきゃいいのに。

 では、この作品の中で大きな割合を占める「影」とはなんだろう。影がなったら、なにか困るだろうか?もしあなたのまわりの誰かの影がなくなっていても、あなたは気づくだろうか?現代とこの作品が書かれた19世紀初頭ではそんなに「影」の意味合いが違うのだろうか?
 それともこの作品の「影」には何か象徴的な意味でもあるのだろうか。すぐに思いつくのはこの作家の「フランス人にしてドイツ人」という来歴だ。「影」を国というアイデンティティと捉えると、当時のヨーロッパで国のない人と言ったらユダヤ人かジプシーなわけで、例えばユダヤ人はどんなにお金を持っていても尊敬されなかった。そういうことの象徴なのか?
 そう考えると、最後にいきなり登場して読者を煙に巻いてしまうような唐突な「七里靴」のエピソードも理解しやすいかもしれない。国というアイデンティティをなくしたペーターは世界中を旅することでその喪失を埋め合わせるのだ。

 というわけで、E.T.A.ホフマンがお好きな方は要チェックの一冊。
.29 2008 ドイツ文学 comment0 trackback0

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