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「予告された殺人の記録」再読


 MINMINが今旅行中の国、タイ。タイ名物と言えば、トムヤンクンとニューハーフ、それに虫料理が有名だが、MINMINは出発前に、タイの虫料理について書いてあるHPに「バッタの揚げた奴はエビの揚げたものと似た味でうまい」とあるのを読んで「バッタ食ってくる」と勇んで出かけたが、現地係員に「屋台のものは食べないでください」と言われて断念した(と電話で言っていた)。

 それはさておき、実は「Now Reading」に挙げてあるシャミッソー「影をなくした男」はもうとっくに読んでしまっていて、実はその後梶井基次郎の「檸檬・冬の日」(岩波文庫)を読み出したのだが、これがどうしたことか、まったく頭に入ってこない。ストーリー性に乏しく、詩的な表現に重きを置いた、かなり集中を要求する作風なので夏読むにはまったく不向きだったようだ。また今度寒くなってからでも読もう。というわけで久しぶりの挫折本となった。
 一方、RINRINが、休みと言えるのかどうかよくわからない夏休みに読書感想文の課題があるそうで、何かおすすめの本はないかと訊くので、ガルシア・マルケス「予告された殺人の記録」とタブッキの「供述によるとペレイラは…」を勧めようと本棚から取り出して、ついつい「予告された…」に読みはまって、また1時間半くらいで読んでしまった。

 3年ぶりの再読となったわけだが、この作品は本当にすごい。驚くべき求心力で、最初の1行目から読む者をこの世界へと引きずり込んでしまう。
 以前のレビューでも書いたが、ほぼ同じ分量の5章に分かれた極めて緊密な構成がとられている。特に章立てがなされている訳ではないが、アンヘラ・ビカリオの後日譚を描く第4章を除いてそれぞれの章がサンティアゴ・ナサールの死を知らせる言葉によって終わり、しかも最終章に至っては瀕死のサンティアゴ・ナサール自身が「おれは殺されたんだよ」と語るという強烈な幕切れまで一気に読ませる。極めて高いレヴェルの文学であると同時に「犯罪小説」でもある。

 ここで描かれる「殺人」の重さについて考える。6月の秋葉原での事件、先日の八王子での事件も刃物で被害者を刺したという点ではこの作品の中での殺人と同じなのだが、「殺す」という行為に対する加害者の心の中の重みがまったく違う事が気になる。
 パブロとペドロの双子は、誰かに止めてもらいたくてサンティアゴを殺すと公言し、それが誰にも止めてもらえずいよいよ事を行う段になったときも、恐怖に襲われながらの事だったというのが、後日の供述から書かれた文章からも伺える。
 それに対して、例えば先日の八王子の書店での女子大生殺しの容疑者は「刃物なら簡単」「視界に入り、目にとまった人を刺した」と供述している。刺された女性の人格などに全く無関心であったことがわかる。相手の人格を思う事ができなければ、殺人という行為に何の痛みも感じないのだろう。そう考えると、相手の死と向き合った上で犯罪を行う計画殺人よりも、何も考えない行きずりの殺人の方が何倍も罪が重いのかもしれない。ただしどっちにしてもパブロとペドロの刑は軽すぎのような気はするが(3年くらいで出所している)。

 この傑作は「殺人」という行為の重さと、起こらなくてもすんだはずの犯罪が周囲の無関心によって行われざるを得なくなっていさまを克明に描いている。そしてそれが引き起こす残酷極まりない結果…。殺伐とした事件が急増している現代だからこそ、一層読まれるべき作品なのかもしれない。

 で、RINRINには「供述によるとペレイラは…」を勧めようと思う。「予告された殺人の記録」は作品自体が余りにも完璧過ぎて感想の入り込む余地が少ない気がするからである。 
.25 2008 中・南米文学 comment(-) trackback(-)

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