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井伏鱒二 山椒魚


 井伏鱒二は明治31年生まれの作家で、原爆をテーマにした「黒い雨」が有名だが、これは比較的初期の作品を集めた短編集。この作家も名前だけ知っていて全くはじめて読んだ。

 かなり飄々とした作風を持った作家で、ここに収められた12編の作品にも、なんと言うかあまり統一感は感じない。特に冒頭に抽象的な「山椒魚」が置かれたのでそう思ったのかもしれない。正直面白い作品と面白くない作品の差が大きい作品集である。

 表題作「山椒魚」と、「屋根の上のサワン」はこの本の中でももっとも「面白くない」部類の作品である。なぜ「面白くない」かというと、どちらも抽象的だからなのだが、抽象的なだけに凝縮された世界が展開する。文学的価値は多分この2作が他の10作よりも数段上なのは間違いないだろう。しかし正直、このほかの作品、例えば「朽助のいる谷間」「シグレ島叙景」「女人来訪」あたりの方が読んでて数段面白く、惹き込まれる。男女の機微を描いたこれらの作品はモダンでユーモラス、かつかなり通俗的なものだが、この作家ならではの独得の距離感と視点の面白さで読ませる。文学的な価値が高いから面白いとは限らないと言う好例である。この三作に限らず、大正から昭和初期に書かれたとは思えないほど生き生きとした楽しい作品が多い。現代小説を読む気楽さで読んで充分OKな作品集だ。

 さて表題作の「山椒魚」だが、これは巣から出られなくなってしまった山椒魚と、やはり彼の巣に幽閉されてしまった蛙との物語。対立していた山椒魚と蛙が和解するような印象のエンディングなのだが、作者は1985年に新潮社から「井伏鱒二全集」を出した時にこのエンディングをばっさり削ったらしい。これには非難が集中したらしいのだが、これについては「山椒魚と蛙が和解するような印象」を与えないように削りたかったからだとするような説もあるようだ(詳しくはウィキペディアを参照)。いずれにしろ既に発表してしまった作品に、小さな間違いを修正するくらいならまだしも、こういう大きな改変を施すのはあまり褒められた事ではない。逆に言うとそこまでしても作品を完全なものにしたかったと言う事だろうか。
.09 2008 日本文学 comment0 trackback0

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