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ロバート・ニュートン・ペック 豚の死なない日


 この作品、実は今回読むまで、書店でタイトルだけ見てハードボイルド小説だとばかり思っていた。
でもよく考えたら、白水Uブックスにハードボイルド小説なんてあるわけないし、よくよく見たら翻訳が金原瑞人氏ではないか。私は金原氏の翻訳した作品にはずれナシだと信じている。そのせいもあって、どんな作品なのか全く知らないまま、ついつい買ってしまった。

 この作品は、作者の少年時代とおぼしき少年ロバートが、質朴な生活を信条とするシェーカー教徒の両親のもとでのつましい生活と、父と愛豚ピンキーとのふれあいを通じて成長するといった内容の作品…と言ってしまえばなんだかすごくありきたりなつまらない作品のようだが、これは実際に読んでもらわないとわからないとは思うが、強烈な魅力の詰まった傑作である。ラストの20ページくらいは、本当に胸が締めつけられる様な感動を受ける。
 正直何を書いたらいいのかわからないくらい素晴らしい作品。できるだけ多くの人に、ぜひ読んでもらいたい。

 まず父ヘイヴンという人物。彼は教育を受けていない。文盲で、土地も持たず、今風に言えば人生の負け組みである。だが彼は自分に誇りを持ち、学校に通うロバートが学校で教わらない事を教えてくれる。ロバートはこの父を愛し、尊敬し、誇りに思っている。だからロバートはヘイブンが敬意を抱く隣人たちにも敬意と信頼を感じる。このシンプルな信頼関係が、今我々の身の回りには足りないことに気づいて愕然とする。現代日本では子供たちは親の社会的序列や裕福さを気にして、親を基準にした信頼関係を築けないのではないだろうか。
 その他ロバートを取り巻く人々、隣人のタナーさんや伯母さんたちなどがいきいきと描かれている。彼らも本気でロバートのことを心配し、世話を焼いて、叱ってくれる。そのあたりの昔風の親しさ、厳しさも、この時代の人生の、心の豊かさを感じさせる。
 ロバートはどうやら同級生のベッキー・テイトという女の子が好きなようなのだが、その子の名前は2~3度語られるだけ。そのへんもじっくり描いてもっと長い作品ならよかったのに、と思ってしまうが、そのへんをさらっと描くのが名作の名作たる所なのかもしれない。

 ここに描かれているのは、いつごろのアメリカなのだろう。作者ロバート・ニュートン・ペックは1928年生まれだから、1940年前後というところだろうか。実はこれを読み終わった後で、同じように昔のアメリカでの少年の生活を描いたある作品を思い出した。ブラッドベリの「たんぽぽのお酒」である。このブラッドベリの作品、「ノスタルジックで素晴らしい」と評する人が非常に多い。だがこの「豚の死なない日」を読んでしまったら、「たんぽぽのお酒」なんて甘ったるい感傷だけの作品である事に気づかずにはおれないだろう。
 「豚の死なない日」は、ノスタルジックではあっても感傷的ではない。そしてここには「たんぽぽのお酒」には存在しなかった、未来を見つめて、確実に成長する少年がいる。

 繰り返し言うが、この記事を読んだら、ぜひ読んで欲しい。今読んでいる本は放り出してでも。
 こんな素晴らしい作品を読まないなんて、人生の損失だ。
.03 2008 北米文学 comment7 trackback0

comment

これ、わたしも大好きな作品です。
ただ、表紙のイラストのどよ~んとした感じが怖くてカバーを取ってしまいましたが・・・。

記事を読んで、読み返してみたくなりました。
続編もいいですよ。
2008.06.04 20:41 | URL | ぐら #- [edit]
いや~この本はいいですねえ。素晴らしい作品でした。
続編もぜひ読んでみたいと思います。
ちなみにこの作家のほかの作品はなにかご存知ですか?

表紙、そんなに怖かったですか?(と本を取り出してしげしげと見てみる)
・・・ああ、ホントちょっと怖いかも。
2008.06.04 22:46 | URL | piaa #- [edit]
「スープ」という作品があるみたいですが、金原訳ではないためか、まだ読んでません。
多分、この「豚の死なない日」も、金原さんの翻訳本でなければ手に取らなかったと思います。
タイトルが「豚」だし、「死」だし、表紙は暗いし(しつこい!)。

そうそう、邦題にかんしておもしろいエピソードがこちら(http://www.hico.jp/ronnjya/honyaku/kanehara/22.htm)に載っています。
お読みになっていなければ、是非。
2008.06.05 19:34 | URL | ぐら #- [edit]
この本が出版されたとき、かなりいい評判だったので気になりつつも、
ぐらさんがおっしゃった通り、

>タイトルが「豚」だし、「死」だし、表紙は暗いし

表紙を見て買わなかったんですよ。

やっぱりおもしろいんですね。
買いたいリストにメモメモ…
2008.06.05 21:28 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
>ぐらさん

ぐらさんも「訳者買い」でしたか。
邦題についての記事、読みました。金原氏が題名については編集者任せというのが意外ですよね。続編のほうはひねりなさすぎのような気もしますが。

>vogelさん

私は表紙はさておき、記事にもあるようにてっきりハードボイルドとかそっち系だと思い込んでいました。だって「豚の死なない日」って、なんだか「野獣死すべし」みたいな感じ、しませんか?
それはともかく、とてもいい作品なのでぜひ読んでくださいね。
2008.06.05 22:30 | URL | piaa #- [edit]
う~ん…人間の思いこみってスゴイですね。
「豚」と「野獣」って、どう考えても対極の存在(笑)
2008.06.06 22:42 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
いやいや
野獣=死ぬべし
豚=死なない
と考えたら…(笑)
2008.06.06 23:44 | URL | piaa #- [edit]

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