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ロシア・ソビエトSF傑作集(上)


 創元から発売されている「ロシア・ソビエトSF傑作集」はロシア・ソビエトのSFの古典的な代表作を、名訳者深見弾氏がクロニカルに編纂したもの。この上巻にはオドエフスキー「四三三八年」、モロゾフ「宇宙空間の旅」、クプリーン「液体太陽」、ボグダーノフ「技師メンニ」、ブリューソフ「生き返らせないでくれ」の5作を収録。

 冒頭のオドエフスキー「四三三八年」は1839年に書かれたというからSFそのものの歴史からしても相当初期のものといえる作品で、題名通り4338年の人類の生活について書かれた未来小説である。この未来社会がなんとも言えずピンボケで、この作家自体あまり強い想像力を持たなかったのだろう。小説としても洗練されていない。もはや資料的な価値しかない作品かもしれない。

 モロゾフ「宇宙空間の旅」は作家自身投獄され、獄中でヒマにあかせて書いた妄想宇宙旅行記。月のクレーターがどうやってできたかを考察していて、当時通説としてクレーターは火山活動によってできたとされていたが、モロゾフはこの作品で、クレーターは隕石によって出来たのではないかという考えを述べている。結果的にはモロゾフは正しかったわけだ。これはとても短い作品で、やはり小説としてはイマイチ。

 次のクプリーン「液体太陽」は俄然面白い。太陽エネルギーを凝集して液状にして巨大なエネルギーを得ようとする物語。結局主人公たちは失敗し、液体太陽は大爆発を起こしてしまう。1912年に書かれたこの作品はのちの核エネルギーと、それをもてあましてしまう人類の姿を予言したものだとも言える。この作品集の中でも、もっともSFらしい一作。

 ボグダーノフ「技師メンニ」はこの本のほぼ半分を占める150ページほどの中篇。開拓時代の火星を舞台に技師メンニの活躍と愛と苦悩を描いた大作。とにかく理屈っぽい会話が多くて読みにくい(よく読むと名言多数)かと思えば、詩情あふれる神話的な語り口も併せ持つ。
 ここではSFという狭い枠にとどまらず思想文学への飛翔が見られ、労働者と権力者が手を携えて努力するという、理想的な共産主義世界が描かれているのだ。でもレーニンには受け入れられなかったのだそうだ。共産主義って難しい。火星である必然性が今ひとつよくわからないが、SFという殻でくるまないとこういう思想的な小説は発表しにくかったのかもしれない。ちなみにこの作品は「赤い星」という作品の続編なのだそうだ。

 最後のブリューソフ「生き返らせないでくれ」は、マッドサイエンティストの狂った技術を目の当たりにする短編で、一人称を「我輩」に変えたらレムの「泰平ヨンの回想記」の中に紛れ込ませても全然違和感がなさそうな作品。これをレムより50年も前に書いちゃったなんてすごい。

 というわけで、収録作品のどれをとってもなかなか興味深い作品集だった。巻末に深見氏の「ロシア・ソビエトSFの系譜」という詳しい解説があって、それがまた面白そうなのだがまだ読んでいない。下巻にはブルガーコフやベリャーエフが登場。こちらも楽しみだ。
.12 2008 SF comment2 trackback0

comment

私は「技師メンニ」がすごく好きなんですよねー。衝撃でした。作者の生き様にもショックを受けましたが…; ラストが感動的なんですよね~!

「液体太陽」もたしかにSFらしくて面白いですよね。これを読んで、自分もチャールズベリー卿になりたい!って言ってた人がいましたよ。

「生き返らせないでくれ」は、私はストルガツキーっぽいようにも思いました。「月曜日は土曜日に始まる」みたいな?

下巻も楽しみですね♪ ちなみに私は最初の「五人同盟」が好きです。
2008.05.12 23:46 | URL | ntmym #- [edit]
そうそう、ボグダーノフは体中の血液を総入替えする実験中に死んだとか。今の感覚ではありえないですね。
「生き返らせないでくれ」は、「魔法研究所」とか言いながらちっとも魔法じゃないじゃん、と突っ込みたくなりました。

どれもとても興味深い作品でした。下巻については現在鋭意読書中です。しかし下巻はさらに面白いですね。ベリャーエフの「髑髏蛾」はすごかった。
2008.05.13 22:00 | URL | piaa #- [edit]

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