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クリスチャン・ガイイ さいごの恋


 フランスの作家ガイイは、ミュージシャンを目指していたが挫折し、何年もほとんど収入もなく引きこもりに近い生活をした後、作家として成功したという経歴の持ち主。
 これはそのガイイの新作。図書館で見つけて、翻訳の野崎歓氏があとがきで絶賛しているので借りてみた。

 主人公ポールは作曲家。病気で余命いくばくもない事を告知されている。ある日彼はチューリヒで行われた自作の弦楽四重奏曲の初演に立ち会うが、この曲の初演が無残な失敗に終わるところからこの小説ははじまる。疲れ果てたポールは妻リュシーと入れ替わるように海辺の別荘地へ。そこでひょんなことから出逢ったのは、歌手で人妻のデボラだった…

 と、あらすじだけを書くといかにもありがちなヨーロッパ映画みたいなストーリーだが、この小説の魅力はだいたいのヨーロッパ映画と同様、ストーリーにはない。その場面場面における情景描写の見事さが、フランスの小説らしい独得のきらめきを感じさせて美しい。そしてその独得の文章のリズムが、なんともいえない「揺らぎ」のようなものを感じさせて不思議な読中感を与える。…といっても、まだこの本を読んでなくて、この記事を読んでいるあなたにはどんな感じなのか伝わらないだろうと思うので、少し引用してみる。

 四つか五つの色彩のたわむれ。まもなくそれが始まるだろう。六つかもしれない。数えてみなければ。マリンブルーの車。ミルクを溶かしたようなブルーの空。グレーの道。濃い茶色の木の幹。緑の葉。そこに白い雲が加わるのも歓迎だ。ほら、あそこに一つ。運転しながら彼女はその雲に気がついた。車はオープントップにしてある。かわいらしい雲。そのせいで、別荘に入っていく角で曲がりそこねるところだった。(第8章より)

 上の引用だけでもわかるように、短いセンテンスを重ねていく事で情景描写と心理描写を手早くまとめて、まるで印象派の絵筆のように微妙に文章を重ねていくセンスは見事としか言いようがない。
 で、このスタイルでは長い作品を書けないことも作者はよくわかっていて、この作品はわずか150ページほどの作品である。したがって主人公ポールをはじめとする登場人物の人物像はさして掘り下げて描かれるわけではないし、恋といえるのかどうか微妙なストーリーの運びも、ポールが生きているのかどうかはっきりしないラストシーンもいかにもヨーロッパ映画的。
 重ねて言うが、これはストーリーを読む小説ではない。この独得の文章を楽しむ作品だ。
 もしあなたがこの文章が気に入ったなら、これはあなたのフェイヴァリットな作品となるかもしれない。
.20 2008 フランス文学 comment0 trackback0

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