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アニータ・ブルックナー ある人生の門出


 アニータ・ブルックナーは英国の女性作家。
ブッカー賞を獲った「秋のホテル」が有名で、それを読みたかったのだけど図書館にこれしか見あたらなかったので借りてみた。どうやらこの作品は彼女の処女作らしい。

 バルザック研究者のルースが自分の半生を振り返る、という形をとりながら完全に自伝的私小説である。ルースは作者本人であろうと思われる。母へレンは女優で、全く生活感のない女である。そのヘレンをいたわりながらも外に女を作っている父のジョージ。そんな父母に囲まれ、ルースはカタブツ女として成長する。やがて自立しようとフランスへ留学するルースだったが…

 こうやってストーリーを書くとちっとも面白くない。実際この作品にはたいしたドラマティックな展開はないし、登場人物もみなどこか性格に大きな欠陥を持っていて、魅力的なキャラクターはひとりもいない。特別に美しい描写があるわけでもない。それなのになぜか惹きこまれて読んでしまう不思議な引力がある作品だ。

 全編を通じて英国のどんより曇った空のような重苦しい雰囲気を感じさせながら、重くないタッチの文章ですらすら読めるのは訳者の力も大きいとは思うのだが、この異国の家族の肖像を、何の違和感もなく読めるのは、どこの家庭にも多かれ少なかれある家族間のわずかなズレのようなものが普遍的なものだからだろうか。
 実はこの作品、作者自身が神経症の治療のために自伝的な小説を書いたものらしい。自らの人生を客観的に見用という意図から書き出したのだそうだ。ここで書かれているのは相当寂しい人生だ。しかしそれさえもひとつの文学作品として結実させる強さに驚かされる。

 ところでひとつ、訳文の中で気になったのが「フラット」。これは「家」のニュアンスで使われていて、なじみのない表現だったので調べてみたら、「同一階の数室を1戸とする共同住宅」の事だそうで、フロアごとに別所帯の入る借家のことだ。微妙に「アパート」とは違うのでそのまま表記したのだろうか。
 装丁のルノワールの絵も、どう考えても作品と合わない気がする。
 それとタイトルの「ある人生の門出」というのはこの作品にはふさわしくないのでは? 「門出」にはおめでたいイメージがあるが、この作品にはおめでたい気分はひとかけらもない。原題は「A Start In Life」。いや結構おめでたい印象の原題ではあるんだけど。う~ん。
.09 2008 英文学 comment6 trackback0

comment

piaaさん、こんばんは。
アニータ・ブルックナーは男性が読んでも味わいがあるんですね。
ある時期、アニータ・ブルックナーはワタシにとって特別な作家だったので、なんとなく嬉しいです。 「男性が読んだらどんな風に感じるのかな?」とずっと気になっていたもので。
堅物の独身女性(それも結構な年齢の)が、長年自分を呪縛してきた家族や友人といったしがらみから自由になろうとする…どの作品も根底にあるのは同じモチーフ(だったはず)。
piaaさんの言葉通り、とても地味な話なんですが、独特の透明感があっていいんですよね。
日本で本がでた当時すでにかなり高齢で、新作が期待できないのをとても残念に思いました。
2008.04.10 00:40 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
vogelさん、こんばんわ。
これって正直言っちゃえば大して面白くないお話なんですよね。何か変わった事が起こるわけでもないし、特別魅力的な人物がいるわけでもない。主人公にしても、もうちょっとわがままに人生生きたらいいのに、とか思いながらなんとなく惹きこまれて読んでしまう不思議な小説でした。「透明感」、そうですね!うまい表現ですね。私が「重苦しいのに重くない」と書いた印象はそう表現するとぴったりきます。

結構たくさんの作品が訳出されているようですが、「秋のホテル」はそのうち読んでみようと思います。
2008.04.10 22:42 | URL | piaa #- [edit]
アニータ・ブルックナーは続けて読むと、どれも似たような話なので飽きるかもしれません。 とにかく地味ですから(笑)。
多少は波乱含みな展開の(といっても相変わらずな地味さですが)「秋のホテル」を読まれたら、それで十分だと思いますよ。
2008.04.11 21:58 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
そうですね、確かにすごく地味ですね。
ではやはり「秋のホテル」を、そのうちに読みます。
ちなみに「秋のホテル」を春や夏に読むのはやっぱり邪道でしょうか(笑)
2008.04.12 01:30 | URL | piaa #- [edit]
「秋のホテル」は、タブッキの「インド夜想曲」ほどの季節感というか温度感はないので、読む季節はあまり気にしなくてもいいような気がします。 むちゃくちゃ暑い日じゃなかったら違和感ないと思いますよ。
2008.04.14 00:17 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
では暑くならないうちか、それとも秋になってからか…
とにかくいつか読むことにします。
2008.04.15 00:03 | URL | piaa #- [edit]

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