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大江健三郎 治療塔


 はじめに言っておくが、大江健三郎には全く興味がない。
 したがって読むつもりも全くなかったのだが、あるところでこの「治療塔」という作品が、ストルガツキー兄弟の「ストーカー」を激しく剽窃してると読んだことがあって、以前から本当に剽窃なのか、もしそうなら、私の愛する小説をノーベル賞作家がどんな風に剽窃したのか一度読んでみたいと思っていたのだ。その「治療塔」が文庫化されていたので手にとってみた。
 大江の名誉のためにも、ストルガツキー兄弟の作品を愛する者としてもまず言っておくが、これは決して剽窃ではない。「治療塔」が「ストーカー」に似てる所はほとんどない。

 だって、「ストーカー」の百分の一も面白くないのだ。
逆に「ストーカー」を剽窃したのならもうちょっと面白くなったに違いない。

 この世界では、10年前に人類のうちのエリート「選ばれた者」が大挙して地球を離れ、「新しい地球」と言われる惑星へ旅立つ「大出発」という事件が起き、地球に残された「残留者」たちは混乱の中を生き抜いて平穏な生活を取り戻しつつある。そんなある日、「選ばれた者」が「新しい地球」から戻ってくる。
 ヒロインの「残留者」リッチャンの許にも、10ぶりに遠縁の「選ばれた者」朔ちゃんが戻ってくるが、30歳を過ぎているはずの朔ちゃんは10代の青年のように若々しかった…

 作者自身、ストルガツキーやレムの影響を受けてこの作品を書いたと述べているようだが、確かにそういう感覚はある。SFらしい驚異として、「新しい地球」で発見された「治療塔」という物が用意されているが、それがなんなのか、何のためにあるのかについて答えを用意しないあたりは、確かに東欧SF的だ。だが、その驚異が直接的に主人公に影響を与えないというのでは、その驚異の存在である「治療塔」自体に必然性が感じられなくなってしまう。ましてヒロインの「リッチャン」は「治療塔」どころか「新しい地球」を訪れもしない。朔ちゃんの話として耳にするだけである。
 「治療塔」の存在は、例えばソラリスの海のように人間の存在や道徳観念などを根底から揺さぶったりもしないし、遠い惑星にある物件なので、その権利を奪おうとして勢力争いが起こるわけでも、政府が立ち入り禁止にしているのに潜り込もうとする「密猟者(ストーカー)」も現れない。ただ、「治療塔」での「治療」を受けた人間とそうでない人間の相克の気配を感じさせるだけである。それを描きたかったのにしては(というかそれを描きたかったんだろうけど)あまりにも中途半端である。

 主人公を、やがて母になる女性に設定している時点で失敗である。男性作家は女性の一人称視点で小説を書くべきではない。男性が女性の意識で考えるのは普通でも相当難しい。さらにSFという特殊なジャンルではさらに難しくなる。
 「リッチャン」の置かれている世界は、さほど今の私たちの世界と変わらないのに、いきなり「治療塔」のような荒唐無稽なエピソードが、しかも外の世界の話として語られても、「リッチャン」の心には、海外旅行をしてきた友人の土産話くらいにしか響かないに違いない。現実的に考えて「リッチャン」にとっては「治療塔」は、朔ちゃんが若々しくなった原因以上の何の価値もないはずなのだ。だから物語の最後の方ではもはや絶望的にこの世界に共感できなくなってしまう。
 「ゾーン」を「ブツ」を目の当たりにして、命がけで「ゾーン」に忍び込むレッド・シュハルトのほうが何倍も我々の心を打つし、共感を覚える事ができるだ。

 というわけで、予想通りやっぱり面白くなかった。
 酷評した勢いでついでに言わせてもらえば、この装丁は何? あまりにもヒドイ。SFというジャンル自体をバカにしている。
.15 2008 日本文学 comment2 trackback0

comment

この装丁は確かにヒドイですね。
依頼された装丁家がきちんとこの本を読んだ結果、つまんなさすぎて、やる気がなくなったとか。
この方ってノーベル賞とったんですよねえ。 理解できないです。
2008.03.16 22:10 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
同じ出版社のこの作家の文庫には似たような装丁が多いです。
単に手を抜いているだけかも知れません。
でも見れば見るほどサイアクな装丁です。
作品の良し悪しや好き嫌いはおいといてもこれはあんまりだと思います。
2008.03.16 22:44 | URL | piaa #- [edit]

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