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バルガス・リョサ 楽園への道


 ペルーの作家バルガス・リョサの、2003年発表の近作「楽園への道」が、河出書房新社の「世界文学全集」の一冊として登場した。3000円弱と高価な一冊なのでちょっと逡巡しつつも、買ってしまった。
 500ページ弱の大作で、読むのに一週間かかった。

 結論から言うと、これは買って、読むべきである。買おうかどうか迷っているあなたは、明日買いに行きなさい。21世紀最初の傑作かもしれない。

 この小説は22章からなり、奇数章は19世紀にフランスで活躍した女性社会主義活動家フローラ・トリスタンの最後の数ヶ月を追う。一方偶数章ではフローラの孫ポール・ゴーギャンがタヒチへ渡り、生涯を終えるまでの十数年を追う。すなわち、直接には関係のない物語が交互に現れる独得の構成をとっている。それぞれの過去にさかのぼって様々な出来事や事件を描き出すので、フローラとポールのそれぞれの伝記的な要素もあるが、どこまでが史実でどこからがリョサの創作なのかはよくわからない。

 フローラ・トリスタンという人物は労働者がブルジョアに、女性が男性に搾取されている19世紀の社会に異議を唱え、労働組合を作る事を労働者たちに説いた女性である。その過激さから、「スカートをはいた煽動者」と呼ばれた。その活動の根底には、失敗した結婚と、その配偶者による一方的なセックスへの屈辱感があった。離婚が許されなかったこの時代、夫から逃げ回るうち父の故国ペルーへ旅したりするうちに、彼女の心の中に社会を変えなければという強い意志が生まれてくることになる。

 一方、彼女の孫ポール・ゴーギャンは、30代半ばまで堅実な会社員として働いて裕福な暮らしをしていたが、ある日友人の薦めで絵を書くことをはじめ、やがて芸術家としてすべてのものをなげうっていく事になる。
 友人で一時期一緒に暮らしたオランダ人画家フィンセント(もちろんあのヴィンセントのことだ)が評したように、彼は「ペニスで絵を描いて」いる。それが昂じて、堅いヨーロッパに飽き足らなくなった彼は、「楽園」を求めて南の島を目指す。そしてたどり着いたのがタヒチであったのだ。そこは性的にも解放された、彼にとっての「楽園」だった。

 歴史小説としても、フローラ・トリスタンとポール・ゴーギャンそれぞれの伝記的作品としても素晴らしい作品なのだが、では作者はなぜこの二人の物語を交互に語る形を採ったのだろうか、と疑問に感じる読者もいるかもしれない。
 性に絶望していたフローラと、妻との平凡な生活に満足していたポールをそれぞれに開放するのが「オランピア」という女性である。フローラの愛人として、ポールを芸術の深みへと引き込むマネの一枚の絵のタイトルとして、「オランピア」が登場してくる。
 そしてフローラが夢見た理想の社会を「楽園」とするなら、二人は形は違えどもそれぞれの楽園を追い求めた人生を歩んだわけである。一見無関係な、祖母と孫のふたつの物語を、こうして「オランピア」が、「楽園」が結びつけ、不思議と響きあって、読み終わるころにはひとつの巨大な小説として読者の心に大きな印象を残す。やはりこの作品全体をひとつの巨大な文学作品として捉えたい。

 バルガス・リョサはガルシア・マルケスのライヴァルとして名は知っていたが、これまで読んだことがなかった。以前はかなりの数の作品が訳出されて出版されていたようだが、現在手に入るのはこれと国書刊行会から出ている「フリアとシナリオライター」だけのようだ。なぜそういうことになるのだろう。
 ぜひ他の作品も再刊して欲しい。
 そして河出書房新社「世界文学全集」、今後も要注目だ。
.11 2008 中・南米文学 comment3 trackback0

comment

はっ!
買いに行かせていただきます!

一時期の南米文学ブームのときにはたくさんでていましたよねえ、バルガス・リョサ・・・
2008.03.12 03:54 | URL | manimani #- [edit]
ハイ、ワタシもすぐに買いに走ります(笑)。
やっぱり池澤夏樹が選んだ本のラインナップはすごいのかも。
2008.03.12 22:14 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
2冊お買い上げ、ありがとうございます(笑)
河出書房新社さんに雇ってもらおうかしら。
でもmanimaniさんはmixiで窮状を訴えておられたような…

池澤氏のセレクションはさすがです。実は高いので、既存の訳の集英社文庫版「存在の耐えられない軽さ」も買ってしまいました。
このシリーズでは次は残雪「暗夜」とバオ・ニン「戦争の悲しみ」が収められたやつを買おうかと思っています。

それと、私やっぱり翻訳もののほうが性に合うようです。
翻訳もののほうが日本人作家の作品読むより何倍もわくわくします。
2008.03.12 23:47 | URL | piaa #- [edit]

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