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小川洋子 博士の愛した数式


 これはRINRINが持っていた本を借りてきて読んだ。
小川洋子は1962年生まれの作家でこの作品は「薬指の標本」と並ぶ彼女の代表作。

 家政婦の仕事をしている未婚の母の「私」は「博士」の家に派遣される。「博士」は数学者だが、事故がもとで脳に損傷を受けた彼の記憶は80分しか持たなかった。
 …という設定で、素数を探すあたりからe^{πi}+1=0まで様々な数式が飛び交うなか「博士」と「私」と「私」の息子「ルート」との不思議な生活を描くきわめて独特な小説である。

 まあ私などは完全な文系人間なので全く数式などには疎いのだが、数学に興味がなくてもこの作品を読むのに何の障害もない。作者もくどくどと数式の説明などする気は毛頭なく、読者は語り手である「私」と一緒にちょっと考えてみればいいだけだ。
 素数、友愛数、完全数…やがてそれが「博士」と「ルート」が共通して好きな阪神タイガースへと重なる。みんなで野球を見に行くシーンなどはなんともノスタルジックである。

 さて、この作品ではこの日の試合(広島戦)の事がかなり細かく描かれている。中込が8回までノーヒットノーラン、しかし9回に無名の選手にヒットを打たれてしまう。この試合は1992年6月2日に行われていて、これは作中では触れられていないが、岡山で行われた試合である。作者は岡山出身で熱狂的なタイガースファンらしいので、実際にこの試合を見ていたのだろうか。

 一方ファンタジー的な要素を形作るのは博士のもつ障害「80分に限定された記憶」という部分なのだが、これに関しては2007年12月号の「ナショナル・ジオグラフィック」に同じような症状の人の記事があった。この人の場合、脳ヘルペスを病んで以来それ以降の記憶が数分しか持たないのだそうだ。博士もこれに似た症状なのだが、かなり珍しい症例である事は間違いない。そんなありえないような状況が、ちっとも無理に感じられない。 先に述べた正確な野球の描写や、数学という硬い世界を描きながら全体に漂うファンタジー的な空気とが見事な融合を見せる。「数学好きの人には物足りない」という意見もあるようだが、この意見は的外れ。この作品における数学は文学的なギミックなのである。そのギミックの使い方が(文学的に)素晴らしい事に意義があるのだ。そしてそういった仕掛けのもろもろを見事にまとめて、静かで感動的な、見事な小説に仕立てた奇跡的な作品である。素晴らしい。

 寺尾聰、深津絵里主演で映画化されている。これもかなりいい出来だそうだ。そのうち観たい。
.15 2008 日本文学 comment2 trackback0

comment

piaaさんも気に入られたんですね。 なんとなくウレシイ(笑)。
こんな小説って、ほかにはないですよね。
数学がこんなに美しい文学に昇華されていることに、ワタシも感動しました。
ただ、あまりにもこの本が気に入ったので、小川洋子の他の本を読むとがっかりするんじゃないか…と、へんなこと考えて、あまり小川洋子の本を読んでないんです。
2008.01.16 00:51 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
いや~、本当に他にはないユニークな作品ですね。
かなり気に入りました。

>他の本を読むとがっかりするんじゃないか…
と、私も思います、確かに。
この人の作品でもうひとつ読むなら、上にも書いた「薬指の標本」を読んでみようかな。傑作らしいし。
2008.01.16 01:00 | URL | piaa #- [edit]

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