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エイモス・チュツオーラ やし酒飲み


 早速ですが2008年P&Mアウォードはエイモス・チュツオーラ「やし酒飲み」に決定しました…と思わず口走ってしまいそうな、傑作。
 チュツオーラを読んだのは11月に読んだ「ブッシュ・オブ・ゴースツ」に続き2作目。作品が書かれた順で言うとこちらが第1作。「ブッシュ…」が2作目に当たる。

 「わたしは、十になった子供の頃から、やし酒飲みだった。わたしの生活は、やし酒を飲むこと以外には何もすることのない毎日でした。当時は、タカラ貝だけが貨幣として通用していたので、どんなものでも安く手に入り、おまけに父は町一番の大金持ちでした。…父は、わたしにやし酒を飲む事だけしか能のないことに気がついて、わたしのため専属のやし酒造りの名人を雇ってくれた。」 という度肝を抜く一文ではじまるこの作品には、さまざまなおぞましい生物(「ブッシュ・オブ・ゴースツ」での「幽鬼」と同じようなものか)や精霊のようなものが、善玉も悪玉も取り混ぜて次から次へと現れる。彼らは、なぜか強力な「縄張り」のルールに縛られており、主人公は彼らに襲われても彼らの縄張りを逃れてしまえばそれを超えて追ってくる事はない。巻末の解説に詳しいが、このあたりは古いアフリカの部族社会においては常識なのだそうだ。そして主人公が操る「ジュジュ」という妖術。これにはある種の植物の葉が必要で、それを使って様々なものに変身したりする事ができる。
 私は「ジュジュ」というと、チュツオーラとおなじナイジェリア出身のミュージシャン、キング・サニー・アデの音楽を連想してしまう。「ドラム」「ソング」「ダンス」の登場するシーンでは彼の音楽が私の頭の中で鳴り響いた。そういえば彼のやっていた音楽のことを「ジュジュ・ミュージック」と呼んでいた。彼の音楽を聴きながら読むと楽しそうなのだが、残念ながら音源が手元にない。

 この作品はすごく簡単に言えば主人公(やし酒飲み)が死んだやし酒造りを探しに死の町を訪ねるという物語なのだが、「死」の捉え方も独特なもので、生と死を連続したものと捉え、その垣根は低くて曖昧である(だからこそこの作品は「ペドロ・パラモ」と比較される事も多い)。道さえわかれば意外と簡単に「死者の町」へ入っていけるし、そこで生きている人と同じように話をする。
 それよりも何よりも、主人公は自分の死を誰かに売り渡してしまうのでもはや死を恐れる心配はないのである。だが恐怖は売り渡さなかったので、危機になると恐怖は感じる、というこの矛盾。ここに書かれた独特の価値観が興味深い。
 そして最後、旅を終えて家に帰ってきた主人公の村を旱魃が襲う。天の神と地の神が仲たがいしたからだ。で、天の神に捧げものをして旱魃が収まって終わりとなる。このとってつけたような旱魃の物語は、解説によると母権社会から父権社会への移行を象徴しているそうだ。そういう深読みがあらゆるエピソードに対していくらでもできる、全くそういう意味では最高級の小説である。
 …まあそんな事考えずに、アフリカの驚異の冒険小説として口をあんぐりあけて楽しむのもいい。と言うかそっちの方が楽しめること請け合い。

 これはナイジェリア人のチュツオーラが英語で書いたものだが、その英語がかなりデタラメだったらしく、翻訳でしかこの作品にしか触れられない我々はその英語がどのくらいデタラメだったのか想像することしか出来ない。この土屋哲氏の翻訳は「ですます」調と「である」調を混在させて独特の語り口を生み出している。
.12 2008 アジア・アフリカ文学 comment0 trackback0

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