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エイモス・チュツオーラ ブッシュ・オブ・ゴースツ


 エイモス・チュツオーラは1920年生まれのナイジェリア出身の作家。英語で作品を書いたが処女作「やし酒飲み」はその間違いだらけの英語と驚くべき内容で発表当時センセーションを起こしたらしい。
 この「ブッシュ・オブ・ゴースツ」は彼の第2作。私は彼の作品ははじめて読んだ。

 物語は、主人公の「私」がまだ善悪の区別もつかなかった7歳の時、戦争に巻き込まれて逃げ込んだ先が「ブッシュ」だった。「ブッシュ」とは「幽鬼(ゴースト)たち」の住む魔境で、「私」はそこで様々な事件に巻き込まれながら、あるいは事件を起こし、放浪しながら生活するする事になる、というもの。
 「私」は様々な幽鬼たちと出会い、彼らと仲良くなったり、敵対したり、殺されそうになったり、助けられたり、結婚したり、別れたりと波乱万丈なストーリーを繰り返す。

 強烈なアフリカの独特の色彩感で強い印象を与える本書だが、読んでいない人にどう伝えたらいいのだろうか。もしアニメ映画「キリクと魔女」をご覧になった方はあの映画に似た手触りの小説と考えてもらうといいだろう。

 例えば『「口をきく地面」と醜悪な女幽鬼』というエピソードがある。「私」は「腕なし幽鬼」とその仲間達に追われて「口をきく地面」に足を踏み入れてしまう。「私」が一歩歩くたびに地面が「おれを踏むな」と悪態をつくのだ。地面がわめき散らすので敵から身を隠してもすぐに居場所がわかってしまう。そんな危機一髪の状況の「私」の前に一人の若い女幽鬼が現れる。彼女は「たぐいまれな醜悪さ」の持ち主で、「私」は自分の置かれた危機的な状況すら忘れ、彼女の醜さを心ゆくまで味わいたいと熱望するのだ。
 これは美と醜について逆説的なことを書いたのか、それともあまりにも醜いものは美の域に近づくのだとでも言いたいのか、その真意は明らかにされない。
 「醜さ」を心ゆくまで味わいたいという感覚は面白い。人間は誰でも「怖いもの見たさ」と言った軽度のものから「グロ嗜好」みたいな異常なものまで、かならずマイナスの感情を持っているものだが、突然その異常な感情を抑えられなくなった自分に気づくのはちょっと怖い。

 こんな調子で奇想天外な、基本民話調のエピソードが積み重ねられていくのだが、『死んだ従兄に会う』の章だけはやたらに現実的な話になったり、そういうエピソードのコントラストも面白い。

 この作品、作風としては南米作家、特にガルシア・マルケスの「百年の孤独」を語るときによく言われる「マジック・リアリズム」(私はこの言葉は嫌いなのだが。だってどこにも『マジック』などないから)の流れに属するものだとよく言われるようだ。だが、やはりそこはアフリカと南米では違う。アフリカは南米よりも乾いているイメージがあるが、小説の作風にも乾きぶりが出ている。この作品の中では結構たくさんのシーンで雨が降るが、それでも作品全体に乾いた印象が付きまとっている。主人公も、そして作者も、後先を考えないで突っ走る驚くべき作品だ。
 ガルシア・マルケスのアイディアの洪水とはまた違う、強烈な魅力を持った作品である。

 チュツオーラという作家、他の作品もぜひ読みたい。だが現在は前述「やし酒飲み」しか売ってないようだ。これは「ペドロ・パラモ」と同等の傑作なのだそうだ。ううっ、読みたい。
.25 2007 アジア・アフリカ文学 comment2 trackback0

comment

亡くなられていましたか。かなりのお年だったんですね。
前後関係などがかなりむちゃくちゃだし、時間の感覚も
いいかげん?なところがまた楽しかったです。
『やし酒飲み』『甲羅男にカブト虫女』『薬草まじない』
それと表題のものは持っているのですが、何冊か
読んでいないものがあったようで、残念です。

「ペドロ・パラモ」は未読なのですがテイストが似ているのでしょうか。
ガルシア・マルケスも同じく、手にとっても読んだ事がなく。
読んでみようかしらん。
2007.11.27 14:17 | URL | めるつばう #- [edit]
こんばんわ。
「やし酒飲み」注文しました。楽しみです。
他の作品もやや高いですが古本で手に入りそうですね。

「ペドロ・パラモ」は死者の町を訪ねるという点が「やし酒飲み」と通じているとは聞きますが、どのくらい共通点があるのかは読んでみないとわかりません。ガルシア・マルケスともどもぜひ読んでみてください。
2007.11.27 20:52 | URL | piaa #- [edit]

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