安彦良和 機動戦士ガンダムThe Origin 第16巻

2007-11-24-Sat-23:48

 第15巻に引き続き「オデッサ編」後半の第16巻では、地球におけるジオン軍の拠点、オデッサに対する連邦軍の大規模な反攻作戦の詳細が描かれている。
 TVシリーズではオデッサ作戦のあとミハルのエピソードやジャブローでのエピソードがあったので順番が入れ替わっているわけだが、TV版の流れではモビルスーツ「ジム」の量産が目前なのに、配備しないうちに地上戦の決戦を始めるのは戦略的におかしいと思われるわけで、このエピソードの配置順の変更はもっともである。

 この第16巻では、まずジブラルタルでの死闘が描かれる。これはTVには全くないオリジナルなエピソードである。スレッガー小隊を秒殺したシャアの赤いザクと、アムロのガンダムが一騎打ちを繰り広げるというもので、ファンにはたまらないエピソードだ。シャアのザクはここで破壊され、逃げたシャアはどうやら一足先に宇宙へ上がったようだ。
 ここでシャアに「四度目だな、ガンダムのパイロット!」と言うせりふがあるが、勘定するとシャアとアムロが対峙したのは実は六度目だ。もっともそのうちジャブローではアムロがジムに乗っていたので置いておくとしても勘定が合わない。ガルマが死んだ時の戦闘を数に入れていなのだろうか?

 次は黒い三連星の残り、ガイアとオルテガらのドム8機の部隊とアムロのガンダムの対決。これはアムロの完勝。コアブースターも登場。
 そして後半はいよいよオデッサ作戦のメインの戦いになる。連邦軍は二台のビッグ・トレーのどちらが旗艦かを明らかにせず混乱させる作戦をとる。ホワイトベースも偽装旗艦「モルトケ」を援護するが、実はもう一台の「バターン」が旗艦で、この情報はスパイを通じてジオン軍司令マ・クベに漏れていた。マ・クベは「バターン」とその周辺の連邦軍を一蹴しようと、南極条約違反の核攻撃を試みる。
 で、核攻撃に普通なら巡航ミサイルでも使いそうな所だが、なぜか爆撃機が登場、これがTVに出てきたモビルアーマー「ザクレロ」のデザインなのが度肝を抜く。
 このザクレロが放った核ミサイル二発を、危険を察知したアムロのガンダムがビームサーベルでぶった切るわけだが、これはちょっとあんまりだった。ザクレロ爆撃機はVTOLでいかにも足が遅そうな機体だし、乗員も「この鈍足機」と言うセルフがあるのだが、それでも時速数百キロは出る筈で、ましてミサイルはどんなに遅くても音速近いスピードになるはず。いかに機動力に優れたガンダムとはいえ、モビルスーツがそれに追いつけるとはとても思えない。

 核攻撃に失敗し、敗戦を覚悟したマ・クベはモビルスーツ「ギャン」で出撃、連邦軍モビルスーツ部隊を圧倒した後、搭載していた核爆弾を使って自爆、連邦軍部隊を道連れにするのであった。 

 雑然とした、敵味方入り混じっての地上戦はスマートでもなければカッコよくもない。それどころかとても恐ろしい非人間的な光景である。それを延々と描くのはこの作家ならではであろう。
 そしてギャンが最後に黒海へ向かうシーンでは有名なオデッサの階段を下りていく。冒頭のジブラルタルといい、世界の名所を舞台にガンダム世界を構築するあたりはさすがだ。

 というわけで次巻からは宇宙編へ。映画の3作目「めぐりあい宇宙」に相当する部分へ入っていく事になる。

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