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イタロ・カルヴィーノ 魔法の庭


 20世紀イタリアの代表的な作家カルヴィーノの、比較的初期の作品11作を収めた短編集。
 カルヴィーノはかなり多様な作風を持った作家である。ざっと考えても前衛的な「見えない都市」や「冬の夜ひとりの旅人が」。「木のぼり男爵」をはじめとする象徴的な時代小説。「レ・コスミコミケ」などのSF的な作品。そしてネオ・レアリズム的な「くもの巣の小道」などの系統の作品がある。
 この本は「くもの巣の小道」に描かれた世界に近い。リアリズムで瞬間を切り取る、きわめてまっとうな短編集である。

 考えてみたら、これまで読んだカルヴィーノはほとんどが長・中篇だった。「見えない都市」は短編集と考える事も出来るが、あれは1作を取り出して読んでもほとんど意味がない。全体で読んでこそ意味がある作品なので短編集とはいえないだろう。SF的・象徴的な「柔かい月」は短編集だが、この「魔法の庭」はそれとは全く違う世界が描かれている。
 この短編集には第2次大戦の頃のイタリアを舞台にした、普通の人たちを主人公にした普通の物語が収められている。要するにリアリズムの作品たちである。どれもかなり短く、大体15ページから20ページの短編が11作。どれもさしたる事件は起こらず、海に降り注ぐ陽光の下で、木漏れ日のさす森の小径で鮮やかなイメージが展開する美しい、そしてユーモラスでありながら、どこか遠くに戦争の足音が聞こえて来るような作品が並んでいる。

 冒頭の「蟹だらけの船」では海を舞台に子供たちがグループ同士が遊び場を巡って対決する様を、次の表題作「魔法の庭」ではジョバンニーノとセネレッラの二人が迷い込む美しい庭を、独特の美しいタッチで描き出す。パルチザンの物語で「くもの巣の小道」を思い起こさせる「不実の村」、同じくパルチザンものでありながら昔話のような寓話性を感じさせて秀逸な「動物達の森」、それと盗みに入った店のお菓子を食べるのに夢中になってしまった泥棒グループを描いた「菓子泥棒」。どれも不思議な独特の味わいのある短編である。
 同じような規模の短編でありながら、先日読んだO・ヘンリーの作品とは全く違う。O・ヘンリーのようなこじゃれた楽しさは皆無だが、これと比べるとO・ヘンリーの作品はよく言えば明るくて素直、悪く言えば深みに欠け平面的だと気づく。

 ヨーロッパらしくゆったりした中にも、どこかに影が付いて回る深さも秘めた好短編集である。「くもの巣の小道」が好きな人はぜひ。
.28 2007 イタリア文学 comment2 trackback0

comment

こんばんは。

自分も「くもの巣の小道」の系列の作品だと思いました。
なので、「くもの巣~」が苦手だった自分は
この短編集もちょっと苦手でした。

カルヴィーノとO・ヘンリーは確かに同じ短編でも全然違いますね。
O・ヘンリーは、「人情」とか「人生の面白さ」を
感じさせてくれますよね。
一方でここでのカルヴィーノは「人間」を描くというよりも、
もっとその向こうにあるものを描こうとしているように思います。
2007.10.31 23:43 | URL | ANDRE #mQop/nM. [edit]
ANDREさん、コメントありがとうございます。

私も読んでいる時にはO・ヘンリーの方が楽しく読めたんですが、
O・ヘンリーってどれも似たり寄ったりで、展開が予想できるんですけど、それでいてなんとなく魅力的なんですよね。
で、カルヴィーノのこの作品はそれとは対極にある感じです。
ヨーロッパ映画的な陰影が感じられて、独特な余韻がありますね。

カルヴィーノ、読むたびになにかしら違う世界を見せてくれます。
すごく興味深い作家です。まだまだ読みたい。というわけで「むずかしい愛」を入手済みです。
でもいつ読めるかなあ・・・
2007.11.01 00:36 | URL | piaa #- [edit]

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