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ガルシア・マルケス 戒厳令下チリ潜入記


 1985年。ピノチェト政権による独裁下のチリを追われていた映画監督ミゲル・リティンは祖国に潜入して独裁下のチリの撮影を敢行した。
この作品はガルシア・マルケスによる、リティンの足跡をたどったルポルタージュ作品である。

 まず、チリという国のこの頃の実情を軽く紹介しておく。
 1970年に戦況で勝利して社会主義政権を成立させたサルバドール・アジェンデ大統領だったが、社会主義国家が選挙で誕生したことに脅威を覚えた米国は、アウグスト・ピノチェト率いる反大統領派を支援、1973年9月11日にクーデターが起こりアジェンデ大統領は殺害され、ピノチェトが大統領に就任。以後独裁を敷き、共産・社会主義者を粛清した。2004年の政府公式報告書では、死者・行方不明者3197人とされているが、実際にはもっと多いといわれているし、国外追放になった者も多い。本作の主人公ミゲル・リティンもその一人だった。

 リティンは母国へ潜入するにあたり変装するのだが、それも普通の変装ではない。何ヶ月もかけて自分の特徴を消す訓練をし、母親でさえわからないくらい巧妙な変装を施したうえ、偽名で、偽の妻とともに母国へ潜入する。そこでの行動を描いたこの作品は、ルポルタージュと小説の中間のような形式で書かれている。スパイ小説を読んでいるかのように非常にスリリングである。危険と常に隣りあわせだという意識が、リティンを不安にさせ、神経衰弱になりそうになるあたりもきわめてリアル。大統領府・モネーダ宮殿へ潜入しての撮影中、ピノチェトとニアミスするあたりはスパイ映画のようだ。

 この作品から私達は何を読み取るべきなのだろう。選挙で選んだ政府がクーデターで転覆され、その後独裁による圧制が続いたのだ。しかも「世界の警察」であるはずの米国はピノチェトを支持している。国民は苦しく不安な独裁下で不満の声を上げることもかなわない。
 遠い国の話だと言い切れるだろうか。これはたった20年前に、実際にあった事なのだ。明日の日本にも、こんな時代が来ないとは限らない。
 そしてさらにそんなピノチェト政権を、時の日本政府までもが支持していたという事実。この事実を、われわれは重く受け止めなければならない。

 それにしてもリティンから聞き書きしただけのガルシア・マルケスが、どうしてここまでいきいきとした文章を描き出せるのか、全く天才としか言いようがない。小説として考えてもかなり高いレベルの作品といえる。
 リティンの撮影したフィルムはこの本と同じタイトルの映画になっているそうだ。そちらも機会があったらぜひ観たいと思う。
.03 2007 中・南米文学 comment0 trackback0

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