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ニュー・スマーナ・ビーチ シュザンヌの日々


 古本屋で見つけた白水社「新しいフランスの小説」シリーズの中の一冊。
 これは上の写真のオビにもあるように7人の作家による連作短編で、作者名のところにある「ニュー・スマーナ・ビーチ」というのは作家たちが集まった場所の名前なのだそうだ。

 フランス人作家ジャン・エシュノーズの発案になるこの作品集にはフランス人作家4名、アメリカ人作家3名が参加、それぞれがシュザンヌという女性をめぐる物語を書いている。とは言ってもシュザンヌが直接的に主人公として登場するわけではなく、すべての作品がシュザンヌと何らかの接点のある人物の一人称で書かれている。

 例えば冒頭のフロランス・ドゥレーによる「誰のものになるのか」ではすでに人妻であるシュザンヌに恋をする青年の目線で、次のパトリック・ドゥヴィルの「手品」では13歳の少女シュザンヌの父親が経営する「青い錨亭」で働く手品師の目線で、という具合に、そのつど違う時代、違う場所、違う人物の目を通してシュザンヌの人生の断片が描き出されるのである。

 暴走する若者達を描いたエシュノーズの「持つべきは友」とという作品が、映画「死刑台のエレベーター」に登場する、車を盗んで殺人を犯してしまう無軌道なカップルのエピソードを思わせて印象深い。訳者のあとがきでは「俺達に明日はない」に喩えてあるが、冷たい筆致で書かれた秀逸な犯罪小説になっている。
 他には父の死に際して異常なまでに神に入れ込むシュザンヌと、夫の死にも至極クールなヒロインの対比が鋭い、シュザンヌの父の後妻の視点で書かれたソーニャ・グリンリーの「祈りましょう」が印象に残った。
 ただこの作品集は後ろの方に行くにしたがって難解になっていく嫌いがあり、特にマーク・ポリゾッティの「人類詩学」はよくわからなかった。それにどうも他の作品と設定が食い違っているのではないかと思えて仕方がなかった。

 全体には、その成り立ちの実験的な印象とは裏腹に、普通に、自然に読める短編集だとは言えるが、読みながらこんなことを思った。
 例えばある人物…例えば私、piaaという人物について、さまざまな人に証言してもらうとする。親。小・中学校の友達、高校の時、大学の時の友達。それぞれの時代の先生。今の職場、昔の職場での同僚、上司。昔の恋人。妻。子供たち。あるいはこのブログだけで私をご存知のあなた…それぞれの証言からは全然違うpiaaが現れてきそうだ。それはある意味当然なのだ。人間にはペルソナというものがあり、誰にでも同じ顔を見せるわけではないからである。この作品に現れるシュザンヌもまた、それぞれの短編の語り手の心に映ったシュザンヌのペルソナなのである。本当の彼女など、誰も知りえない。こうやって7人の人物が7通りのまなざしで彼女を語り、それを読み終えたわれわれは彼女の真実に近づいたのだろうか、と考えた時、それははなはだ疑問だ。

 フランス人作家4名、アメリカ人作家3名という構成から、「フランス文学」に分類するのはどうかとも思ったが、この作品で主導的な役割を果たしたエシュノーズがフランス人であること、白水社がフランス文学の企画の一冊として刊行していることから一応「フランス文学」に分類した。

 白水社の「新しいフランスの小説」は現代のフランス文学を紹介する事を眼目に、10年ほど前に刊行されたシリーズで現在は廃刊。今回はもう一冊、この作品にも「手品」が収録されているパトリック・ドゥヴィルの「花火」という作品を入手している。
.27 2007 フランス文学 comment2 trackback0

comment

1人の人物について、複数の人物がそれぞれの視点から物語るという小説はかなりありますが、7人の作家が書くスタイルの小説は初めて知りました。 本当に実験的ですね。
どんな風に書いたんでしょう? 1人がまず書いて、それを読んだ作家が次の話を書く…とか??(作家がそんなことするかな?)

えっと…ブログを通して見たpiaaさんは、日本男子の中にあっては希少種の「オトナな人」…かな(その他おおぜいの日本男子の皆さま、暴言をお許しくださいませ)。 
2007.09.28 01:58 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
どんな風に書かれたのかはあとがきを読んでも良くわかりません。
作品を読んだ印象としては後の作者は前の作品を読んで書いたのかな、と思います。
記事では触れませんでしたが、各作品に必ず「蜘蛛」が出てくるという仕掛けもあるそうです。

日本男子の中にあっては希少種の「オトナな人」…そんな事言われるとなんだかくすぐったいなあ。
でも自分ではまだまだ少年のつもりでいます。なんにでも興味を持ってやってみたい(それはブログ見てもらうと良くわかると思います)し、ギャーギャー言いながら子供達と一緒に遊んでるのも大好きなので…
2007.09.28 22:41 | URL | piaa #- [edit]

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