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レイモンド・チャンドラー プレイバック


 レイモンド・チャンドラーの、探偵フィリップ・マーロウシリーズの第7作にして、完成された最後の作品である。

 ある女性を追ってメキシコ国境近くのエスメラルダへやってきたマーロウ。ベティ・メイフィールドと名乗るその女性はラリーという男に脅迫されているようだった。ある夜マーロウはベティに、ラリーの死体を始末してくれと頼まれる。マーロウがベティの部屋に行ってみると、ラリーの死体は消えていた…

 前作「長いお別れ」のレヴューで私は、だんだん深まっていくペシミズムが「プレイバック」を書かせたのではないか、と述べたが、今度読んでみてその思いを強くした。

 この作品でのマーロウは、これまでの作品と全く違う。作中で二人の女性と関係を持つし、その二人にある女性の事が(これはもちろん前作で出逢ったリンダ・ローリングのこと)忘れられないと語る。強引に事件に切れ込んでいく押しの強さも以前ほどには感じられなない。さらに出てくる刑事部長アレッサンドロは善人でマーロウの強い味方である。この作品には信用できない悪徳警官はただの一人も登場しない。
 マーロウの味方の警官としてはこのシリーズの準レギュラー、バーニー・オウルズがいるが、彼が友情から義務的に味方になってくれているのとは全く違い、アレッサンドロは単純に正義漢で、それが正しいと思うからマーロウをバックアップするだけなのだ。
 というわけで、なにやらいつもと違うムードのこの作品は、なにやら謎めいた作品で、そこがまた読者をひきつける。

 マーロウものというと、話が脱線するのがお定まりのパターンなのだが、この作品は脱線の度合いが他の作品よりもはるかに高い。前述の二人の女性と関係を持つのも…特に二人目は、全く本筋と関係ないし、17章後半のクラレンドン氏との神と運命についての対話、20章のエスメラルダについて語るポープ氏の話など何でこんな場面が書かれているのか理解に苦しむような部分もある。

 そして謎解きでは、今回も犯人(と言うのかな、やっぱり)を逮捕するには至らない。だが犯人が死ぬようなこともなく、事件は静かに幕が引かれる。ただし「西風荘」の麻薬中毒の配車係が殺されたことは未解決のまま。
 さらにラストで、事件から開放されて部屋に戻ったマーロウに、パリにいるリンダから電話がかかってくる。そしてこの作品は不思議な幸福感の中に終わる。このあたりもこの作品の独特な所である。これまでにこんな終わり方をした作品はひとつもなかった。
 作者であるチャンドラーの心境に著しい変化があったとしか思えない。

 ちなみにチャンドラーはこのあと「プードル・スプリングス物語」というタイトルで長編第8作を書き始めるが、最初の4章まで書いた所で亡くなってしまった。この作品にはマーロウとリンダの結婚生活が描かれている。チャンドラーがこの続きを書いていたら、一体どんな作品になっていたのだろうか。
 残された4章から後をロバート・B・パーカーが引き継いで完成させたものもある。次回はこちらを。
.22 2007 ミステリ comment2 trackback0

comment

ええっ、マーロウの結婚生活ですって!?
チャンドラーがそんな構想を持っていたとは知りませんでした。
マーロウが夫って、どんな風になるのかなあ。
ハードボイルドな家庭生活? 居心地悪そう(笑)。
それを他の作家が続きを書くと…さらに想像できません。
次回のレビュー、楽しみにしています。
2007.09.23 22:19 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
この作品は上記の通り第4章までしか書かれておらず、まだ事件さえ起こっていないところで途切れてしまっているのです。
この冒頭の4章にしても、チャンドラーが生きて続きを書いたら全く違うものになったかも知れなません。
だからパーカー版「プードル・スプリングス物語」はもはやチャンドラー作品とはいえないかもしれませんね。
2007.09.24 00:09 | URL | piaa #- [edit]

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