スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

アクセル・ハッケ ちいさなちいさな王様


 ドイツの作家アクセル・ハッケの短編小説。前回レヴューした「キリンと暮らす クジラと眠る」同様、画家のミヒャエル・ゾーヴァとコラボレーションした作品である。

 しばらく前から、ほんの気まぐれに、小さな王様が、僕の家にやってくるようになった…とはじまるこの物語…いや、特にストーリーがあるわけではないから物語と呼ぶのもどうだろうか…簡単に言ってしまえば、「僕」と「王様」のシュールで哲学的な問答集である。

 小さな王様、十二月二世王が言うには、彼の世界ではある日ベットで目覚めて人生が始まり、だんだん小さくなって最後には見えなくなってしまうのだそうだ。このひっくり返った世界観を持つ王様は、「僕」に、成長して大きくなるという事は、すなわち夢とか可能性とかを徐々に失って小さくなることだ、と言う。こういうありきたりではあるが逆説的な観察が随所にあふれた童話仕立ての軽い哲学書である。普通のものの見方をひっくり返して考えてみる哲学的思考へのきっかけとして、非常に親しみやすい作品で、ゾーヴァの挿画も雰囲気があって全体的にはいい本だと思う。

 ただ、気になったのは、この王様ってなんだろう?という事。
 当然現実にいるはずもないこの小さな王様は「僕」の妄想なのだけど、この妄想を生むのはどういう心象風景からなのだろうか。夢や可能性がいつの間にかなくなり、たとえば小さな時はパイロットとか宇宙飛行士になりたかったし、きっとなれると思っていたのに、いつの間にかもうそんなものにはなれない事に気づいたからだろうか。小さな王様のようにだんだん小さくなれば、少なくとも夢が実現できるかも知れないともう一度感じることができるかも知れないからだろうか。
 そして、王様が夢の象徴であるならば、彼はなぜ、「王様」で、エラソーな口をきくのだろうか。

 ところでAmazonでこの本のカスタマーレヴューを見たら、絶賛の嵐。「忘れていたものを思い出した」とか「王様は小さい頃の私で、私は王様を失った」とか。
 この読者たちが、王様が指摘するように大人はみんな想像力貧困で夢や可能性を失っている、と思っているのなら、それこそみんな想像力が貧困だと思う。少なくとも、私の中には小・中学生の頃の私がしっかり生きている。だから私はそれを王様などと呼ばない。それにエラソーにされる筋合いもない。だってそれは私自身なのだから。
 というわけで、心の中に少年が見当たらないくたびれた中年男性にオススメの一冊。
.09 2007 ドイツ文学 comment4 trackback0

comment

アクセル・ハッケの本はとても気に入っていて、よく読んでいます。
シニカルに世界を見ていて、今生きている世界が本当なのか、現実なのか、それとも誰かの夢かもという感覚になるところが好きです。現実の世界がだんだん複雑になってきていて、それが当たり前で普通という感覚でいるところに疑問をはさむのが王様、という感じがしています。
王様は人間の内面にあるというよりは、人間の外側に位置しているように感じます。
自分の世界を別の視点で考えてみよう、と思索に浸れる本です。
Piaaさんの感想はアマゾンレビューとは異なっていてなるほど、と興味深く感じました。

2007.09.10 14:24 | URL | kmy #GaU3vP2. [edit]
piaaさん、まったく同感です!
ミヒャエル・ゾーヴァの絵が気になって買おうかと迷ったのですが、ワタシの気持ちにはピタッと来なかった本です。 ワタシも心の中にまだ少女が生息しているんでしょうか(笑)
piaaさんが指摘されたように、アマゾンのレビューなどで絶賛の嵐なものに「?」と感じることが最近多いのは、ワタシがへそ曲がりなのか、みんなが無意識に他の人の意見に同調してしまうからなのか…。

ゾーヴァの絵のある本では、「ヌレエフの犬」がワタシは好きです。
2007.09.10 22:44 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
私はかなりひねくれた方なので、
王様が提案する、いつもと、あるいは違う角度で物事を見よう、という事は常々実践していることなんです。

これを読んだら、世界をちょっと違う目で眺めてほしいと思います。
いつも通る道の風景にも、夕日のさしている時、雨が降っている時、猫が昼寝している時、中学生が友達とふざけている時、どんな時にでも美しいものが見つかると思います。(ドラゴンは見えないかも知れませんけど…)
意外と世界は美しいのです。
それに気づくのなら、この本の1300円はとっても安いかもしれませんね。
2007.09.10 22:45 | URL | piaa #- [edit]
へそ曲がり仲間ですね(笑)。

Amazonのレヴューでこういう比較的マイナーな本のレヴュー書く人は肯定的な意見の人が多くなるのだと思います。

vogelさんは写真家としても素晴らしい腕前の持ち主なので、普段から人と違うものの見方が出来ているのだと思います。
だってヨーロッパまで行ってノラ猫の写真を4枚も撮る人いませんって(笑)…私ならやっぱり撮りますが。
そんな感覚を持ったvogelさんにはあんまり必要ない本だったということでしょう。
2007.09.10 22:54 | URL | piaa #- [edit]

post comment

  • URL
  • comment

  • password
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://piaa0117.blog6.fc2.com/tb.php/634-4c1df356

プロフィール

piaa

  • Author:piaa
  • Livedoorへ移転しましたので、そちらでお願いします。
    http://blog.livedoor.jp/piaa0117/

    こちらのブログへのコメントはLivedoorに転載しますが、定期的にチェックしないので相当遅くなることもあります。

ブログナビ

P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2007年09月
  ├ カテゴリー
  |  └ ドイツ文学
  └ アクセル・ハッケ ちいさなちいさな王様

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ

カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。