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アーネスト・ヘミングウェイ 武器よさらば


 ヘミングウェイの代表作のひとつ。
 今回金原瑞人氏による新訳で光文社古典新訳文庫から発売されていたので、ついつい読んでしまった。

 第1次大戦中イタリア軍に参加したアメリカ人のフレデリックは看護婦のキャサリンと出会う。作戦で負傷したフレデリックはキャサリンと再会、はじめは遊びのつもりだったフレデリックだったが、だんだんキャサリンを深く愛するようになる。その後部隊に復帰したフレデリックだったが、イタリア軍の戦線が崩壊、軍を離脱したフレデリックは身重になったキャサリンを連れてスイスへと脱出するが…

 これは一言で言うと、きわめてスタイリッシュに書かれたメロドラマである。特にストーリーだけを追うと、センチメンタルなただの安っぽい三文小説であると言われても仕方がないと思う。この作家の独特の乾いた文体は後のハメットらハードボイルド派に影響を与えたとされているが、このクールな文体がなかったら本当に「通俗的な作品」の一言で片付けられそうだ。
 ところが、実際に読んでみると至るところに魅力的なシーンや表現や、会話が展開する。肝心の文体は、翻訳を読む以上は想像の域を出ないのだが、金原氏の訳はかなりヘミングウェイのクールな文体を再現できているのではないだろうかと思う。

 ちなみにこの作品はこれまでにも何種類か翻訳されていて、これまでは大久保康雄氏による訳があった。現在は新潮文庫で昨年出た高見浩氏の翻訳によるものがカタログに載っている。読み比べたわけではないのでどちらの訳がどうとは言えないが、高見訳はフレデリックの一人称が「ぼく」で、金原訳は「おれ」になっている。私見では「ぼく」ではなんとなくこの作品のメロドラマ性が強調されてしまう気がする。「おれ」の方がヘミングウェイにはふさわしいと感じるのだがどうだろうか。

 犯罪小説でこそないが、やはりハメットやチャンドラーに影響を与えたのは間違いないだろう。主人公がのべつ酒びたりなのは置いておいても、本筋と関係ない会話でニヤリとさせるあたりはハードボイルドっぽい。そして気持ちを言葉に出さない語り口はハメットが「マルタの鷹」に引き継いで独特の世界を作り上げる事になる。

 センチメンタル、メロドラマ、通俗的…確かにそうなんだけど、それでもヘミングウェイって面白い。これ以上やるとクサくなる所を紙一重でカッコよく描いてみせるあたりは、ボギーの古い映画(「カサブランカ」とか「キー・ラーゴ」)にも通じる。ちょっと古臭いダンディズムがまたノスタルジックである。
 この作品自体もゲイリー・クーパー主演で映画化されている。この映画は観た事ないが、映画で観るとなんだかすごくベタなメロドラマになってしまいそうな気もする。
.25 2007 北米文学 comment4 trackback0

comment

20代の頃、ヘミングウェイが大好きでした。
短くて乾いた文体がすごくカッコよくて、メロドラマなのも翻訳小説をあまり読まなかったワタシにはとっつきやすかったです。
大久保康夫の翻訳になじんでいたため、高見浩訳はなんか合わず。 その理由がよくわからなかったのですが、piaaさんが指摘された「おれ」と「ぼく」の違いだったのかも!(謎が解明されてスッキリしました)
ものすごくひさしぶりにヘミングウェイが再読したくなってきました。
2007.08.30 00:38 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
私は高校時代くらいに「誰がために鐘は鳴る」を読んだ…と思うのですがそれ以来のヘミングウェイでした。
他のもぼちぼち読もうと思ってます。
ひょっとしたらこの文庫で金原訳が続けて出るのかも。

「おれ」「ぼく」「私」…日本語って難しいですね。
一人称でイメージがすごく違ってきますからね。
2007.08.30 01:03 | URL | piaa #- [edit]
あらすじだけみれば、完全にメロドラマですよね。
でも、安っぽくならないのが凄い(というか、私はヘミングウェイが好きなので何でもべた褒めになってしまうのですが・・・)。

>「おれ」の方がヘミングウェイにはふさわしいと感じるのだがどうだろうか。
同感です。
金原訳と大久保訳を徹底的に分けるのは、この「I」の訳し方だと思います。あと、一文の長さでしょうか。
私が昔、大久保訳で読んだ時の主人公のイメージは、もっと「お坊ちゃん」な感じでしたが、金原訳では「髭の似合うワイルドな男」という印象を受けました。
2007.09.04 01:00 | URL | ぐら #- [edit]
そうなんですよ!
この、韓国ドラマ並みのベタなあらすじにもかかわらず、
このカッコよさって一体なんでしょうね。
と、いうわけで「日はまた昇る」と短編集を買ってきました。
いつ読めるかはわかりませんが…
2007.09.04 01:12 | URL | piaa #- [edit]

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