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ケネス・ウォーカー 箱舟の航海日誌


 英国の作家ウォーカーが、聖書のノアの箱舟の挿話を題材に書いた児童文学。
 きっと皆さんもノアの箱舟の物語を始めて知った時、「なんでライオンやトラみたいな肉食動物は草食動物を食わなかったのだろう」と思ったのではないだろうか。この作品はその謎に答えてくれる。

 この作品によると、洪水前の動物達はみな草食だったのだ。世界は大変豊かだったので、いくらでも果物や木の実が手に入って満ち足りた生活をしていたのだ。
 そして、今は滅んでしまった動物もたくさん住んでいた。グリフォンや怪鳥ロックといった伝説の動物、今はだれも覚えていないフワコロ=ドンやクリダー、ナナジュナナ。彼らは天変地異の危機にノアの箱舟に命からがら逃げ込むのだが、そこにスカブという動物が紛れ込む。

 このスカブというのは作者の創作した動物である。スカブはほんの偶然から肉食というおぞましい悪に目覚めてしまっているのだ。「スカブ(Scab)」とは「かさぶた」を意味する言葉で、この動物の醜さ、おぞましさをうまく表現したネーミングだと思う。
 スカブは航海中、猫族らと親しくなり、彼らに肉食の喜びを伝えてしまう。そして洪水後の世界は、食い食われる弱肉強食の時代になったのだった。

 解説にも書かれているが、「肉食」には「殺し」の側面があり、だからこそ「悪」の代名詞的に使われているのだろう。その「悪」が、始めは無邪気な動物達の間に、方舟という閉鎖空間の中で徐々に浸透して行き、それにつれて動物達の間の雰囲気が悪くなって、さらには一種の緊張状態になるところまで行ってしまうのをうまく描いている。これは翻訳者の功績かもしれないが、全体に児童文学らしい明るいトーンの中でその微妙な変化を描き出すうまさが光っている。小説として非常にレベルが高いと思う。

 この本に限らず児童文学というだけで敬遠する人もいるようだが、もったいないと思う。下手な普通の小説よりも示唆に富んだ作品がいくつもある。寓話は嫌いとか言う人もいるが、寓話が読めなかったら小説を読む楽しみの半分を捨てたも同然だ。
 子供の時に読めなかったんだから、今読もうくらいの気持ちで読んで見るべきだ。

 「ノアの箱舟」ネタの小説というとカルペンティエールの「選ばれた人々」(「バロック協奏曲」に収録)が思い浮かぶ。この小説の主人公はノアではなくインディアンの長老アマリワク。彼が神のお告げを聞いて船を作り、動物達を乗せて洪水の中を漂流していると、他の同じような船に何隻も出会う(その中にノアの方舟もあった)というものだった。
 切り口がまったく違うが、ぜひご一読を(途方もなく入手困難だが…)<
.07 2007 英文学 comment0 trackback0

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