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メアリー・マイシオ チェルノブイリの森


 昨年末に「チェルノブイリ・極秘」という本を読んでかなり衝撃を受けた。これは未曾有の大惨事となった事故そのものもさることながら、事故後のソビエト政府のずさんな対応について書いたルポだった。
 それに対してこれは、副題(事故後20年の自然誌)にもあるように事故後20年が経過したチェルノブイリ原発周辺の「ゾーン」がどんな様子なのかを中心に述べたルポである。

 チェルノブイリ原発事故という惨事の結果、大量の放射性物質が周辺地域を汚染した。このため原発から半径30kmの「ゾーン」にあった町や村の住民は、すべて強制移住の措置を受けてこの地を離れた。
 この地域にあった大小の町や村や集落は無人になり、畑はだれも耕さなくなったし、公園や建物も放置された。
 都会に住んでいてもよく、住む人がいなくなった家や、営業を止めて人気(ひとけ)のなくなった店舗が急速に廃墟になっていくのを目の当たりにすることがあるが、ここではそれがもっと大規模に起こったのだ。
 その結果、そこは期せずして人間の手の加わらない土地になった。「ゾーン」は大量の放射性物質を除けば、自然のままの土地になっているというのだ。

 よくくだらないSFでは、放射能に侵された動物が異常に巨大化したり、奇形になって怪物化したりするが、もちろん現実にはそんなことは起きない。「ゾーン」ではそういう動物の目撃例は一例もないそうだ。常識的に考えれば当然なのだが、実際には奇形の動物が生まれたとしても育たないからだ。その代り「ゾーン」には普通の動物…鳥や、ビーバーやキツネやイノシシ、ヘラジカ…がたくさん住んでいる。中には他にはあまり見られないような希少な動物も生息しているらしい。「ゾーン」は期せずして野生動物の楽園になったのだ。

 いうまでもないが放射線は危険だ。20年を過ぎた今でも「ゾーン」にはきわめて放射線の強い地域もある。たとえば「ゾーン」の中心地「石棺」内部には「象の足」と呼ばれる「ブツ」(ストーカー用語)がある。これはプルトニウムをはじめとする放射線物質が鍾乳石のように堆積して出来た死のモニュメントで、一体どのくらいの放射線を出しているのか、科学者達でも調べる気にもならないくらい危険な代物である。
 まあ動物達の住んでいる所にはそこまで直接的な危険はないにしろ、川の水にも、草食動物が食べる草にも、肉食動物が食べる草食動物の体の中にも放射線物質が堆積していく。
 それでも野生動物は他の地方よりも数が多かったりするのだ。

 これはとりもなおさず、野生動物たちにとっては放射能の方が人間よりマシだということなのだ。
 これは今、環境問題を考えないといけない今、よく考えないといけないことなのではないだろうか。チェルノブイリ原発事故が人間の暮らしを破壊した結果、環境を破壊するのは人間の暮らしだと証明してしまったのだ、と言えなくもない。
 しかし先ほど述べたように動物たちにはどんどん放射線物質が堆積していく。この先何十年が経過した時、この土地の動物達はどうなっているのだろうか。

 ところでこの本の中で「エレナのチェルノブイリへのバイク旅」というHPについて書いてある。
 このHPはエレナというキエフの女性がチェルノブイリをバイクで旅した記録というもので、貴重な写真も多数掲載された、ネット上のチェルノブイリの資料として有名なものだが、これについて本書に出てくるガイドの女性・リマが、自分がエレナを案内し、エレナはバイクになど乗っていないと証言しているのだ。もしリマの言うとおりだったらとても残念だ。
 エレナが「ゾーン」にバイクで入ったという部分は本質的にはどうでもいいことなのだが、このHPがルポである以上、どんなに小さくても嘘があってはいけない。もし嘘があればそのルポの価値は限りなくゼロに近いといわざるを得ない。もし本当にエレナがバイクで行っていないのなら、読者はエレナの言葉を信じるわけにいかなくなるからだ。
.25 2007 その他の本・非文学 comment4 trackback0

comment

放射能に汚染された地域は絶対に人間が足を踏み入れないから、自然保護区よりも自然になっていくって、なんとも皮肉ですねえ。 でも、何世代にもわたって放射能を浴びていると、そのうち野生動物の体にも影響が出てくるんじゃないでしょうか。 そうなったら、本当の「死の町」になってしまうのかしら…怖いなあ。
何人がチェルノブイリ原発事故で命を失ったのかわからないというのも不気味。 ロシア政府は把握しているでしょうのに。

あのバイクにまたがった黒サングラスの女性の現地レポート、昨日ひさしぶりにもう一度じっくりみてきました。 「バイクに乗っていない」というのはどういうことなんでしょうね。 そんなことで嘘を書いても、なんの得にもならないと思うのですが。 「女性単独ルポ」みたいな方がセンセーショナルだからでしょうか? 「あんなの嘘だ」と書いている人の言うことが必ず正しいとも限らないですし、何事も鵜呑みにはできませんね。
2007.06.27 23:18 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
エレナについてリマが言うには「私たちの車でゾーンに入って、旦那もついてきた。ヘルメットだけを持ち歩いて、写真は全部旦那が撮った」(本書292ページ)。
著者は「そんなことで嘘をつくというのも妙な話だ。」とvogelさんと同じ感想を書いています。
著者は続けて「けれども2004年の春と夏(エレナがチェルノブイリを訪れた時期)には、販売業者とエンターテインメント会社がチェルノブイリの雰囲気を食い物にしようとした。たとえば映画「バタリアン4」の冒頭の場面はチェルノブイリで撮影された」と書いています。

そういう怖いもの見たさの焦点がチェルノブイリに集まっていた時期だったのかもしれませんね。
2007.06.28 00:49 | URL | piaa #- [edit]
なるほど、エレナのバイクリポートについてのくだりは「嘘を暴く」というスタンスで書かれたわけではなくて、「なんで、そんなつまらないことで嘘つくの?」というニュアンスなんですね。
確かに車に乗っていったことも、同行者がいたことも、ルポの本質を左右することではないのに、妙な小細工をしたものですねえ。 ああいう危険な場所へ立ち入ったこと、そして生々しい写真を撮ってきたことで十分に価値があるのに。

センセーショナルなものを求めるマスコミ全体の姿勢に問題があるのかも。
この本のように真面目で地味なルポは、爆発的に売れることはなさそう。
2007.06.28 21:06 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
そうなんですよね、エレナがバイクで行ったというのは、このルポ全体からみれば全く重要ではない事なんですけどね。

実はこの本、買おうかと思ったのですが、2200円とあまりにも高価だったので買わずに図書館から借りました。
こういう本はもっと軽い装丁(新書とか)にして買いやすくしたほうがいいのではないかと思うんですけど、どうなんでしょうね。
2007.06.28 22:15 | URL | piaa #- [edit]

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