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アントニオ・タブッキ 供述によるとペレイラは…


 イタリアの作家タブッキの代表作。これは傑作である。
まだ読んでいない人はぜひ読んでほしい。
私は図書館から借りてきて読んだのだが、これは買うべきだったと後悔している。今度買おう。

 タブッキはこれまでに「逆さまゲーム」「インド夜想曲」を読んだが、これらの作品がどちらかというと掴み所のない、なんだか不思議にひねくれた作品という印象で、そこが魅力でもあったのに対して、これはいつもカーブばっかり投げてる投手が直球勝負してきたみたいな感のある作品である。といっても完全に素直な直球でもないのだが。どうやらこの作品はこの作家の代表作とされながらも、この作家の作品の流れからすると異色作と言えるらしい。

 舞台は第2次大戦前夜、1938年のリスボン。当時の欧州はスペインの市民戦争(フランコ政権が民主化運動を弾圧した)やナチスの台頭でファシズムの嵐が吹き出した時代である。新聞記者のペレイラは助手を雇おうとしてモンテイロ・ロッシという若者と出会う。ロッシと恋人のマルタはなにやら怪しい政治活動をしているようで、ペレイラは知ってか知らずか、彼らに巻き込まれていく。その様子をひたひたと迫る国家的危機の中での日常を通し淡々と描いていくが、ある日事件が起こる。

 まず文体が独特で、セリフがない。セリフはすべて地の文と一体になっている(ガルシア・マルケスの「族長の秋」と似ている。もっともあれは改行もなかったが)。会話のシーンなどは括弧でくくってないので文章を読みなれていない人には読みにくい面があるかもしれない。もちろん普通に読める人にはどうという事はないし、この文章が独自のリズムを生み出していてこの作品の大きな特徴でもある。
 その上タイトルにもあるように、この小説全体がペレイラが供述した内容をベースに書いたものである様な書かれ方をしてるのも特徴である。

 主人公のペレイラは頼りない中年男で、ハンサムでもないし、肥満体だし、心臓が悪く、亡き妻の写真に話しかける情けない男なのだが、なぜかロッシに肩入れして何かと彼を助けてやり、厄介ごとに見舞われる羽目になるのだが、息子がいればロッシくらいの年だろうというだけでなく、やはりペレイラ自身心の中にも、右傾化していく国の状況を憂う気持ちがあるからこそ、ロッシたちに肩入れしてしまうのだろう。
 それにしてもここで描かれる戦前のポルトガルの状況はなんとなく現代の世界にも通じるものがあるのを感じて背筋が寒くなる。今世界のいたるところで右傾化が進んでいるように感じるのは私だけだろうか。右傾化は民族主義、ひいてはファシズムに繋がる。現代人はいまだにそれに気づいていなのだろうか。

 そしてラスト、事件が起こってしまったときにペレイラのとった行動。これは最後の数章で物語が大きく動くことになるのだが、ここでのペレイラの大胆不敵な行動には読者も溜飲を下げるだろう。だがペレイラは勝利するわけではない。国家権力に対する彼の力はいかにも小さい。だがペレイラの投げた小さな石は、やがて大きな波紋を呼ぶのかもしれない。そういう期待を抱かせながら、重い中にも鮮やかな幕切れがまた見事。

 素晴らしい作品だ。繰り返し言う。まだ読んでいない人はぜひ読んでほしい。
.13 2007 イタリア文学 comment2 trackback0

comment

タブッキは「インド夜想曲」とこの本を読んだんですが、
どちらもピンと来なかったんですよ。
単行本の帯に「完璧な小説」と書いてあったので
期待が妄想のようにふくらみすぎたからかなあ…。
piaaさんのご近所だったら単行本を差し上げたのに。

ところで次はパムクの「雪」なんですね。
レビューを楽しみにしています。
2007.06.13 23:57 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
「完璧な小説」というのはすごい謳い文句ですね~
私はこの作品、記事にも書いたようにかなり好きですが、
そこまでは言い切れないなあ。
この作家の描く世界はいつもなにやら曖昧なんですよね。
ペレイラにしたって、思想的な面でまず曖昧だし、お尋ね者になったロッシをわりと簡単に匿ってしまいますが、なぜそういう行動をとったのか理解できないし、説明もしない。
でも友人ならなんとなく匿ってしまうかもしれないし、
そんな曖昧な所がリアルだと感じる人と、曖昧でダメという人にはっきり分かれる作家かもしれないですね。

パムクは、こちらの図書館にはなぜか「私の名前は紅」は置いてなくて、「雪」しかなかったんです。
分厚いので敬遠してたのですが、なんだか図書館が月末10日間くらい閉めるらしくて、
そのため普段より長く借りられるので思い切って借りてきました。
かなり面白いです。しかし、分厚い…
2007.06.14 00:48 | URL | piaa #- [edit]

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