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ディノ・ブッツァーティ 神を見た犬


 光文社古典新訳文庫は素晴らしい企画である。どれをとっても非常に興味深い作品が目白押しで、すべて読みたいと思うくらいだ。
 そんな中、今まで読んだ中で一番面白かったのは文句なしにロダーリの「猫とともに去りぬ」だが、このブッツァーティ「神を見た犬」はそれに並ぶ傑作だと思う。

 「猫とともに去りぬ」のロダーリと同じイタリア人作家の手になるこの短編集は、やはり幻想的な作品が並ぶのだが、「猫…」が明るいイメージだったのとは対照的に暗い作風の作品が並ぶ。

 印象に残った作品のあらすじを簡単に述べておく。
 「コロンブレ」ステファノの行く先々に現れ、彼を食らおうと狙っている怪魚コロンブレ。老いたステファノはコロンブレと決着をつけるべく海へ出るが…
 「七階」その病院は症状が重くなるほど下の階に行かねばならない」。七階に入院していたコルテだったがある日、病室が足りないので六階に移動してくれと言われ…
 「神を見た犬」不信心な住民ばかりのティスの村のはずれにやってきた隠修士は犬を連れていた。隠修士が亡くなった時、彼の住んでいた庵は光に包まれる。村人達は隠修士の犬ガレオーネが神を見たと思い、やがてガレオーネの視線に神を感じ始める。
 「護送大隊襲撃」山賊の首領プラネッタは服役を終えて仲間の元に戻るが、仲間達に疎んじられ一人で山にこもることになる。プラネッタがまだ首領だと思っている山賊志望の若者ピエトロに大金を輸送する護衛大隊を襲撃する計画をぶち上げるが…

 と、様々なシチュエーションの作品が収められた作品集。裏表紙には「幻想と恐怖」の22編、とあるが、あんまり「恐怖」というのは当たらないと思う。どの作品も決して冷たい印象の残るものではない。鮮やかな終わり方をするのがこの作品集の特徴で、いきなり読者を放り出してしまうような作品もあるし、「驕らぬ心」「クリスマスの物語」のようなカトリック(イタリア人はカトリックが多い)らしい美しい話まで、その振幅の大きさもこの作品集の魅力である。

 ただ残念なのは「戦艦『死』」という作品。これは完全にSFで、第2次大戦中にドイツ軍が建造した秘密兵器の新型戦艦がベルリン陥落の報を受けて外洋に逃れ、その後たどった顛末を描いた作品なのだが、作者が何を描きたかったのか全く不明である。最後にこの艦が交戦する『敵』が何者なのか、何を象徴しているのか全く理解できない。私が軽蔑してやまない松本零士のSFマンガレベルだと思う。この作品を収録したことで、この本全体の品位を下げてしまったと思う。
 他は素晴らしい作品が並んでいるだけに残念。

 ブッツァーティという作家の事は全く知らなかった。世界にはまだまだ私の知らない素晴らしい作家がいるんだなあ、と改めて思う。そういう作家に、作品に触れるチャンスが広がる光文社古典新訳文庫、本当に素晴らしい企画だ。

 …でも創刊当時に予告されていた「グレート・ギャツビー」が出てない…。新潮から出ている野崎訳の伝法な語り口はこの作品に合っていないし、村上春樹氏のクドい文章は嫌いだし、こっちを期待していたんですけど…出ないんですかねえ
.07 2007 イタリア文学 comment10 trackback1

comment

松本零士のSFマンガレベル!…必ずしも同意はしませんが言いえて妙で思わず笑ってしまいました。

ところで「グレート・ギャツビー」、私も好きな小説です。期待して村上春樹訳の最初を立ち読みしたのですが、あの素晴らしい冒頭の一文をあのように訳されてもなあ…という気がしました。
2007.05.07 22:55 | URL | 迷跡 #- [edit]
「ギャツビー」野崎訳を読もうとして挫折したままなんです。
読みたいんだけど、野崎訳はどうも文章のイメージが作品と乖離している気がするし、
村上訳の方が作品にはあっていそうなんだけど、なんだか村上氏の文章ってくどそうで読みたくないし・・・
宮脇孝雄氏の訳、期待してたんですけどね~

「戦艦『死』」は松本零士がマンガにしても全然違和感なさそうな気がしませんか?読みたくもないけど(笑)
2007.05.07 23:34 | URL | piaa #- [edit]
TBしていただきましてどうもありがとうございました!!

古典新訳文庫をすべて読みたいという部分、本当に同感です。毎月の刊行が楽しみな文庫シリーズはなかなかありませんよね。

ロダーリも良かったし、カルヴィーノやタブッキも好きなので、イタリアの作品には面白いものが多いのかもしれないなぁと思い、関心が増してる今日この頃です。
2007.07.14 23:24 | URL | ANDRE #- [edit]
ANDREさん、こんばんわ
古典新訳文庫はいい企画ですよね。時々「古典?」というのもありますが。
幻想文学系は特にいいです。今後も期待ですね。
この文庫で出たのを機にドストエフスキーに挑戦しようかななどと思ったりしています。

イタリア文学はどれも面白いです。
最近は日本人のメンタリティがイタリア人に似てきているのかもしれませんね。
2007.07.15 01:14 | URL | piaa #- [edit]
光文社古典新訳文庫、本当にいいですよね。
最近このシリーズばかり読んでいるような気がします。
でもpiaaさんの書評を読むと、自分の程度を思い知らされてちょっと落ち込んだり・・・。

『戦艦《死》』、あれ何を描きたかったんでしょうね。
この短篇集の中では長い作品なのに、ここまで引っ張ってこれで終わり?と放って置かれた気持ちになりました。
2007.09.12 22:34 | URL | ぐら #- [edit]
なにをおっしゃいます!
ぐらさんのレヴューはとても丁寧でいつも感心しているんですよ。
私の方こそ駄文ばかりで申し訳ないです。

ところでぐらさんはロダーリの「猫とともに去りぬ」はまだお読みになっていませんか?
この「神を見た犬」はぐらさんも書いていらっしゃるようにシニカルで暗い雰囲気ですが、それと好対照をなすイタリアの明るさ、大らかさが楽しい一冊です。「犬」と「猫」のタイトルも好対照ですが。
ぜひこちらも。オススメします。
2007.09.12 23:14 | URL | piaa #- [edit]
パロディー?ふざけたタイトルだなぁ、と手が伸びずにいたんですよね。
でも今、無性に読みたくなってきました。
なにしろ、「文句なしに一番面白かった」と書かれているのですから。
訳者も同じ方ですね。
食べものもそうですが、イタリア人の感覚って日本人に合う気がします。
2007.09.14 00:18 | URL | ぐら #- [edit]
「猫とともに去りぬ」、ぐらさんのレヴューを心待ちしておきますね。

イタリアの作家というとカルヴィーノが図抜けて人気があり、他には手に入りやすいのはタブッキ、パヴェーゼといったあたりでしょうか。
イタリア文学、もっと読みたいです。

2007.09.14 01:24 | URL | piaa #- [edit]
こんばんわ(^^)ノ
現代詩作家の荒川洋治氏からイタリアの作家ブッツァーティの「マジシャン」から引用された元気の出る話が聞けました。
スキアッシュ教授という友人が主人公の私に「君ら作家というのはなんの役にも立たない。ただの自己満足じゃないのか。いつか君らの前には人っ子一人いなくなる」と底意地悪い質問を執拗に受け、ようやく次のように反論したとのこと。「私たちが書き続ける無益で理解しがたい産物こそが人類の到達点をしるすものだ。・・・詩もそうだ。うまく書けなくてもいい。書こうという気になるだけでいい。・・・」と。
早速「神を見た犬」を私も買って、読みました。
「マジシャン」「神を見た犬」「7階」とも大変おもしろく読ませていただきました。
2008.01.20 22:50 | URL | かず #- [edit]
かずさん、コメントありがとうございます。
「マジシャン」という作品のことは全く印象に残っていませんでした。
スキアッシの言葉の「詩」を「ブログ」と置き換えると、ブロガーとしてはちょっと耳が痛いかもしれませんね。
2008.01.21 00:16 | URL | piaa #- [edit]

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神を見た犬(il colombre e altri racconti) ブッツァーティ Dino Buzzuati 光文社古典新訳文庫 2007.4. 古典新訳文庫は、「古典?」という疑問も多少あるものの、20世紀の幻想短編小説の刊行が割りと多いのが特徴的な気がします。これまでに同シリーズで刊行された「猫
2007.07.14 23:16 Andre's Review

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