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キース・ジャレット/J.S.バッハ:ゴールドベルグ変奏曲


 ntmymさんのブログのこの記事でグールドの弾くゴールドベルグ変奏曲について取り上げられていた。これを聴いてntmymさん、感動しちゃっている。ntmymさん自身が感動したときのこの人の記事のピュアな表現力には毎回驚かされる。それでつい、グールド嫌いの私も聴いてみようかなあ、と思った。
 私は以前グールドの「インヴェンションとシンフォニア」を聴いてあまりのヘタクソぶりにこのピアニストは二度と聴くまいと誓ったのだった。いまでもこの「インヴェンションとシンフォニア」は我が家最低の一枚のひとつであることに変わりはない。でも「ゴールドベルグ変奏曲」はよかった。ピアノの機能を生かしたメリハリのあるすごくモダンな演奏である。だが、これが決定版とされるのはどうなのだろうか。聴いていてとても疲れてしまった私は、チェンバロで弾いたこの曲のCDを聴きたくなった。

 というわけでCD棚から取り出したのがこれ。ジャズ・ピアニストのキース・ジャレットがチェンバロを弾いて1989年に日本の八ヶ岳音楽堂で録音したものだ。キース・ジャレットと言えば「スタンダーズ」と呼ばれるトリオでの演奏や「ケルン・コンサート」をはじめとする完全即興によるピアノ・ソロの演奏が有名なピアニストで、その彼がクラシックに挑戦した一連の作品の第2弾に当たる作品である。

 彼のクラシック作品としては、同じバッハの「平均率クラヴィーア曲集」第1巻、第2巻、「フランス組曲」、ヘンデルの「クラヴィーア組曲」、モーツァルトのピアノ協奏曲集、ショスタコーヴィッチの「24の前奏曲」それにアルヴォ・ペルトの作品などの録音がある。私もすべて聴いたわけではないが、どれを聴いてもとてもストレートで清潔な演奏で、彼がジャズを弾くときは体をうねらせ、うなり声を上げて演奏するのとは全く対照的な印象さえ受ける。それどころかモーツァルトやヘンデルでは他のどんな演奏者にも追随できない美しい音を聴くことができるのだ。

 この「ゴールドベルグ変奏曲」も同じことが言えるのだが、グールドと聴き比べるのならば、まずピアノとチェンバロの機能的な違いを頭に入れておかないといけない。チェンバロは弦を爪で弾いて発音するという機構上、音の強弱をつけることが難しい。だからバッハやヘンデルの時代の鍵盤楽器用の作品の楽譜にはフォルテとかピアノといった強弱を表す記載がない。
 その後弦をハンマーで叩くタイプの、現在のピアノの原型であるフォルテピアノが現れると鍵盤楽器の表現力が大幅にアップしてベートーヴェンのソナタのようなダイナミックな鍵盤楽曲が出現したのである。
 で、グールドの演奏は、上にも書いたようにピアノの機能を最大限に生かしたもので、沈んだアリアが終わって第1変奏にはいる所などはまるで爆発するかのようだし、各所でこういう音量の変化が起こる。グールドはさらに変奏ごとにかなり自由なテンポ設定をして起伏に富んだ演奏になっている。これに対してキースのCDは、ダイナミックな表現と言う点では圧倒的に不便なチェンバロを選んだ時点でそういう演奏を指向していないのは自明の事である。

 ここで聴くバッハは平明で優しく、この曲を不眠の夜のために書かせたカイザーリング伯爵でなくともうつらうつらとまどろむ心地が楽しめる。でありながらこの巨大な変奏曲の全体が見通せる、特にひねった所も、逆に伝統とかにも捉われる事もない自然体の演奏で、かえってそこがこの演奏の新鮮な魅力である。

 余談だが、私は10年ほど前に、日本でのバッハ演奏の第1人者である小林道夫氏の弾くこの曲の演奏会に行った事がある。せいぜい150人しか入らない小さな会場でほんの数メートル前に置かれたチェンバロの小さな音を耳をそばだてて聴くのだ。それは素晴らしい経験だった、それ以来私にとってのバッハはそういうインティメートなものなのである。
.27 2007 クラシック音楽 comment13 trackback0

comment

グールドはお嫌いですか。わたしは逆にグールド好きのジャレット嫌いで(笑)でも「インヴェンションとシンフォニア」ならたしかにグールドでなくてもよいかもしれません。
「ゴルトベルク」は最近ですと高橋悠治のピアノ演奏がセンセーショナルでした。もし未聴でありましたら、機会があったら聴いてみてください。でもぜんぜんお勧めではありませんが(汗)
2007.04.28 02:48 | URL | manimani #- [edit]
piaaさん、こんにちは~!

私の記事を取り上げてくださって、恐縮です;
いやー、盛大に感動しちゃってましたね、私は。照れ。

グールドのゴールドベルグはたしかにもの凄く激しくて疲れます。演奏しながら歌ってたりするので、私もついつられて盛り上がっちゃうんですよね;

チェンバロって、そういうふうに鳴る楽器だったんですか。柔らかい演奏というのも聴いてみたいかも。キース・ジャレットは、近々必ず聴いてみることにします。この人のジャズのほうにも興味があるので、おすすめがあったら教えてください~♪
2007.04.28 16:51 | URL | ntmym #- [edit]
>manimaniさん
へえ~、逆にmanimaniさんがグールド好きなのが私には意外でした。端正な演奏がお好きかと思っていました。
これがベートーヴェンからあとの作曲家なら何をやってもOKですけど、私はバッハについては保守的な考え方を持っています。
とはいえ、ジャズにしたり、シンセで弾いたりなんでもOKなところもバッハの魅力なんですけどね。

キースの弾いたクラシックは、彼のジャズとはかなり様相が違うと思います。ほかのピアニストにない美点がたくさんあると思います。
もしお聴きになってなかったらぜひ一度お聴きになってください。

>ntmymさん
演奏しながら歌うのはジャズを演奏する時のキースもそうなんです。
キースのジャズ・アルバムでは入門向きにはトリオの「スタンダーズvol.2」、ソロでは「ケルン・コンサート」、さらに聴くならトリオによる即興演奏の「チェンジレス」、ソロならDVDで出ている、スタンダード曲を弾いた「ソロ・トリビュート」あたりでしょうか。

チェンバロは「ヂン」という独特の音なのでピアノの演奏に聴きなじんでいるとちょっとアレかもしれません。
2007.04.28 21:32 | URL | piaa #- [edit]
 失礼します。

 タイミング的には、かなりずれずれの書き込みで済みません。

 と言いますのも、最近になって、ようやくキース・ジャレット版「ゴールドベルク」を購入しまして、まだ聴いてはいないのですが(もうすぐ聴きます)、
 「キースのゴールドってどんな評価なんだろう?」
 と思って、ごそごそしていたらこちらに当たりました。

 よろしくお願いいたします。

 因みに、僕は、ゴールドベルクは、グールドの古いものから新しいもの含めて7枚くらい持っています。
ジャズ系だと、ジャック・ルーシェのも持っています。こちらはなんとなく砕けた、聴きやすいバッハだったと記憶しています。

 キース・ジャレットは、何故か?名盤の誉れ高い「ケルン・コンサート」よりは「サンベア・コンサート」の方がいいんじゃないか?などと生意気なこと思ったりしています。キースのアルバムもいくつかは持っています。
 キースの中のお気に入りは、「サンベア」か「マイ・ソング」辺りかなと思っています。

 よろしくお願いいたします。
2012.02.22 03:33 | URL | satoris #- [edit]
satorisさん、コメントありがとうございます。
7枚もお持ちとはすごいですね。ゴールドベルグマニアの方でしょうか。

サンベア・コンサートは私も好きなアルバムです。東京のアンコールとか鳥肌立ちますが、なにしろどれも長くって聴くのは大変ですよね。
最近の「テスタメント」とか「リオ」のような細切れのやつはどうもノレなくて、というかノッてきたら終わっちゃう感じで、やはり以前のような一曲が長いヤツのほうが好きです。
2012.02.22 20:48 | URL | piaa #- [edit]
 お邪魔します。

 お返事ありがとうございます。ゴールドベルク、きちんと数えてみたら11枚ありました。うち、グルードが3枚だったかな?

 こう言うと開き直りかもしれませんが、何といっても、原曲がいいと思うのです。だから、誰がどんな風に演奏しようと、その曲の良さには変わらないと。

 僭越ながら、ゴールドベルクに含まれる、オッとろしいほどのカノンの話ってご存知でしたか?バッハ晩年の傑作と言われるだけのことはある凄まじいまでの、素晴らしい作曲技法が、てんこ盛りですよね。

 またよろしくお願いいたします。
2012.02.23 00:00 | URL | satoris #- [edit]
11枚ですか!それはすごいですね。
とはいえクラシックではそういうことが往々にして起こるものですね。
私は実は「冬の旅」コレクターでして、今数えたら13種類持ってました。

>原曲がいいと思うのです。だから、誰がどんな風に演奏しようと、その曲の良さには変わらないと。

全くおっしゃるとおりです。「平均律」のことを「鍵盤楽器作品の旧約聖書」と言うことがありますが、「ゴールドベルグ」もそれと同等の作品だと思います。
2012.02.23 01:06 | URL | piaa #- [edit]
 お邪魔します

 そうですか「冬の旅」13種ですか。それはすごい、上には上がいるものですねえ。あの曲は、僕の印象では、ちょっと暗く、「白鳥の歌」までは行かなくとも、何となく枯れたイメージがあります。「美しき水車小屋の娘」何かは、まだ少し明るい感じがして、聴いていて落ち込まずにすむかなあと。(13枚もお持ちの方に、生意気言ってすみません)

 で、お尋ねしたいのですが、13種類もお持ちで、おすすめはどの歌手でしょうか?よろしければ教えていただけると嬉しいです。

 それと因みに、piaaさんのごらんになる「冬の旅」の魅力って、何なんでしょうか?教えていただけると幸です。

シューベルトも、聴いていると、歌心のある方ですね。とても魅力的な旋律を作る。やはりあれは凡人には遠く及ばない境地なんでしょう。あんな才能があったら、どれだけ惨めな生涯を送ろうとも、僕なら気にしませんね。

 又よろしくお願いいたします
2012.02.23 07:22 | URL | satoris #- [edit]
「冬の旅」で我が家にあるのは、
ホッター、フィッシャー・ディースカウ(2種類)、プライ、クヴァストホフ、ハンプソン(以上バリトン)シュライヤー、ヘフリガー、プレガルティエン(以上テノール)ルートヴィヒ(アルト)、タルヴェラ(バス)、五郎部俊朗(テノール、日本語版)それとブロホヴィッツ(ツェンダー編曲版)の13種類です。

ホッター、ディースカウはもはや定番ですが、ちょっと甘い雰囲気のあるプライや、フィンランドのバス歌手タルヴェラのいぶし銀的な演奏も捨てがたいですが、一番好きなのはクヴァストホフですね。ディースカウのような明晰さとオペラティックな劇的表現が共存した凄い演奏です。

「冬の旅」という歌曲集は、ひとつのストーリーを追った連作歌曲の作品でありながら、実は曲がはじまる前に主人公の失恋というストーリーは終わっていて、1曲目で雪の夜の中家を出ていくところで始まり、続く23曲のあいだ主人公はあてどもない旅を続けながら苦しみ続ける、その苦しみのヴァリエーションが素晴らしい音楽に昇華している、他のどんな歌曲作品とも違う唯一無二の音楽作品だと思います。

そういえば「冬の旅」についてはこれまでブログで取り上げた事があまりなかったですね。ちょっと聴き直して、こんどちゃんと記事にしてみます。
2012.02.23 22:46 | URL | piaa #- [edit]
 失礼します。

 そうですか、クヴァストホフ。覚えておきます。

 そういえば、確かに「冬の旅」って、第1曲目で、旅立つ風景が描かれますね。
 
 あまり、シューベルトって、意識したことの無い作曲家だったけど、これから気を付けます。若い頃、室内楽曲を、シンフォニーを少々かじりましたかねえ。室内楽曲も、結構渋い感じの曲を各方だと思っています。

 キース・ジャレットに戻ると、「ステアケイス」とかいう二枚組CDを最近聴きました。ピアノ・ソロのアルバムでした。なかなかいい感じの演奏をされていて、ライブでこそなかったものの、結構いいアルバムの中に入るなと思いました。

 ゴールドベルグに戻ると、気になっているのが、高橋悠治の演奏です。あの方のバッハって、結構面白かった記憶があるのですが、ゴールドベルグをどんなふうに演奏されているのか気になりました。

 駄文長文失礼しました。またよろしくお願いいたします。
2012.02.24 02:07 | URL | satoris #- [edit]
 失礼します

 今現在、漸く、キース版「ゴールドベルグ」聴いている最中であります。

 なんだか、真正面からバッハに取り組んでいる印象です。キースの、いつもとは違う一面を見ている気分です。

 これなら、完全にクラシックアルバムとしてとらえられるなと思います。キースのような人が、そのような人だからこそと言えるのか?バッハに真正面から取り組んでいる姿は、カッコよく見えます。

 ジャック・ルーシェのように、変化球でないところが、また襟を正される感じですね。

 「ちゃんと聴けよ!」

 と言われてるみたいです。ちゃんと聴こうと思います。
2012.03.25 15:05 | URL | satoris #- [edit]
キースのクラシックは実はどれもかなりいいんですよ。

「インヴェンションとシンフォニア」などを聴くと演奏技術という点ではかなり疑問を覚えずにはいられないG.G氏とは比較にならないくらい腕も立ちますしね。
その技術をひけらかしたりする事とは全く無縁の清潔で無欲な演奏が素晴らしいです。普段のジャズを弾くときのキースとは全く正反対の印象ですね。モーツアルトの協奏曲なんかもすごく良かったです。
2012.03.26 13:17 | URL | piaa #- [edit]
 失礼します

 そうですか、キースのクラシックって一聴の価値ありって訳ですか。なるほど、なるほど、「ゴールドベルク」も最後まで聴くと、凄く丁寧に演奏されているなあと思います。

 いい加減に聴き流すことは許されない、聴く側に、無言の緊張を強いているような気がします。

 聴きやすい、聴き流しやすい、ジャズの演奏と全く反対というか、こういうクラシック演奏を聴かされると、改めてジャズ演奏の方もきちんと聴き直すべきではないかと、考え直したりしました。
2012.03.26 15:31 | URL | satoris #- [edit]

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