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イタロ・カルヴィーノ くもの巣の小道


 実はこれを読む前にフィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」を読み始めたのだが、30ページくらい読んで挫折した。全然面白くなかったのだ。その30ページに何が書いてあったかまったく頭に残らなかった。まあ今の私のノーミソとこの作品の波長が合わなかったというだけの事かもしれないので、また今度読んでみよう。

 そこで替わりに読み出したのがカルヴィーノの処女長編「くもの巣の小道」だった。ネオ・レアリズモ(英語で言うとニュー・リアリズム)の傑作の呼び声高い名作である。

 イタリアのある村に住んでいる少年ピンは、ある日姉さんのなじみのドイツ兵のピストルを盗んで投獄される。そこからパルチザン(今風に言えば共産ゲリラだ)のメンバーと一緒に逃げ出して彼らと行動を共にする。ピンのやってきたパルチザンのグループは落ちこぼれ揃い。そこでピンが目にする理想を、悲惨で残酷な現実を、愚かしさを淡々と、詩情と共に描いた作品。

 ピンは大人たちが好きだ。だが同時に嫌いでもある。姉さんを金で一晩買っていく大人たちが。ピンは大人の事はよく知っている。くもが穴の中に巣を作る事を大人は理解できないことを知っているので、ピストルをくもの巣の穴に隠す。

 第2次大戦中イタリアがムッソリーニによるファシスト党に支配されていた時代に、ファシストに反発する形でパルチザンが蜂起、内戦状態になっていた。パルチザンは共産主義を掲げていたが、しかしここに書かれている通り末端の兵士達にはイデオロギーなど大した意味はない。彼らはなぜ戦っているのだろう。ファシストが嫌いだからか、生活が苦しいからか、それとも個人的な理由なのか。

 最後のほうで隠していたピストルがなくなったと思ったら、掘り出したら自分のものにすると言っていたペッレが掘り出したピストルを姉さんに預けていた事を知る。しかしペッレはその時には仲間を裏切っていて元の仲間だったパルチザンたちに殺されていたのだ。ピンにはもう何が正しいのかわからない。
 くもの巣の小道に戻ったピンはパルチザンの仲間で女嫌いのクジーノに出会う。そこで印象的な美しいラストシーンになるのだが、ここでの会話の「蛍」は何を象徴しているのだろうか。蛍は近くで見ると気味の悪い虫だが遠目に暗い場所で見るときれいだ。ピンの心の中の「大人」のイメージの事なのか。それともイデオロギーと、その主張によって起こった内戦の悲惨の事なのだろうか。

 内戦の悲惨を正面から見据えるのではなく、ピンの視点を通してソフトに描かれている。だからリアリズムの作品とは言いながらこの作家らしいファンタジーがある。例外は第9章で、ここではパルチザンの政治委員キムによる共産主義者としての「信条告白」が語られる。このキムとピンは結局出会わない。これはちょっと不思議である。

 後の歴史三部作「不在の騎士」「木のぼり男爵」「まっぷたつの子爵」はこれに比べて寓意とファンタジー性が強まっているとはいえ共通点もあると思うが、「見えない都市」は全く違う作品である。
 この作家、一言で言い表せない。そこが魅力なんだけど。
.01 2007 イタリア文学 comment4 trackback1

comment

はじめまして、カルヴィーノの記事、面白く読ませてもらいました。
書かれてるとおり、「一言では言い表せない」ところが魅力ですよね。
私は、ハヤカワ文庫の「レ・コスミコミケ」にやられました。木のぼり男爵も好きです。(yahooで、本のブログをやっています。カルヴィーノについて書こうと、検索していてここに辿り着きました)
2007.03.10 17:58 | URL | 月の骨 #79NioatI [edit]
コメントありがとうございます。
カルヴィーノは読み始めてまだ間がないので、「レ・コスミコミケ」はまだ読んでいないんです。近所の本屋さんに売ってないもんで。
私はこれまで読んだカルヴィーノ作品では「見えない都市」が一番好きです。あのわけわかんなさ、最高です。次は「宿命の交わる城」を読みたいなあと思っています。
2007.03.10 20:36 | URL | piaa #- [edit]
TBどうもありがとうございました。

蛍の場面は本当に印象的でしたね。
自分はやはり実は落ちこぼれ集団のパルチザンや
大人の世界を比喩しているのかなぁと思いました。

カルヴィーノは本当に様々な味わいがあって
魅力的な作家だと思います。
2007.07.22 01:13 | URL | ANDRE #- [edit]
カルヴィーノ、作品ごとに作風が違うので、この本には一体どんな世界が描かれているのか、という楽しみがあります。

わりとたくさんの作品があって、どれも読みたいんですけど、
岩波から出ていた「パロマー」が入手困難になっているようですね。
かと思うと新しい本も出るようで、国書刊行会から「最後に烏がやってくる」というのが予定されているようです。
ところで来月発売の「魔法の庭」って本はどんな本なのでしょうね?
短編集らしいですけど。
2007.07.22 23:25 | URL | piaa #- [edit]

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くもの巣の小道 イタロ・カルヴィーノ  ちくま文庫 2006.12. 大好きな作家の1人であるカルヴィーノの処女作。発売日には購入していたんですが、パラパラと読んで、ちょっとこれまでのカルヴィーノ作品とは違う雰囲気を感じ、いつの間にやら積読状態になってました。 舞台
2007.07.22 01:13 Andre's Review

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