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レムのSF論

 いま「大失敗」を読んでいるのだが、これは本当にSFである。
レムは一般にはSF作家とされているが、実はレムの純粋な意味でのSF作品は何本かしかない。「エデン」「ソラリス」「砂漠の惑星」「星からの帰還」「天の声」そして「宇宙飛行士ピルクス物語」
 他の作品は小説だったとしても「泰平ヨン」シリーズや「ロボット物語」シリーズのような風刺SFだったり、「枯草熱」「捜査」のような不可知論的な現代小説だったりする。
 「大失敗」は「ピルクス」の続編と言ってもいい作品だが、その内容は「泰平ヨンの現場検証」を思わせる。とにかく執拗なまでの記述でとても読みにくい。もちろんこの読みにくさを含めてこの作家が好きなのだが。

で、「大失敗」を半分まで読んだところで、「高い城/文学エッセイ」に収録されていたSF論ふたつを読み返してみた。


 この本に収録されたSF論は「SFの構造分析」という15ページくらいの短いものと、「メタファンタジア」と題された40ページほどの長いものの2種。特に後者は以前サンリオ文庫で発売されると予告されながらとうとう発売される事のなかった幻の著作「SFと未来学」という巨大な論文集の中の一編である。

 ここでレムは独自のSF論を展開するのだが、これを読むと、レムがSF(=サイエンス・フィクション)を、文字通りサイエンスによって書かれていなければならないと思っている事がわかる。
 ところが現在のSFファンは、SFの事がサイエンス・ファンタジー…要するに中世の戦乱の物語を宇宙時代に置き換えたもの…であっても全く問題にしない(というか、今SFと呼ばれるものの大半はこれだ)。だからレムの定義が全く理解できないSFファンはいまだに多いのだ。

 例えば、スター・ウォーズ。これは剣と魔法のヒロイック・ファンタジーの舞台を宇宙に置き換えたものだ。そう思って観ると非常に面白いが、サイエンス・フィクションとしてはデタラメだ。科学はどこにもない(だからこそいろいろな仮説を立てられて面白いと言う意見もあるし、確かにそこがあの映画の魅力でもあるのだけど)。SFというのはこういうものなのだ、と思っているSFファンにとっては、レムのSFの定義などは全くありえないものに思えるだろう。

 レムは現在可能である事がはっきりした技術までしか作品内で使うべきではないと言う。だからレムの基準では巨大宇宙船が果てしなく加速して準光速で飛ぶのはいいが、ワープ航法で飛ぶのはルール違反ということになるようだ。まあこれは確かに厳密すぎるきらいはある。
この定義では「プラネテス」「アルマゲドン」はSFとして合格、という事になる。「スター・トレック」は失格だ。だってワープするもん。
 レムの真意は、SFも一般小説と同じようにリアルな現代の物語として在るべきだ、という事に尽きるのだろう。

 そう考えてみると確かに「宇宙飛行士ピルクス物語」は極めてリアルなSFだった。このブログの私のレビューにも「狩り」というエピソードの月面の描写のリアルさについて述べているが、「大失敗」はそれをそのまま受け継いだリアルSFそのものなのである。冒頭の「バーナムの森」での土星の衛星タイタンの描写は「狩り」の月面描写を直接連想させる。
 ただ、残念ながらNASAの土星探査機カッシーニの観測でこのレムの描いたタイタンが現実のものと少し違う事を私たちはすでに知ってしまっている。邦訳が出るのがもう何年か早かったらなあ、と思う。

 ともあれ残り200ページ、レムはこの「最後のSF」で何を見せてくれるだろうか。
.07 2007 スタニスワフ・レム comment0 trackback0

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