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パノス・カルネジス 石の葬式


 パノス・カルネジスはギリシャの作家。この「石の葬式」は彼のデビュー作である。
 これは連作短編で、19の短編を通じてギリシャのある小さな村での出来事が綴られていく。

 冒頭に置かれた表題作「石の葬式」ではいきなり村が地震に襲われ、イェラスィモ神父は村人達の不信心に対する天罰だ、と思う。
 この地震をきっかけに父に虐待された双子の姉妹とその復讐劇が描かれるのだが、そのラストでは読者もイェラスィモ神父と一緒に唖然とさせられる事になる。このラストのひねり方がどの短編でも生きていて、読んでいて「そうくるか!」とニヤリとさせられる。

 イェラスィモ神父ら主要な登場人物は繰り返し登場してくるし、時間が一貫して流れているので地震から村の終焉までの村の主な出来事を読者は読むことになる。このイェラスィモ神父やニセ医者のパンテレオン、カフェのマスター「クジラ」らレギュラー(と言っていいのか?)が、みんな一癖ある連中なのだ。この作品集の原題は「Little Infamies」直訳すると「ささやかな不道徳」なのだが、その通りこの短編集にはささやかな(場合によってはささやかとはいえないような)不道徳を行う者が様々な角度から描かれる。

 私の気に入った短編を挙げておくと、バス運転手と車掌のコンビが若い女に魅了される「ペガサス号の一日」、年金事務所で発作に襲われ急死したヤレミアスがどうなったかを描く「預言者エレミヤ」、それに「収穫の神の罪」などが印象に残ったが、どれかひとつ、と言われたら「収穫の神の罪」を推す。残酷な犯罪が行われるまでと、その復讐劇を醒めた筆致と巧みな構成で描いた傑作だ。娘と結婚させるという約束を破った村長を怒りのあまりに殺害してしまう「肉屋」。だが村人皆に嫌われている「肉屋」を村人達は許さないのだ。
 ちなみに「肉屋」がいかに嫌われているかについてはこれに先立つ、ある少女に嫁さんにしてくれるか、さもなければ助けてくれと懇願されるパンテレオンを描く「収穫の神の罪」の中でも描かれていて、この短編の中で継父にパンテレオンと結婚できなければ肉屋と結婚させると言われた娘は継父に殺意を抱くのである。

 全体にどことなく幻想味漂う作品で、ガルシア・マルケス「百年の孤独」を連想させるところもあるし、滅び行く村のイメージは、あそこまで深刻ではないにせよリャマサーレスの「黄色い雨」を思わせる。ただし「石の葬式」は全体のトーンはかなり明るいのでリラックスして読める。不道徳な登場人物たちを「仕方ない奴らだなあ」と思いながらも許せてしまうのだ。

 この本は白水社から出ている。白水社はいつもいい本出すなあ。でも2400円は高い。
 それと装丁についても一言。この装丁のモノクロームなイメージではすごく暗い作品のように思ってしまう。もっと明るい装丁でも良かったのでは?
.20 2007 その他欧州文学 comment4 trackback2

comment

たしかにモノクロームで暗い装丁ですけれど、私はこの装丁に惹かれてこの本を手に取りました。
明るい装丁だったら、手にとっていなかったかも!?
個性豊かで、ひとくせもふたくせもある村人たちですが、私のお気に入りはイェラスィモ神父です。
2007.01.21 09:07 | URL | くろにゃんこ #Rr/PoIDc [edit]
個性的で印象深い装丁で、それ自体はいいと思うのですけど、読んでしまうと何となく内容と違和感があるような気がしました。
この作家、ぜひ他の作品も読みたいですよね
2007.01.21 23:27 | URL | piaa #- [edit]
TBありがとうございました。
ということで、こちらもTBさせていただきました。またお邪魔します。
2007.01.23 14:44 | URL | ego_dance #- [edit]
よろしくお願いします。
記事に書いていらしたように、私も第2作の長編「迷路」を早く読みたいです。
2007.01.24 00:00 | URL | piaa #- [edit]

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『石の葬式』 パノス・カルネジス   ☆☆☆☆★ ギリシャの作家の短篇集。1967年生まれの現役バリバリ、というかデビューしたての新人作家さんである。この『石の葬式』が2002年のデビュー作らしいが、すごくいい。 タイトルや装丁の雰囲気から地味で手堅いリアリズム
先日、図書館に立ち寄ったとき、何気なく新着本コーナーで手にとってしまった一冊。図書館の本というのは、表紙を広げたところに、帯を丁寧に貼り付けてありまして、それを読んでみますと「この世の終わりを叫ぶ神父」とか書いてある。神父もの、それは捨て置けませんね。出

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