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スワヴォーミル・ムロージェク 鰐の涙


 前回読んだ「所長」がとても面白かったので借りてきた。これも「所長」同様、220ページに73の短編を収めた短編(というかショート・ショート)集。
 この「鰐の涙」には「所長」よりもやや後の作品が収録されていて、共産主義国家崩壊後の、急に資本主義社会になって戸惑う庶民が描かれていたり、共産時代の恨みを晴らそうとしたり、この作品集では「所長」の時の共産主義下で絶対的な権力を持った上司との関係からストレートな体制批判を引き出していた作風とは違ってきているのは間違いないのだが、以前よりどたばた具合を増しながらもペーソスとアイロニー漂う作品集である。今回はムロージェクの1コマ漫画作品も掲載。

 「床屋にて」と言う作品はさらっと読むと今ひとつピンと来ない。ここに出てくる人名が共産主義時代にソビエトやポーランドで活躍した政治家の名前だと理解しないといけない。庶民は共産主義のことをおぼえても居ない。スターリンをも含む彼らを思い出せなくても、もはやたいしたことではないのだ。

 最後の「ツヴェルク」は恐ろしい話で、主人公(ポーランド人)はアラブ人、黒人と三人でツヴェルクというドイツ人のところで働かされる。主人公はアラブ人と黒人と一緒にされるのが許せないがきっと最後に大金が手に入ると思っている。しかしツヴェルクは仕事が終わると彼らをシャワー室に入れようとする。これはもちろんアウシュビッツのシャワー室(=ガス室)を暗示している。しかしシャワーに入る順番が黒人やアラブ人より後なのが気に入らない主人公は暴れる。差別される者が差別をしているという人間の愚かさ、情けなさを描き出す。

 共産主義国家が崩壊して批判の槍玉に挙げるべき物がなくなってしまったかと思いきや、資本主義や、それら体制を通り越して人間の根源的な愚かさにまで迫って批判精神を失わない、興味深い作品群である。ぜひ「所長」とあわせて読もう。
 でも一冊の本としてはどちらかと言うと「所長」の方が好きだった。
.25 2006 東欧・ロシア文学 comment0 trackback0

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