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ストルガツキー リットル・マン


 群像社から出ていた季刊「ソヴェート文学」という雑誌の1973年夏号に掲載された140ページほどの中編小説。その後は全く本になっっていない幻の作品。実はこれ、「収容所惑星」「蟻塚の中のかぶと虫」「波が風を消す」の3作、いわゆる「マクシム3部作」や「神様はつらい」、私は未読だが「ラドガ壊滅」さらには「地獄から来た青年」と同じ世界の作品で、いわばサーガを形成する作品群の一角を占める作品でもある。
 パンタ人の移住先を探す「ノアの箱舟」作戦を実行中のある惑星を訪れたコモフらは、そこで遭難した人類の船を発見する。しかしひとり生存した赤ん坊は何者かによって育てられ、不思議な能力を持つ少年に育っていた。彼を「リットル・マン」と呼ぶ。彼を橋渡しとして、姿を現さないこの惑星の原住民の知的生命とコンタクトしようとするコモフだったが・・・

 この作品は、時代的には「収容所惑星」と「蟻塚の中のかぶと虫」の中間にあたる。「蟻塚…」の中でレフ・アバルキンの上司だったゲンナジー・コモフとヤコフ・ヴァンデルフーゼが登場する。彼らの部下ポポフの目を通して謎の知的生命とコンタクトを取ろうとするチームの行動を描く作品なのだが、結局はこの星の原住生物に「遍歴者」の息がかかっている事に気づいて撤退を余儀なくされてしまう。地球人でありながら「彼ら」に育てられ異常な能力を持つリットル・マンはただひとりでこの惑星に残され、物悲しいラストを迎える。

 「遍歴者」とはこのシリーズのあちこちで語られる(直接登場はしない)超知性を持った異星人の事である。なぜコモフや(コモフの上司の)ゴルボフスキーがこれほど「遍歴者」を恐れるのかは「蟻塚…」を読まないとわからない。この物語は「蟻塚…」で語られる事件(レフ・アバルキンらの誕生)の後なのである。だから「遍歴者」の息のかかった者とかかわりを持ちたくないと考えるのは当然と言えば当然なのだが、1973年にいきなりこの作品を読まされたファンはさっぱり意味がわからなかっただろう。1973年には「収容所惑星」の邦訳はまだ出ていなかったし「蟻塚…」はまだ書かれてもいなかったのだから。

 この作品を読んでいくつか気づいた事を挙げておく。
●この作品には「大頭のニノン」という人物(?)がポポフと通信する相手として登場するが、これは「蟻塚…」で活躍するビッグ・ヘッドという犬型の異星人のことだろうか?
●ポポフらと行動を共にする女性隊員マイカの苗字がグルーモワ。「蟻塚…」のマイヤ・グルーモワとの関連は?
●なぜ「遍歴者」はたった二度しか攻撃できない防衛システムを置いたのか。はじめの調査船が攻撃されたと言う事になれば異星人を呼ぶ結果になると思うのだが…逆にこの星を調査させたかったのか? 超知性の考える事は理解できない。

 このシリーズに属する主な作品を挙げると、
①帰還・二十二世紀の真昼(1962)未訳
②脱出の試み(1962)未訳
③ラドガ壊滅(1963)

④神様はつらい(1964)
⑤収容所惑星(1969)
⑥リットル・マン(1971)
⑦地獄から来た青年(1974)
⑧二十二世紀の真昼(1975)未訳(①の増補改訂版)
⑨蟻塚の中のかぶと虫(1979)
⑩波が風を消す(1985)
となる。(赤字は未読)
読んだ作品を時系列で並べると(④⑤)⑥⑨(⑦⑩)となる、と思われる。(④⑤)は判定できない。(⑦⑩)はほぼ同時期。なお⑥⑨⑩には一部年月日の記載があるのだがよく読まないと多少矛盾もあるかもしれない。
このシリーズの年表や事典を作ってみようとも思っているので情報や気づいた事があったらコメントしてください。

 なおこの作品は、私と同じくストルガツキーファンのntmymさんからの提供を受けて読む事ができた。ntmymさん、ありがとうございます!
.06 2006 ストルガツキー comment7 trackback0

comment

はやいですね!

このシリーズの並びはこんな風になっていたんですねー。ふむふむ。しかしそうなると「22世紀の真昼」とか「ラドガ壊滅」もどうにかして読みたくなりますね! そろそろどこかの出版社がやる気を出してくれないですかねえ…。他の作品も読めば、すこしは謎が解けるかもしれないし。

それにしても、私はぼんやりしてて気が付かなかったですけど、たしかに「遍歴者」のやることはほんとに分からないですね。
2006.11.06 14:32 | URL | ntmym #- [edit]
さて問題のこのシリーズの時系列については「地獄から来た青年」のレヴューにも書いていますが、この作品で「遍歴号」が遭難したのが34年、リットル・マンが生まれたのはその前年の33年とはっきり書いてあります。
作中リットル・マンは「12歳くらいの少年に見える」と記述されています。一方レフ・アバルキンは38年生まれでマクシムはレフと同期なのでほぼ同じ年齢のはずです。と言うことはマクシムがサラクシで大暴れした(「収容所惑星」)のは60年ごろということになります。
「リットル・マン」でポポフはマクシムがサラクシでやらかした事を知っていたのでそれより後です。しかもビッグ・ヘッドと人間が共同作業したのはレフとシチェクンのコンビが最初だった(「蟻塚」)のだから、ニノンがビッグ・ヘッドならば「死せる世界」作戦より後と考えられそうです。と言うことは65年ごろ?
そうするとリットル・マンが33年生まれなのに12歳に見えるのはおかしいということになります。

こう考えるとすごく楽しいです。他の作品も読みたいなあ。
新たな訳を待つしかない「22世紀の真昼」はともかく、一度は本になってたわけなのですから「ラドガ」はなんとかならないもんですかね~。
2006.11.06 19:36 | URL | piaa #- [edit]
 はじめまして。
 「波が風を消す」を検索しているうちに、このサイトにたどり着きました。
 「リットル・マン」のあらすじを読んでびっくり。ストルガツキィのいくつかの作品は、たがいに関連してひとつの大きなクロニクルを作っていたんですね。「遍歴者」はマクシム三部作のみに出てくるものと思っていたのですが、初期の短編集「二十二世紀の真昼」からその存在がほのめかされていたとは。
 英語版のストルガツキィのサイトやウィッキを調べてみると、いろいろおもしろいことが出てきました。これはぜひとも「リットル・マン」を読まなければ……。でも、日本語版テキストはどうやったら手に入るのやら。

 ところで、いくつかの質問についてですが……

●ポポフらと行動を共にする女性隊員マイカの苗字がグルーモワ。「蟻塚…」のマイヤ・グルーモワとの関連は?

USA版のWiki で調べてみたら同一人物でした。

http://en.wikipedia.org/wiki/Minor_personalities_of_the_Noon_Universe

マイヤ・グルーモア(2141 - ?)歴史家、宇宙探検家でありレフ・アバルキンの幼年時代の友人。トイヴォ・グルーモフの母親。
2161年、「箱舟プロジェクト」に参加するが、のちに地球外文化博物館で勤務。
2178年、自分でも気づかぬうちにルドルフ・シコルスキーの罠の中にアバルキンを導き、博物館に入る手助けをしてしまう。「蟻塚の中のかぶと虫」、「リットルマン (英訳名;Space
Mowgli)」に登場。

マイカと発音するのかマイヤと発音するのか?おそらく訳者の読みの違いでしょう。

年表については、ストルガツキィのホームページとUSA版のWiki にも詳しい記載があります。
http://en.wikipedia.org/wiki/Noon_Universe_Chronology

http://fiction.ru/abs/english/
2007.09.10 11:58 | URL | Hirarin #F2TwjmkM [edit]
情報をありがとうございます!
今確認したら、「蟻塚の中のかぶと虫」に、マイヤ・グルーモワは「リットル・マン」で描かれた「ノアの方舟」作戦に参加したとはっきり書いてありました。(文庫版45ページ)
マイヤとマイカの違いは、なんなのでしょうね。同じ深見弾氏の訳なのですが。

英語版Wikiの年表もすごく参考になりました。
これによると「ノアの方舟」作戦は61年になってます。
英語版ではビッグ・ヘッドをGolovanと訳しているんですね。
ロシア語の「голованы」は「頭」以外にもいろんな意味があるようで、この辺がロシア語の難しい所ですね。

「リットル・マン」が載っている「季刊ソヴェート文学 1973年夏号」は古本などで見つかると思います。
2007.09.10 22:20 | URL | piaa #- [edit]
Hirarinです。
マクシム三部作の第一作「収容所惑星(原題:有人島)」の映画製作が、ロシアで進められています。今年の12月に向こうで公開される予定です。ホームページとトレーラーが出ていますので、紹介しておきます。

「Inhabited Island トレーラー」
http://youtube.com/watch?v=s-vSSud0J0U

「Inhabited Island 映画サイト」
http://www.oostrov.ru

それから、いま開高健の「渚から来るもの」をお読みになっているそうですが、ぜひ「輝ける闇」も御覧になるようお勧めします。
2008.02.02 20:58 | URL | Hirarin #obx86lcw [edit]
hirarinさん、こんばんわ。
またまたステキな情報をありがとうございます。
「収容所惑星」の映画化の話は知っていましたが、この映像を見るとなんだか「ロード・オブ・ザ・リング」みたいな雰囲気のスペクタクル映画になっているような感じですね。13秒付近でチラッと写るのはビッグ・ヘッドでしょうか?
ところでこの予告編のyoutubeのページのリンクから映画「みにくい白鳥」の1部も観れました。タルコフスキーっぽい映像がなかなか興味深かったです。
ただ両作品とも日本での公開は難しそうですね。DVDだけでも出してくれないかな。
2008.02.02 22:43 | URL | piaa #- [edit]
そうそう、「輝ける闇」ですが、昔読んだ本を実家に置いていたと思っていたのですが、なぜか「渚…」しかなくて。
新しく買っても500円くらいなので、そのうち買います。
2008.02.02 22:56 | URL | piaa #- [edit]

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