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大島弓子 夏のおわりのト短調


 これは「綿の国星」の単行本に収められていた短編5作を集めた作品集で、仮面家庭の崩壊と再生を描く表題作のほか「赤すいか黄すいか」「裏庭の柵を超えて」など独特の視点で描いたこの作者ならではの作品ばかりが並ぶ傑作集である。

 その中でも「たそがれは逢魔の時間」は私が読んだ中ではこの作家の最高傑作と言っていいと思う。ここではこの作品について述べようと思う。
 ストーリーは…劇ネタバレなのでネタバレOKの人は「続きを読む」をクリックしてください。
 中年のサラリーマン道端譲はある冬の日の夕刻、初恋の人に似た「邪夢(ジャム)」と名乗る謎の少女と出会う。小悪魔めいた邪夢の突飛な行動に戸惑いながらも惹かれていく譲。彼の妻の多美子は邪夢にどこかで会ったような気がする。
 最初の数ページでこの物語の前提となる譲の初恋や妻の多美子との関係を描ききってしまう所は見事。
 しかし多美子は邪夢が少女売春をしているという事に気づく。ここの描写は圧巻で、一瞬で読者は二人の女性に裏切られることになる。事実を知った譲は邪夢に預金通帳を渡して「私には充分にこれを支払う資格があるのだ!その仕事はストップだ!」と叫ぶ。素直に受け入れる邪夢。
 一方、離婚しようと言い出す多美子。譲が初恋の女性を忘れられないことを知っていて満たされなかった彼女は外に愛人を持っていたのだ。譲にそのことを告げた多美子は今日中に家を出て行くと宣言する。
 その夜もう家にだれもいないと思って帰ってきた譲を、多美子が「荷物をまとめきれなかった」と言って出迎える。その胸には譲が邪夢に渡したペンダントがかかっている。多美子はその後落ち着きを取り戻し夜の外出もなくなり、平穏な生活が戻る。
 だが譲は勤めの帰り道、邪夢と出逢った街角に立ち尽くす。また逢えるのではないかと言う妄想を抱いて…

 このマンガが凄いところは人間の心理の二重の真実が克明に、描かれていて、さらにそれが重層的に語られるところである。
 主人公・譲は妻を愛してもいるが、初恋の人≒邪夢を求めてもいる。妻の多美子が譲を裏切るのは譲を愛しているのに本当に愛してもらっていないのではないかという疑いからである。どっちもずるい、とも言えるのだが、実際そんなことはよくあることだし、彼らの背信行為を断罪するつもりなど、作者には毛頭、ない。
 だから、ラストはハッピーエンドなのか、そうではないのかよくわからない含みのあるものになっている。この微妙さがこの作家らしい。

 と、いろいろ取りとめもなく書いてきたが、この人のマンガは他の作家の作品よりも絵で見ないと伝わらない部分が非常に多いと思う。逆に言うと絵がなくてもいいマンガって結構あると思うのだが、この人の作品のよさ、凄さは実際に読んでみないと伝わらない。
 それにしても、これだけ深い読後感を感じさせるマンガを、私は他に知らない。
.18 2006 コミック comment0 trackback0

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