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スタニスワフ・レム 星からの帰還 


 先ごろ亡くなったポーランドの作家スタニスワフ・レムの、有名な「ソラリス」「砂漠の惑星」と並ぶ、SF作家としてのレムを代表する作品。

 ハル・ブレッグは宇宙飛行士。10年の宇宙探査から地球に帰還すると、地球上では127年が経過していた、と言う物語。
 まず冒頭、月から地球についたハルが見聞きする迷宮そのもののような地球の街の描写が圧巻である。読者もハルと一緒に迷宮に迷うようだ。
 この時代の人々はすべて「ベトリゼーション」という医学的処置を受けている。これは人々から攻撃性を取り除く作用をする。この処置が人類全体に施される事によって犯罪や戦争は人類社会からなくなったのだが、そのかわり人心から「冒険」や「競争」は消え去った。この結果、宇宙探査も行われなくなったし、社会の進歩は停滞してしまった。
 ここで描かれる未来社会はエフレーモフの「アンドロメダ星雲」に描かれる理想社会にちょっと似ていないだろうか。私は「アンドロメダ星雲」のレヴューでこんな理想社会は面白くないのでゴメンだと書いたが、ハルと、彼と一緒に地球に戻ってきたオラフも同じように思う。何もかも素晴らしいのだが、物足りないのだ。ハルはエリという恋人を見つけそこに安住しようとするが、オラフは地球に絶望してまた宇宙へ旅立とうとする。

 100年経ったとき世界がどのように変化しているか考えて見る。逆に100年前の人が今の世界に急に現れたら、我々にとって当たり前のこと…自動車やTVや携帯電話やインターネット…が、理解できないだろう。同じようにハルや読者はレアルやラストやウルダーやプラスト・スプレーが理解できないのだ。いや、理解できなくて当然だ。我々がTVや携帯電話を100年前の人物にうまく説明できるとも思えない。
 この、理解できないと言う事を描くとレムは天下一品である。
 そして物語の中で断片的に語られるハルとオラフの体験した驚異と危険に満ちた宇宙旅行の物語…この部分に読者は逆にノスタルジーを覚えてしまうのだ。

 これは「ソラリス」と同じように「未知との出会いの物語」であると考える事もできる。ソラリスの海であれ、レギス第3惑星の黒雲であれ、ベトリゼーション処置済みの人類であれ、程度の差こそあれ理解できないことに変わりはないのかも知れない。
 そして、ラスト。ここは違う解釈の人もいるようだが、私はハルは自分がすでに地球の一員であることを自覚し、この世界に生きていく事を決意して終わっていると考えている。
わが家のある南をさし、土を踏みしめながら山を降りはじめた」と言う結びがそれを示していると思う。

 それにしてもベトリゼーションと言う処置を全人類に施すと言うのはいったいどんな政府なのだろう。食事や宿泊などの基本的なサーヴィスがすべて無料なのを考えても、やはり共産主義ユートピアなのか?この本が書かれたのは1960年頃(出版が1961年)。共産主義が全盛だった時代である。
レムは共産主義の行く末に対する批判と疑問をも、この作品に滲ませていたのかもしれない。

 10数年ぶりに読んだ。わが家は湿気が多いせいかそろそろ本がヤバイ。もうじきばらばらになりそうだ。早いとこ復刊してもらわないと。「砂漠の惑星」が6月にハヤカワから復刊されるそうであるが、引き続き他のレム作品の復刊を期待している。
.13 2006 スタニスワフ・レム comment3 trackback0

comment

こんにちは、これも面白そうな作品ですね。
レムはなかなか難しそうなイメージがあってか、手を出しづらかったのですが。こちらのレビューを読ませていただいて、興味がつのってきました。

難しいけれど論理的なので、じっくり読んでいけば何とかわかりそうな作風かな、と思ってます。既読の『ソラリス』と『完全な真空』はどちらもすばらしい傑作でした。すごい本を読んでしまったというような、手応えがありました。
2006.05.13 11:54 | URL | nego10 #iKBgknCE [edit]
タルコフスキーについて、最近のブログ読ませていただきました。
ボリス・ストルガツキーやビクトル・ペレーヴィンについても興味があります。これからも、読ませてください。
2006.05.13 12:28 | URL | 轟俊 #U2GMMO2g [edit]
nego10さん、コメントありがとうございます。

こちらのブログを見てレムを読もうと思っていただいたのならとてもうれしいです。
記事にもあるようにもうじきハヤカワから復刊される「砂漠の惑星」や、なかなか入手は難しいかも知れませんがこの「星からの帰還」は、
SF作家としてのレムの代表作と言っていいでしょう。
もちろんレムの魅力はそれにとどまらないのですが。
読んだらぜひ感想を聞かせてください。

轟俊さんも、コメントありがとうございます。
 タルコフスキーについてはそれほど詳しいわけではありませんがストルガツキーについてはうるさいです。今も「世界終末50億年前」を読んでいます。
ペレーヴィンやブルガーコフもそのうち読もうと思っていますが本がなかなか手に入らないのが悩みの種ですね。
2006.05.13 21:06 | URL | piaa #- [edit]

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