スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

再読 アルト・ハイデルベルグ


 今年最後の再読はなにか独墺系から一冊、と思って一度シュテフターを読みだしたんだけど、あまりに濃密な自然描写がピンと来なかったのでもっと軽いのにしようとこれを引っ張り出してきた。
 ドイツの作家マイヤー・フェルスターの「アルト・ハイデルベルグ」である。一昔前までは戯曲版がよく舞台でも取り上げられていたが、今ではすっかり忘れられた作品になってしまった。

 1900年頃に書かれて芝居で大当たりをとったこの作家の唯一の成功作で、青春の輝きと痛みを描いた愛すべき作品なのだが、小説としては深みに欠けていて、三文小説といわれても仕方がない。今で言えばケータイ小説みたいなありきたりな恋愛小説というところだろうか。

 ザクセンのカールブルグ公国の公子カール・ハインリヒがハイデルベルグ大学に留学、普通の大学生として学生団にも参加し、たくさんの友人とケイティという恋人を得るのだが、わずか3か月後、伯父である大公急病の報がもたらされて急きょ帰国する。そのまま大公は逝去、カール・ハインリヒは伯父の跡を継いで大公になることになり、ハイデルベルグに戻ることなどできなくなってしまう。
 二年後、結婚を間近に控え大公として欝々と過ごすカール・ハインリヒのもとに、ハイデルベルグ時代に学生団の小使いのような仕事をしていた老人ケラーマンが訪ねてきた。ハイデルベルグの様子を聞いたカール・ハインリヒはいてもたってもいられなくなり、急遽ハイデルベルグを訪問することに。そこで学生団のみんなに再会するが、皆はもはや大公として雲の上の存在になったカール・ハインリヒによそよそしい。ケーティだけはあの日愛したままだったが、身分違いの愛が実るはずもない。お互いへの愛を心に刻み付けて二人は別れていく。

 …とストーリーを書き出してもこれはやっぱり三文小説なのだと言わざるを得ない。とは言え、単純なストーリーでも小説として説得力があれば傑作足りうるだろう。この作品の小説としての弱点は、カール・ハインリヒが学生として自由を満喫する部分がほとんど描かれていないという点だと思う。これがないので、カール・ハインリヒのハイデルベルグへの強烈な思いが今一つ響かない。
 当時の読者には当たり前なので詳しく書く必要がなかったのかもしれないが、19世紀末から20世紀初頭のドイツの学生生活をもっと詳しく描写していてくれたら、文学作品にとどまらない資料的な価値があったかもしれない。
 副筋として用意してあるカール・ハインリヒの教師であるユットナー博士についての部分も中途半端で、作者はこの老人(といっても今の私なんかよりはるかに若いが)と青年を対比させて青春の輝きのはかなさを浮き彫りにさせる効果を狙ったのだろうが、うまくいっているとは言いがたい。

 そんな中途半端な作品なのだけど、読んでると何とも言えない気持ちにさせる作品だ。誰でも学生時代住んだあの町に舞い戻ってあの日の友人たちや、あの日好きだったあの子に会ってみたい、と思うこともあるだろうから。

 そこでカール・ハインリヒはその後どんな人生を過ごしたのか、と気になった。カール・ハインリヒの国はカールブルグとされているが、実際にザクセンにあったのは「コーブルグ公国」。ちょうどこの作品が書かれたころ、1900年にカール・エドゥアルドが公位を継承している。カール・エドゥアルドはこのときまだ16歳だったし、ハイデルベルグ大学に学んだこともないのでカール・ハインリヒの直接のモデルというわけではないのだが、彼の人生はちょっと興味深いので書き出してみると、1918年にワイマール憲法にもとづき公国制がなくなり廃位(日本でいう廃藩置県だ)。その後ロシア革命を見て共産主義に対して恐れを抱き、その反動から右翼的な思想に走り、ナチ党に入党。ナチスによる身体障害者の殺害やユダヤ人虐殺に関わったとも言われている。第二次大戦後はナチの協力者として悲惨な晩年を送ったということだ。1954年没。

 もしカール・ハインリヒがこんな人生を送ってたら、オーストリア人であるケーティはどんな思いで彼のニュースに触れたのだろう。
時の流れというやつは残酷だ。それは誰にとってもそうなんだけど。
.19 2015 ドイツ文学 comment0 trackback(-)

comment

post comment

  • URL
  • comment

  • password
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

piaa

  • Author:piaa
  • Livedoorへ移転しましたので、そちらでお願いします。

    こちらのブログへのコメントには返信できません。

ブログナビ

P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2015年12月
  ├ カテゴリー
  |  └ ドイツ文学
  └ 再読 アルト・ハイデルベルグ

カレンダー

03 | 2017/03 | 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

月別アーカイブ

カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。