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Paul Winter / Callings


 ブログをやめてしまうまでにはこの素晴らしい音楽について一度は記事にしておかないといけない、と常々思いながら、思い起こせば結局10年もこの作品についての記事を書かずにきたわけだ。
 それはこの素晴らしい作品をみんなに知ってほしい気持ちと、全く正反対にこの作品のことを誰にも知られたくないという気持ちが私の中でせめぎあってきたからだ。今でもそのふたつの相反する気持ちに変わりはない。だけど、既にこのCDが廃盤になって久しい今、やはり紹介しておこうと思う。

 これはサックス奏者ポール・ウィンターが、1980年に発表した二枚組アルバム。自身のグループ「ポール・ウィンター・コンソート」の仲間たちとともに、クジラやイルカなど海に住む動物たちの声をモティーフにしてインプロヴィゼーションを繰り広げた極めて独特な作品である。
 私がこの作品に触れたのはオリジナルのLPの発売から7年後の1987年、CD化されて日本盤が発売された時だ。上の写真はその時の日本盤オリジナルのジャケット写真。当時よく読んでいたジャズ雑誌で紹介されていて、いったいこのジャケットの中のCDからどんな音楽が流れてくるのかとても興味が湧いた。それで買った。CDならぎりぎり一枚に収まる演奏時間なのだが、CDも二枚組で、5500円もした。

 1曲目『Lullaby From The Great Mother Whale For The Baby Seal Pups』。『大きなお母さん鯨がアザラシの赤ちゃんに捧げる子守唄』という邦題がついている。海の蒼い深みを思わせる混沌とした響きの中から、ザトウクジラの声が聞こえてくる。それは短いセンテンスを繰り返す単純な、哀愁を帯びたメロディーだ。このメロディーをポール・ウィンターと仲間たちは子守唄と捉えて、優しいが悲しみの陰のある美しい音楽へと展開していく。その心地よさは、母の胎内にいた頃の記憶が呼び起こされるような錯覚を覚えるほどである。5分にも満たない短い音楽だが、これで一気に惹き込まれると、次の『Magdalena』ではアシカの声を、『Love Swim』ではバンドウイルカの声をというように様々な海の動物達の声をモティーフにして、音楽が紡がれていく。
 一枚目のラストに収められているのが『Blue's Cathedral』という曲で、これはBlue Whale(シロナガスクジラ)の歌をモティーフにした作品で、途方も無い重低音で歌うシロナガスクジラのメロディーがなにやら宗教的な響きを作り出していくのだが、ポール・ウィンターたちはこのクジラの歌が宗教とは全く関係のない、ただの繁殖のために相手を呼び交わすための歌でしかないことも理解している。この作品が本当に素晴らしいのはここなのだ。動物たちを擬人化して自分たちの世界に当てはめたわけではなく、ありのままの彼らの声から自分たちの音楽を引き出していて、それは彼らの「文化」と我々の「文化」のどちらも尊重しているのだ。
 
 どこかネットで読んだ話だが、ある人(この人は捕鯨推進派)が海外でホエール・ウォッチングに参加したのだが、クジラに遭遇した時ガイドの女性が、この神聖な動物と出会えたことを喜びましょうみたいなことを言うので憤慨した、というようなことを書いていた。この人は普段『クジラを食べるのは日本の食文化』などと主張しているくせに『クジラを神聖な動物と考える文化』を理解するつもりがないのだ。異文化を理解できない者が意見が違うというだけで異文化を批判する。そんなので自分の意見が通るはずがないではないか。考えの足りない人はいつもそうだ。
 ポール・ウィンターというミュージシャンはそんな人々とはレヴェルが違う。もちろんミュージシャンとしての感覚の良さは素晴らしいと思うが、それだけでなく、捕鯨の矛盾を飲み込んだうえで、感情的な保護団体とも違う、ニュートラルで単純な生きるものへの共感や愛みたいなものが感じられ、音を聞いただけでそれがストレートに伝わってくる。

 シャチの歌やホッキョクグマとチェロのデュエットを、さらに『Arctic Jungle』の大騒ぎの中を進んできた私達リスナーは最後の『Seal Eyes』という曲の中でそのタイトル通りのアザラシのつぶらな瞳の中へと溶けこんでいく。そして最後にお母さんクジラの子守唄のメロディーが遠くから聞こえてくる。
 今時はBBCEirthやなんかで素晴らしい映像のネイチャードキュメンタリーを観ることができるが、これは音楽だけでありながら世界の美しさ(と同時に厳しさも)を映像よりも強く訴えてくる。
 ぜひ聴いてほしい。心あるあなたに、世界が美しいことに気づいているあなたに。
 そして聴いてほしくない。自分の意見は声高に叫ぶくせに、人の話に耳を傾けないあなたに。
.02 2015 ジャズ comment0 trackback(-)

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