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ガルシア・マルケス ある遭難者の物語


 ガルシア・マルケスの作品はほとんど読んだのだが、その中で唯一見つからないままになっていて最後に残った一冊。先日書店で偶然見つけて購入した。完璧な新品・美本なのだが奥付は1998年4月発行となっている。ということはこの本、17年もどこかの倉庫で眠ってたのだろうか。その割には新刊みたいに状態がいいのだが。

 コロンビア海軍の駆逐艦、カルダス号の乗組員ルイス・アレハンドロ・ベラスコは、時化に遭遇した駆逐艦から他の乗組員数人と一緒に海上に放り出された。他の乗組員は皆溺死したがルイスだけは筏に乗り移ることができて生き延びたが、食料も水もない状況で漂流する事になる。これはルイスが語った生還を遂げるまでの10日間の漂流の顛末を、記者ガルシア・マルケスが再構成した作品である。執筆は1955年頃。

 要するに物語としては『虎の出ない「ライフ・オブ・パイ」』のような話で、一見するとあの作品にあった寓話性を剥ぎとったリアルな物語のように見える。確かにガルシア・マルケスの作品としては、南米文学を語るとき呪文のようについてまわる、いわゆる「マジック・リアリズム」からもっとも遠い作品であるとは言えるかもしれない。
 しかし、ここに書かれた物語は、ルイスが語ったもの「そのもの」ではない。ガルシア・マルケスという独自のフィルターによって強烈にバイアスのかかったものだ。なので厳密な意味でこれは、ちょうど石牟礼道子の「苦海浄土」がそうであるように、「ルポルタージュ」ではない。しかし、「苦海浄土」ほどフィクションでもないのではないだろうか。そのルポルタージュと創作の微妙な加減が、後に書かれる最高傑作「予告された殺人の記録」に繋がっていることは間違いないだろう。

 海の上を漂いながら、カモメを取って食べようとしたり、サメに怯えたり、死にたくなったり生きていたかったり。よく考えて見ればこの作品に描かれた情景って絵的にはクソ面白くもないものだ。それを、小説としてはかなり短いとはいえ120ページを越す分量を、息もつかせないような筆致で読ませるのはさすが20世紀最高の作家、ガルシア・マルケスだと思う。
 ああしかし、これでいよいよガルシア・マルケスの作品をコンプリートしてしまった。このブログを始めてからずいぶんいろんな人の作品を読んだが、これほど傑作率の高い作家は他にいないと思う。ル・クレジオあたりで痛感する翻訳者の違いによるブレ(もともとの作風に合っていない翻訳者の訳で読むと全然面白くないようなこと)も少なく、これは元々の物語の強さが翻訳という壁を乗り越えてしまうのだろうと思う。
 いやー、ガルシア・マルケスすごかったな。死ぬまでには一度全作品再読したい。
.05 2015 中・南米文学 comment0 trackback(-)

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