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再読『ストーカー』


 ストルガツキーの『ストーカー』を再読。ちなみにこの本、AMAZONで見たら以前のタルコフスキーの映画ベースのカヴァーから新しいデザインに変更になっている。まさかレムの作品みたいにまた「改訳」されたのではと焦ったがそういうわけではないようだ。
 タルコフスキーの映画はあまり好きではないのだけど、このイラストもなんだか説明的でイマイチな気がするなあ。

 いやー、何度読んでもこれは素晴らしい作品だ。異常な事態に晒された街で必死に生きる人々を描いていて、SFとしてこれほど泥臭い作品は他に思い浮かばない。その泥臭さゆえに登場人物に親近感を感じるリアルな物語である。作品発表後に起きたウクライナのチェルノブイリ原発事故後の状況を予言した作品としても有名だが、そういう現実と重ねあわせて語られるのも、そういう『人間』を描いたリアルな物語であるからこそだろうと思う。

 さて今回再読にあたって、レムが「文学エッセイ」の中でこの作品に関して述べていたものを併せて読んでみた。
 レムも書いているのだが、この作品の素晴らしさは「ゾーン」のあるハーモントに住むレッドらの目線に視点を固定し、ミクロの視点に徹していることだ。この作品は「来訪」そのものについて詳しく描くつもりはないし、「来訪」に対する政府のリアクションなどには目もくれない。さらに、作者の意図もあって読者に提供される情報が限られている。そこが「SF」としてのこの作品の真骨頂である。作品の中で言えば第3章でのワレンチン・ピルマン博士とディック・ヌーナンの会話にこの作品の「SF」としての面白さが詰まっている。

 そんな読者が知らされない情報の中でレムが問題にしているのは他に5箇所あると言われている「ゾーン」がどこにあるのかということだ。もしハーモントの他に人口密集地近くに来訪が起こっていたとするなら、もはやそれは偶然とはいえず、来訪者は意図的に「来訪」したと言える。まあこれはピルマンの口からもなにも語られないので、他は人口密集地には遠い地域だったと考えていいだろう。
 レムはさらに「ゾーン」が自ら一定の広さ以上には広がらない性質があると指摘している。その実例として「熱い綿毛」が風まかせに飛んで行くのに一定の地域から外には繁殖していない事を挙げているが、よく読むと「熱い綿毛」については記載が少なく、「飛んでいった先で繁殖する」とはどこにも書いてないのである。単に高熱を発する綿毛が飛んで行くだけで、一定の時間で熱がなくなると考えると一定の地域から外には影響がないということもあるのではないか。他の「ブツ」には基本自分で移動していくものはないので「自ら一定の広さ以上には広がらない性質がある」とは言い切れないのではないだろうか。

 まあそういったことはともかくとして、レムの言うとおり『「来訪者」は来訪の意図を持って「贈り物」を持って地球にやってきたが、事故で「贈り物」をばらまく結果になった』と考えても何の不思議もない。レムは作品中で「破損した贈り物」という可能性について言及していないのが残念と書いているが、普通に考えて酒の席での話でそんな仮説が出てこなかったからといってピルマンほどの人物がその可能性を考えていなかったとまでは判断できないだろうと思う。
 ピルマンもその可能性は考えていたと思う(実際それに近い仮説も述べている)のだが、要は来訪の起こった「意図」や「原因」にピルマン自身さほど興味がないのだと思う。実際にこの状況に置かれたら、そんなことよりも実際に来訪者が残していった「ブツ」やそれに伴う異常現象の方に興味を持たざるを得ない。それは当然だと思う。
レムは他にも鋭い指摘を幾つもしているのだが、ラストでレッドが「黄金の玉」に迫るシーンが昔話でよくある宝物に迫る主人公のステレオタイプに嵌っている点を批判している。SFはどんなものにも似ていてはいけないのだそうだ。そこまで気にするか? そういう柔軟さに欠ける点がレムの欠点だ(良い点でもあるのだが)。
 このエッセイを通じて図らずもレムとストルガツキーの考え方の違いがはっきり出たなあと思う。椅子に座って考えるレムと、地面に這いつくばって考えるストルガツキーの違いだ。それを踏まえてストルガツキーが「ソラリス」を書いたら、レムが「ストーカー」を書いたらどんな作品になっただろうかと考えると面白い。

 さて、なんだかレムのストルガツキー論についてばかり書いてしまったので、今回再読して気になったことを。
 まず作中の時間経過だが、冒頭のワレンチン・ピルマン博士のインタビューでは来訪が起こったのは13年前とされている。なので続く第1章(レッド・シュハルト23歳)の部分も来訪から13年後だと思ってしまうのだが、レッドが28歳の第2章(第1章から5年後)に出てくるジナ・バーブリッジが20歳とはっきり書いてある。ジナは「禿鷹」バーブリッジが「黄金の玉(願望機)」に願って生まれた娘なのだから当然来訪後に生まれたはず。ということは第1章の時点で来訪から15年以上が経過していたということになる。そう考えると第4章は第2章からさらに3年経っているので、来訪から25年ほど経過していることになる。
 それほど時間が経過してさずがに「ゾーン」のブツはネタ切れらしいのだが、第1章の時点で国際地球外文化研究所(地外研)が防護服やオーバーシューズを装備してブツを効率的に運び出せたはずなのにそうなっていないのは、やはりキリールの死が原因で地外研の活動が成約を受けたからだろうか。しかし「ゾーンへもロボットが出かけていく」という記述もある。思ったよりもゾーンの「ブツ」のリソースは膨大だったということだろうか。

 実際にこういう事態が起こったらどうなるだろう。チェルノブイリやフクシマのように政府が立ち入りを規制するだろう。だがストーカーのように中に忍び込む者は出てくるだろう。ブツが金になるならなおさらだ。実際フクシマでは立入禁止地域の家や事務所、コンビニなどに空き巣が入った事例が幾つもあるらしい。盗むものがもともと人のものかそうでないかの違いだけでこの作品のストーカーと同じようなものだ。まあその犯人たちを主人公にしても面白い物語にはならないけど、この作品でもブツを運び出せなかったストーカーたちがゾーンの中の家や店から金目の物を持ち出してくるようなことがあったらリアルさが増したかもしれない。

 今回「ブツ」一覧も作っています。興味ある方はどうぞ。
.12 2015 ストルガツキー comment0 trackback(-)

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