スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

フランク・オコナー短篇集


 フランク・オコナーはアイルランドの作家。日本では2006年に村上春樹がこの作家の名前を冠した賞(フランク・オコナー国際短篇賞)を受賞したことでわずかに知られている程度で作品もあまり紹介されていない。
 私も全く知らない作家だったのだが書店で見かけてなんとなく気になって読んでみた。

 収録されている作品は11作。いずれもかなりレベルの高い作品で、「ぼくのエディプス・コンプレックス」「はじめての懺悔」といった少年を主人公にした可愛らしいものからこの作家の代表作といえる「国賓」のように戦争の悲惨を独特の視点で描くものまで様々な作品がラインナップされている。

 巻末の、翻訳者による「解説」に各作品について詳細な解説がなされているのでそれぞれの作品について今さら私が述べる必要もないだろうと思うので、簡潔に全体での印象を書かせてもらえば、とても人間に肯定的な作家だなあということだ。どの作品も人間を至近距離から描いたもので、よく見かける私小説的なものでも、上から俯瞰するような視点の作品でもない。そしてどれを読んでも人間の善意を信じて疑わない信念のようなものを感じる。

 この作品集の中ではアイルランドと英国の闘争の歴史から来た悲惨な話である「国賓」や「ジャンボの妻」でもその印象は変わらない。ここでは個人の善意が、国とか組織とかの大きなシステムの前に屈する姿が描かれているわけで、そんな悲惨の中にも作家の「人間を信じる心」は決して折れていない。だからこそ「国賓」の結びは「そのあとの人生は、僕にとって全く違うものになってしまった」となっているのだ。
 父と叔父の長年に渡る確執を描いた「ルーシー家の人々」もそうで、この作品に和解はない。それが現実なのだ。だからといって頑迷な叔父を断罪するわけではない。頑固でひねくれ者の叔父を、それでも愛しているチャーリーを通して、家族であっても、いや家族だからこそままならない愛憎劇を柔らかい眼差しで見つめている。だからこそ和解のないまま放り出したような終わり方がちょっと衝撃的。だがよく考えるとこれは身近によくある話だなあとも思う。

 他で私の印象に残ったものは「はじめての懺悔」、「花輪」「マイケルの妻」「あるところに寂しげな家がありまして」あたりだろうか。アリステア・マクラウドあたりが好きな人はぜひ。
.06 2015 英文学 comment0 trackback(-)

comment

post comment

  • URL
  • comment

  • password
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

piaa

  • Author:piaa
  • Livedoorへ移転しましたので、そちらでお願いします。
    http://blog.livedoor.jp/piaa0117/

    こちらのブログへのコメントはLivedoorに転載しますが、定期的にチェックしないので相当遅くなることもあります。

ブログナビ

P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2015年06月
  ├ カテゴリー
  |  └ 英文学
  └ フランク・オコナー短篇集

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ

カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。