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再読 ブッシュ・オブ・ゴースツ


 今回の再読企画に当たってチュツオーラからなにか一冊と考え、普通だったらデビュー作にして代表作の「やし酒飲み」を選ぶところなんだろうけど個人的に先に読んだので印象が強かったこちらを読んでみた。

 この作品のキーワードはタイトルにもある「bush」と「ghost」だ。
 「bush」は辞書によると「藪」とか「茂み」の意味で、なんとなく背の低い低い木や草の茂みの印象がある。昔「ブッシュマン」というアフリカ原住民の男性が主人公の映画があったけど、あれが「草原の人」の印象だったからそう思うのかも知れない。しかしここでの「bush」は要するに鬱蒼と生い茂り、陽の光も届かないようなジャングルを指している。そんなジャングルの中には人知を超える何者かが棲んでいて、近づくものを引き込んでしまうとナイジェリアの人々は信じているのだ。
 「ghost」も普通なら死んだ人間の霊である「幽霊」の意味なのだが、ここではその「bush」に棲む何者かを指していて、これは別にもともと人間だった霊とかでは基本なく、西洋風に言えば精霊とか妖精とかの感じなんだろうけど、ここで出てくる「ghost」(「幽鬼」と訳されている)はもっと人間的で醜く利己的な連中である。

 7歳で戦争に巻き込まれ、義母たちに置き去りにされた「私」は敵の手を逃れて幽鬼たちの住むブッシュに入り込んでしまう。そこで様々な幽鬼たちに腕を奪われたり動物にされたりと虐待されながら放浪の旅を続けるそのうちには2度も結婚したり、更には死んだ従兄が幽鬼の町でキリスト教を布教して大物になっていたりする。死人がキリスト教を幽鬼たちに布教して病院を作ったりとか相当矛盾しているような気もするんだが、とにかくかなりハチャメチャな展開である。
 そうしてある日、主人公はとうとう人間世界に戻ってくるのだが、そこでいきなり奴隷として捕まってしまい、売られてしまう。たまたま売られた先が生き別れた兄だったから良かったようなものの下手をするとそこで一巻の終わりという可能性もあったわけだ。これでは「ブッシュ」の中も外も大した違いはない。
 これが意味するところは、ただひとつ。ブッシュの中で主人公を虐待した「幽鬼」たちとは、実は「ブッシュ」の「幽鬼」たちになぞらえただけの普通の人間のことなのだ。

 最後の一文に、「これは憎しみがどういう結果をもたらすかという話なのです」とある。この一文で、これは決して民話の寄せ集めではなく、現実にあったこと、起こり得たことの寓話なのだ、と作者は主張しているのだと思う。この本が書かれた1950年代、世界は憎しみに溢れていた。白人によるアフリカ人への差別だけではなく、アフリカ人同士でも部族間で抗争して殺しあったりすることがまだ普通にあったか、そうでなくてもつい最近までそういうことが普通にあって作者の記憶に新しいものだったのだろう。そしてそんな中で辛酸を嘗めた子供たちがたくさんいたのだろう。
 この作品が書かれて70年以上の月日が流れたが、世界はいまだに憎しみに溢れかえっている。
 作者は作品を通じて、憎しみの心を持つあなたはもはや人は呼べない。「幽鬼」と同じようなものなのですよ、と訴えているのだ。

 ちなみにこの作品の原題と全く同じタイトル「 My Life In The Bush of Ghosts」というブライアン・イーノの音楽作品がある。ちょっと興味があったので聴いてみたが、民族音楽をサンプリングで再現したような不思議な音楽で、発表当時(1981年)はさぞ最先端な音楽だったのだろうけど、なんだかイマイチ良さがよくわからなかった。
.10 2015 アジア・アフリカ文学 comment0 trackback(-)

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