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フォークナー サンクチュアリ


 フォークナーをまだ読んでいなかった。いや随分若い頃に実は何冊か読んでいるがすっかり忘れてしまった。このブログを始めたあとにも新潮文庫の「短編集」を読もうとしたのだが、波長が合わなくて途中でやめた。それ以来敬遠気味だたのだが、今回思い切って「サンクチュアリ」を読んでみた。

 大して長くもないのに、非常に読みにくい小説だ。書かれ方自体がかなり曖昧で誰が何をしてるのか掴めない。特にテンプルの身の回りで何が起こっているかなかなか把握できず読んでいてイライラしてくる。書かれ方ばかりではなく、書かれている事自体も読んでてかなりイライラが募るような内容で、登場人物は弁護士のホレス・ベンボウ以外はギャングのポパイはもちろん、ベンボウの妹やスノープスのようなベンボウの周辺の人物、テンプルの連れの男ガヴァン、それに被害者のひとりであるテンプルも含めてみんな人間のクズみたいな連中ばかりだ。
 しかし、それがこの時代のアメリカの田舎町のリアルだったのだろう。そう考えるとすごく恐ろしい小説だ。

 小説の構造もかなり変わっていて、前半はテンプルが廃屋に半ば監禁状態にされるところから、彼女をかばおうとしたトミーがギャングの男ポパイに殺害されるまでがかなり婉曲な描写で描かれ、後半はトミー殺害の疑いをかけられたグッドウインを助けようとするベンボウ中心の物語になる。ベンボウはグッドウインの無実を証明しようとするが、周囲の無理解と、ポパイを恐れて誰も証言しようとしない事から窮地に追いやられていく。結局グッドウインを救うことはできず彼は殺されてしまうのだが、最後の方に来て物語はベンボウのもとを離れ、ポパイの元に。同じ頃ポパイは全く別の殺人の容疑で捕まっていた。実はポパイはこの件には全く無関係だった。その時には別な街で別の殺人を行っていたからだ。それでもポパイは有罪とされ、死刑判決が下る。そしてポパイは最後まで悪党として人生を終えるのだった。

 要するにこの作品では、この時代(1920年頃)のアメリカの『正義』がいかに雑なものだったかをリアリズムで描くことで糾弾しながら、そんな中でも尊厳を失わない人間を描こうとした、と言えるのだろう。生贄のような最後を遂げるグッドウィンと彼に寄り添うその妻はあたかも聖家族の様相を見せ、ただの悪党としての無意味なポパイの死と対極をなしている。
 しかし、そのポパイの死がラストに置かれ、その前では裁判に敗れたベンボウが一度は捨てようとした家庭に戻っていってしまう。そのため作品全体の印象は全くペシミスティックなものになる。

 ノーベル賞作家でもあるわけで、フォークナーが重要なアメリカの作家であることに間違いはないのだが、読んで楽しい作家では全くない。内容もそうだし、奥歯にものが挟まったような言い回しが頻発するのも…
 やっぱり私はこの作家、合わないようである。
.29 2015 北米文学 comment2 trackback(-)

comment

フォークナーの作品に挑戦したのですね、お疲れ様です。

フォークナーは私の好きな作家の一人です。フォークナーは「何を」「どの様に」表現するかを最も意識した作家であると思うからです。「響きと怒り」や「アブサロム、アブサロム!」などを読めば分かると思いますが、この作家は表現する内容によって大胆に文章の表現方法・文体を変えています。そこに私は作家としての度胸と心強さを感じるのです。

しかし、私にとって「サンクチュアリ」は、内容は過激なのに文章が曖昧化のベールに覆われているので、惜しい作品であると思います。ただ、piaaさんの意見である、困難な状況下で尊厳を失わない人間を描こうとした、という要点には同感です。これはフォークナーがほとんどの作品で描いている主要なテーマであると私は思っています(それは彼のノーベル賞受賞式のスピーチ「私は人間は耐えるだけでなく、勝つことができると信じています」という内容にも表れています)。

piaaさんにとってフォークナーは合わないという事ですが、仮にまた挑戦する機会がありましたら「八月の光」という作品をおすすめします。この作品はこの作家が表現したい内容を他の作品より分かりやすく描き出していると私は思います(あくまでも主観的な意見であり、頁数も長いですが)。

以上、フォークナーが好きな一読者の意見でした。
2015.01.30 10:35 | URL | reclam #etwkwH06 [edit]
>内容は過激なのに文章が曖昧
そうそう、そうなんですよね。現代の感覚から言えば大して過激でもないんですが、当時としてはかなりきわどい内容だったのでしょうね。
一度完成したあとで大幅に書き直されているそうで、そのへんも描写があいまいになった一因かもしれません。

いずれにしてもフォークナーは現代アメリカ文学を語る上で外せない作家だと思います。トニ・モリスンなどはこの作家の影響をモロに受けていると思います。なので合う合わないは別にしてまたなにか読まないといけないとは思っています。

実はもともと「八月の光」を買うつもりだったのですが、近くの本屋さんにこっちしか置いてなくてこれを買ってきました。というわけで「八月の光」もそのうち読んでみたいとは思っています。
2015.01.30 17:58 | URL | piaa #- [edit]

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