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ザミャーチン われら


 ザミャーチンは1884年生まれのロシア=ソビエトの作家。この「われら」は1920年頃に書かれたこの作家の代表作で、共産主義の行く末を批判的に描いた内容から発禁処分を受け、ペレストロイカ後まで日の目を見なかったといういわくつきの作品である。

 共産主義が世界を統一し、世界は「単一国国家」となっている時代。宇宙船「インテグラル号」の設計技師であるD-503号は、ある日謎の女性I-330号と出会い惹かれてしまう。長年のパートナーであるO-90号との愛情をかなぐり捨てたD-503だったが、I-330の周辺には不穏な空気が漂っていた…

 とにかくここで描かれた『共産主義ユートピア』のディストピアぶりが衝撃的だ。人々は名前も持たず、外から丸見えのガラス張りの部屋で生活をして一切の秘密を持てない。ブラインドを下ろすのは政府に認められで性行為が行える「セックス・デー」の時だけ。性行為の相手は申請式で、そのためD-503はセックスのパートナーとして友人のR-13とO-90を共有している。労働や集会への参加も国が設けるスケジュールに従って義務付けられていて、違反行為が認められると有無を言わさず処刑される。「インテグラル号」のエンジン実験では10人の作業員が死亡したがその程度では事故扱いにもならず、責任者であるD-503の責任も全く問われない。
 そんな非人間的な社会の中で革命を画策するI-330たちにD-503は徐々に巻き込まれていく。

 この作品が書かれたのが1920年頃なので、ロシア革命(1917年)からソビエト連邦成立(1922年)の中間にあたる時期で、ロシア社会が共産主義の理想に向かって雪崩を打った頃である。ご存知のとおりロシアの共産主義はその誕生と同時に理想から大きく逸脱し、粛清による恐怖政治へと大きく舵を取っていくわけだが、ここではその「理想の」共産主義が人間の尊厳さえ奪っていく様を活写して鬼気迫る作品になっている。

 共産主義ユートピアを描いた作品として、昨年ウィリアム・モリスの「ユートピアだより」を読んだが、同じ共産主義社会を描きながら、そして書かれた時期も30年ほどしか違わないというのに、あの温湯的で平和な「ユートピアだより」とこのダークな「われら」のコントラストは一体なぜ生まれたのだろう。
 「ユートピアだより」に描かれた社会はいくつかの疑問点はあるものの、ある意味理想的なものだ。人間性は尊重され、人々は人生を楽しんでいる。「われら」にはそういう部分は全くない。
 それは実際に革命以後のロシア社会で人間性を無視したの共産主義の興り方を見知ったザチャーミンが、そのまま非人間的な共産主義が全世界を統一してしまった未来を考えたからであろう。
 そいいう「理想」と「実践」の大きな違い、それこそがこの星での「共産主義」の失敗なのだ。
 ロシア革命からソビエト連邦への「悪しき共産主義」への流れというのは、実は人類の最大の失敗なのかもしれない。浪費と金儲けに明け暮れる資本主義が世界の大勢として定着してしまったからだ。

 この作品をSFと捉えることもできるが、作者の意図はもちろんSFなどではない。これはロシア共産主義への批判の書なのだ。こんな社会でなくて本当によかった。でも今でもこれに近い生活を国民に強要している国が実際にあるのだから恐ろしい。しかし資本主義のままでは間違いなく人類は滅ぶとも思う。一体どうしたものだろうか。
.23 2014 東欧・ロシア文学 comment2 trackback(-)

comment

実は「銀河の破壊者」の方のお返事を見て「われら」を挙げようと思ったのですが、これも既読でしたか。ディストピア小説の代表作として「1984年」と共に有名ですが、もうひとつ「カロカイン -- 国家と密告の自白剤」が確か三大ディストピア小説と呼ばれているとか。もし興味があれば、読み比べてみてください。
2014.11.23 23:10 | URL | X^2 #CypyILE6 [edit]
ディストピア小説に特に興味があるわけではないのですが…
逆にモリスみたいなバリバリの共産主義者が「資本主義ディストピア小説」を書いていたら、それは現代の日本みたいに誰もが利益のことしか考えず、倫理観が希薄になってしまった社会を描いたのではないかと思ってしまいます。
2014.11.24 23:44 | URL | piaa #- [edit]

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