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梨木香歩 村田エフェンディ滞土録


 正直そろそろ読みたい本も枯渇してきたし、このブログも最近では誰も読んでる気配もないしもうやめちゃっていいかな~とも思う。実はここ2ヶ月ほどほとんど本を読んでなかった。これほど本から離れたのはこのブログを始めてからは初めて。
 でもまだ買ったまま読んでない本はある訳で、そんな一冊を手に取ってみた。
 これは梨木香歩の、傑作『家守奇譚』ともつながりがあるという作品で、かなり良いと聞いていたので期待して読んでみた。
 『家守奇譚』といえば昨年末に続編の『冬虫夏草』が出ている。これはいなくなった愛犬ゴローを探して主人公綿貫征四郎が旅に出るというもので、これまた前作同様の傑作なのだが、実はとっくに読んでしまいながらレヴュー記事を書いていない。
 なのでそっちのレヴュー記事を先に書こうかとも思ったのだが、なにせ読んだのが半年以上も前なので、もう一度読み直してみようかと思う。そちらはもうちょっと待ってもらうことにして、では「滞土録」のほうを。

 【以下ネタバレ有り注意】

 時は明治。政府の肝いりでトルコに留学した村田は、各国から集った下宿の仲間たちとともに楽しくも有意義な日々を送っていた…という感じの作品で、基本は青春小説と言えるのだが、やはり「家守奇譚」同様の怪異を盛り込み、「家守」の犬のゴローと同様の、いやひょっとするともっと重量な役回りとして友人ムハンマドが連れてきた鸚鵡が登場してくる。この鸚鵡が人語を発することで物語の要所要所でいい味を出しているのだが、ラストでは泣かされる。
 トルコで、友人として語り合ったムハンマドやオットー、それにディミトリスが、その後の世界の大きなうねりに飲み込まれて行く。その結果として日本に住む村田のもとにムハンマドの忘れ形見として鸚鵡が送られてくる。
 このラストの感動はちょっと言葉では言い表せない。

 MINMINは先月、英国での半年の留学から帰国した。
 彼女は英国でたくさんの友人を得て帰ってきた。スペイン、香港、フランス、ドイツ、ベルギー、チェコといった世界各国の若者たち。それにもちろん日本人もいる。短い間ではあったが、友人として過ごしたことに変わりはない。
 こっちの大学にも韓国や台湾、ベトナムやネパールといった国々からの留学生とも仲良しの子がいる。
 もし世界の情勢がこれから悪くなって、村田の友人たちのように戦火に巻き込まれたら、MINMINも村田のような思いをすることになるだろう。
 そんなふうになってほしくはないが、こればかりは国と国の事だからどうしようもない。
 ラストの村田の「国とは一体何なのだろう」という問いかけが胸を打つ。今私たちのまわりには、国がなによりも大事だと叫ぶ人たちがなんと多いことだろう。国などという枠組みよりもはるかに大事な何かがいくらでもあるのに。

 帰国した日に彼女が言った言葉と、村田が帰ってきて綿貫の家で高堂の亡霊に言った言葉が見事にシンクロする。
 「全部夢だったように思える」 と。

 外国と日本では世界があまりにも違うので、そう思えるもの仕方ないのだろう。
 でも、人生は夢ではない。だからこそ面白くもあり、辛くもあるのだ。
 と言いながらもこの歳になってみれば、青春時代そのものが夢だったようさえ思えるのだが。
.28 2014 日本文学 comment6 trackback(-)

comment

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014.10.29 22:41 | | # [edit]
つばめさん、コメントありがとうございます。
こういうコメントは励みになります。もうちょっと頑張ってみようかな、と思います。

つばめさんは私の紹介した本でどれがお好みでしたか?
逆に何かおすすめの本はありますか?
教えていただけたらとても嬉しいです。

何年も前の記事だったとしても、そういう議論ができるのがブログのいいところなのですが、
最近はブログ人口が減ったのでしょうか、
以前に比べてリアクションが激減してとても寂しく思っています。
2014.10.30 22:49 | URL | piaa #- [edit]
piaaさん
blog続けて下さるそうで嬉しいです。
こちらで紹介された本、本当に結構読んでいます。
例えばこの大本の記事の本の前作、「家守奇譚」もそうですし、同じ梨木香歩さんの「春になったら苺を摘みに」地味ながら忘れ難い作品でした。
近藤史恵さんの「サクリファイス」もいつもの自分の選択範囲にはない本でしたが、読み終わった後、他の作品も読みたくなってしまいました。
だんだん食わず嫌いが多くなってきたような気がする今日この頃なので、こういうサプライズはありがたいことです。
さて、改まってお薦めです!という程の本が正直なところあまり思いつきませんが、最近読んだ本で2冊を。
ウェンディ・ムーア
「理想の花嫁と結婚する方法 児童文学作家 トマス・ディの奇妙な実験」
今巷で幼い女の子を拐って自分の思い通りに育てようなどという犯罪が頻発していますが、これを実際に18世紀の英国でやってしまった実在の(しかも社会的には名士として有名であった)人物とそれによって迷惑を被った女性の生涯を綿密な取材をもとに追っていったノンフィクションです。
果たしてトマス・ディの実験は成功したのか?
結論は当然失敗するんですけど、
piaaさんもお嬢様がいらっしゃるので、小さいときから育てれば自分の理想の女性になるはずだなどという仮説が大いなるカン違いであることはすぐにお分かりになりますよね?
あとSFでは貴志祐介の「新世界より」
こちらはアニメと同時平行で読みました。
見終わった後、ドヴォルザークの新世界「家路」が頭の中でリフレインします。

それでは長くなりましたが、このへんで。


2014.11.01 02:03 | URL | つばめ #7VEIevas [edit]
つばめさん、再度のコメントありがとうございます。

実は「家守綺譚」に関しては私もブログを通じて仲良くさせていただいている方から紹介していただいた本なのです。逆に私の記事をきっかけに読んでみたという方もいて、そうなると迂闊なことは書けないなと(笑)。
どんどん発言が流れて行ってしまうツィッターと違い、そういう情報交換ができるのは記事がアーカイブとして残るブログのいいところではないかと思っています。

「理想の花嫁と結婚する方法」は今なかなかタイムリーな題材ですね。興味を惹かれます。
「小さいときから育てれば自分の理想の女性になるはずだなどという仮説が大いなるカン違い」言えてます。子供には持って生まれた性格があって、それは教育ごときでは揺るぎません。
ただこういった本ってなんでこんなに高価なのか全く理解できません。
大体最近本は高すぎます。図書館へGO!ですね。
2014.11.01 22:49 | URL | piaa #- [edit]
私にとっても費用とスペースの問題はかなり悩ましい問題でした。
しかし一年ほど前、今は借りたい本がネットで予約出来て、もよりの市民センターで受け取れると知り、今まで諦めていた重くてかさ張るハードカバーにもチャレンジ出来るようになりました。
お財布にもどんだけ優しいかしれません。
まさに「ありがとう!図書館!」です(笑)

という訳で、常に予約出来る本を探しているのでこれからもpiaaさんのお薦めの本、もしくはお薦めとは言いたくないけど話のネタにどうぞみたいな本がありましたら、是非ご紹介いただければ嬉しいです。
2014.11.02 22:00 | URL | つばめ #7VEIevas [edit]
高い本をタダで読めちゃう図書館ってほんとに読者としてはありがたいんですけど、2週間で読んでしまわなけりゃというのがちょっとしたプレッシャーですよね。大抵の本は読むのに2週間もかからないですけど。

私のオススメ本は「P&Mアウォード」のカテゴリに大体まとまってます。
それ以外ではガルシア・マルケス「予告された殺人の記録」、レム「ソラリスの陽のもとに」「砂漠の惑星」、ストルガツキー「ストーカー」、福永武彦「死の島」あたりでしょうか。
まあ基本海外文学メインなので入手困難なものや敷居の高いものもあるかもしれません。
2014.11.03 23:19 | URL | piaa #- [edit]

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