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つばな バベルの図書館


 すっかりコミック嫌いになった私だが、先日読んだ『春風のスネグラチカ』は一巻完結のシンプルでいい作品だった。これを出版しているのが太田出版という出版社なのだが、ここのコミック作品はほかにも単巻で完結のものが結構あり、長いマンガが嫌いな私にも読みやすそうなので、ここの本の中でなにかめぼしいものないかなと思い、これを手にとった。
 もちろんタイトルはボルヘスのアレだ。

 中学生の渡瀬くんは、実は一風変わった超能力者で、書かれた文字なら遠くからでも読み取ることができる。ある日作文の課題で、たまたま透視した相馬さんの作文が気に入った渡瀬くんは彼女の作文をまるごと書き写してしまい、二人で先生に呼び出しを食ってしまう。渡瀬くんの超能力など知らない相馬さんはこの不思議な「偶然」を「奇跡」だと思い込み、それが自分の信じる、この薄汚れた現世とは違う他の世界(彼女は「天使の世界」だと思っている)への入口を探すきっかけになると考える。

 はっきり言って絵は下手、というか非常に素朴な絵柄で、一見それこそ漫画家志望の中学生の描いたもののように見える。ところがここで描かれた内容はとてもダークで重い。まずそのギャップが強烈な印象になる。どんどん狂気に侵されていく相馬さんの描写がすごいのだが、彼女の狂気が頂点に達したところでいきなり物語が巻き戻って、もうひとつの、ありえたかもしれないストーリーが展開する。この終盤の超展開はかなり強烈なのだが、「なぜそうなったのか」は全く説明されない。おそらく作者もそこまでは考えていないのだろう。だからこそラストはある意味衝撃的だ。

【以下ネタバレ注意】

 メインストーリーでは狂気に侵された相馬さんは渡瀬くんから能力のことを聞かされて絶望し、渡瀬くんこそ天使の世界への道へ進むことを邪魔する悪魔だと思いこみ、カッターナイフで刺してしまう。一方、もうひとつのストーリーでは卒業式の日に校庭の裏でキスをする二人。ここでは「刺す」という行為と「キス」という行為が、同じく別の世界への『扉』なのだ。
 その複雑な流れを、この作家はこの素朴な絵柄のままで描ききってしまう。この「刺す」と「キス」の二つのシーンで描かれた相馬さんの表情には、絵柄を超越したセクシーさがあり、読む者をドキリとさせる。

 200ページ程度のコミック作品で、ここまでの世界を構築してしまうというのはすごい。もちろんそのためにはほとんどサブキャラが描かれないなど、無駄な要素がきれいに取り払われている。結果質の高い短編小説のような切れ味で読者に迫る作品だ。短編小説の読者に読んで欲しいと思う。
 逆に普通に少年漫画とか読んでいるコミックの読者には全く理解できない作品かもしれない。
.04 2014 コミック comment0 trackback(-)

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