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萩尾望都/光瀬龍 百億の昼と千億の夜


 光瀬龍の同名の原作小説の、萩尾望都によるコミック化作品。古本屋で300円でゲット。
これ連載当時リアルタイムで読んでいてかなり衝撃を受けた記憶があるのだが、少年チャンピオンに掲載されたのは1977年だそうだ。という事は私は中学生。
 今の感覚で言えば、こんな難解な作品を少年誌に載せちゃうというのもすごいと思うのだが、この頃の少年チャンピオンは前年の真崎守(田中光二原作)の『エデンの戦士』などかなり気合の入った作品を掲載していた覚えがある。

 で、この『百億の昼と千億の夜』だが、SF小説のコミック化作品としてこれほど見事にハマった作品はほかに類を見ないのではないだろうか。キャラクターの造形、絵柄を含め作品世界を完璧にヴィジュアル化していると思う。
 萩尾望都の作品は実はほかにほとんど読んでいないのだが、ちょっと手塚タッチのコメディシーンを含めて非常に流麗な筆致で、物語自体もスラスラと流麗に展開していく。それでいて原作の重厚さ・深刻さを失うこともない。

 例えば「アトランティス編」で、炎に包まれた王宮で、愛息ハルトとその婚約者アリナが燃え落ちたがれきの下敷きになるのを目撃する執政官オリオナエのシーン。落ちてきたがれきが扉を塞いでしまうのだが、これは何気ないがきわめて劇的かつリアリティのある描写で、意外とこういうのはコミック作品の中で見かけない。
 他にもイマジネーションに富んだ表現が各所に見られ、単行本2冊分、450ページという、マンガとしては短編の部類に入るボリュームながら情報量は極めて多く、内容の濃い作品である。これだけの内容でありながらこの分量であるということ自体がまたすごいとも言える。今のコミックはどれもムダに長いが、今この作品を新たにコミック化したら、作家にもよるだろうが多分3~4倍くらいの分量になりそうだ。

 というか今こういう作品をもし誰かが描いても、「物語が難解すぎて読者の理解を得られない」とか「主人公が誰だかわからない」などと編集に言われるのがオチで、結局どの雑誌も掲載しないだろう。マンガに限らず今「名作」と言われている作品はもし今書かれたら発表されなかったのではないかと思える作品が多い。商業主義が作品性を剥ぎ取ってしまった今のコミック雑誌に読むべきところはほとんど残っていない。いま人気のある作品は20年後、30年後にどう評価されているだろうか。
 
 というわけで、図らずも現代コミック界の不毛さまでも感じさせてしまったこの作品。我々読者はこの作品のラストの阿修羅王同様に、不毛の作品たちのがれきを踏み越えて、新たな百億と千億の日々を始めなければならないのかもしれない。

 あとこれは本そのものの編集についてだが、文庫本ということで版が小さく読みにくいことと、『アトランティス編』『シッタータ編』『キリスト編』がいきなり繋がっていて読みにくいので、それぞれの間に一枚ずつ白紙を挿入すべきだった点が残念だった。
.14 2014 コミック comment4 trackback(-)

comment

久しぶりにコメントさせていただきます。

「百億の昼と千億の夜」は小説版、漫画版のいづれも好きな作品です。

自分の場合は漫画版を断片的に読んだ後、小説版、そして漫画版をきちんと読み直したという経路で接しました。当時、読み通した漫画版は整理されすぎた感があり小説版の方が印象が鮮烈でした。でも時間が経過するうちに冷静に読むことができるようになると(もともと漫画化として十分成功していたと思っていましたが)漫画版も自分の中の位置づけはだんだん高くなってきました。

光瀬龍と萩尾望都の組み合わせという観点ではSFマガジンに連載されたイラストストーリーの「宇宙叙事詩」がありますが、「百億の昼と千億の夜」のスピンオフあるいはサイドストーリー的な印象でこちらも好きです。萩尾望都は好きな漫画家なのですが、「ポーの一族」、「百億の昼と千億の夜」を含む「精霊狩り」から「銀の三角」までが最良な時期だったと考えてます。

当時の萩尾望都は16Pの短編で(場合によっては4Pで)スケール感のある物語をきっちり組み立てていました。なので自分の中でボリュームは表現に対する枷にはならないと思い知らされておりました。piaaさんが「ニッケルオデオン」の紹介で、8Pという枠組みの中で鮮烈な印象の物語を組み立てられることを強調しておられたような印象ですが、昨今の漫画事情に疎い自分にとってはそれができない作家が多いことの方がちょっと驚きでした。

さて、振り返ってみると「百億の昼と千億の夜」が連載された前後に「デビルマン」「漂流教室」「仮面ライダー」「暗黒神話」が連載されていたわけですし、「アシュラ」やら「はだしのゲン」が週刊漫画誌に堂々と掲載されていたことを考え合わせると、70年代って漫画というジャンルにとって恐ろしく芳醇な時期だったような気がしてきます。

このように言うと年寄りじみて嫌なのですが、やはり近年の漫画作品には描写はあってもドラマやストーリーが希薄な印象があります。なのでpiaaさんもおっしゃられているようにボリュームの割に物語の凝集度みたいなものが感じられず「こんなもの、一~二巻で片付けろよ」と思うことしきりです。個人的には海外のグラフィックノベルに相当するような作品が日本人作家の手で著されてもいいような気がしております。

長々と失礼しました。
2014.08.16 01:25 | URL | Amleth Machina #SY/LY76s [edit]
Amleth Machinaさん、お久しぶりです。

この作品はさすがに有名というか人気ありますね。
私はこちらが先で後で原作も読みましたが、正直言ってこのコミック化作品がなかったら、今頃小説の方はほとんど忘れ去られていたのではないかと思います。

今のマンガ作家が「短いページ数で物語を組み立てる」ことが「できない」というわけではないだろうと思います。今の作家は出版社に「売れ続ける」ことを要求されるのでそういう作品の描き方を訓練することがないのだと思います。
だらだらと描き続けて発行部数を稼ぐのが良しとする商業主義から脱却しないと、名作は生まれません。コミック商業主義の頂点に立ち、人気投票優先で読者に媚びた作品ばかり生み出し続ける少年ジャンプがいまだに幅を利かす日本の今のコミック業界から「名作」が生まれる可能性は恐ろしく低いと言わざるを得ないと思います。
2014.08.16 09:52 | URL | piaa #- [edit]
確かに難解で普通に漫画ではありませんが、アフタヌーンあたりだったらOKを出しそうな気がします。
ナチュンとかあそこだから出来たんでしょうね。

ただ、石の花とかあかんべえ一休さんとか読むと、昔の漫画は哲学的で今の漫画にはあのような濃厚さは無いのは確かかもしれませんね。
今は小説と漫画で完璧に住み分けができちゃってるんでしょうかね。
俺は小説を余り読まないので分かりませんが。
2014.09.26 00:16 | URL | ろく #OzsWmzus [edit]
ろくさん、こんばんわ。

たしかに講談社は三大出版者の中では一番マトモだと思います。でもすいません、ろくさんの挙げたマンガ、三つともさっぱりわかりません。

いまだに「ニッケルオデオン・ショック」の後遺症で長いマンガを読む気に全くならないもので。ご紹介いただいても読めるとも思えませんし…

最近は一巻ものの多い太田出版にちょっと注目しています。ぜひ「スネグラチカ」と「バベルの図書館」読んでみてください。
2014.09.26 23:27 | URL | piaa #- [edit]

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